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2章 対魔獣戦闘編

48話

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「はぁ~、なんで私がこんな場所に」

私はまだ森の部分に居るものの、既に馬車から見える世界一高い山脈にして活火山の景色を見ながらそうため息をついてしまった。
それに反応したのが、こんな事になった原因である『中立者』のミュールフィスだった。
 
「良いではないですか、フロービス。私のお陰で貴方は面倒な当主の座やその他の問題を、一時的にですが王国に肩代わりにさせることが出来たのですから」

「確かにそうだけど、私は通常の当主の仕事とは別にやろうとしていたことがあるって言ってるでしょう?」

私がそう言うと、ミューは肩をすくめて馬車の外を見始めたので、これは会話をする気がないなと判断し、同じく馬車に乗っているフィーナに目を向けると苦笑いを返された。
馬車を操っているコローナは、まだ馬車の操作を覚えたてで覚束ないのか、ハラハラするような操作をしていて、こちらに気を抜ける余裕が無いように見えた。

そんな光景を見ながら私は、私がこんな状況になったときのことを思い出していた。




始まりは私が目覚めてから暫くして、ミューを訪ねてきた国王だった。

国王について来た護衛も応接室の外に出し、ミューと私、更に私の護衛という意味不明な理由でフィーナの4人が応接室に残ったのを確認したミューが国王が座っていた対面に座り、私達が座るのを待たずに話し始めた。

「さて、国王陛下。私はあまり長い話が好きではないので、単刀直入にお話をします。ここに居るローニャ・フロービス伯爵並びに騎士フィーナの2人を『クリスタル』の所持者と認めます。それと共にコローナ・ヨーティス侯爵も私達の使命に同行させます」

ミューがそう言うと、国王は目を見開いたあとミューに頭を下げた。

「承知しました、『中立者』殿。3人の後処理はこちらにお任せ下さい」

「ええ、頼みましたよ」

そう言うと、ミューは立ち上がり私とフィーナにもついてくるように言って応接室を後にした。
私とフィーナは2人共、どういうことなのか分からずに動けずにいると、国王は私達にも頭を下げた。

「ローニャ・フロービス殿、フィーナ殿。今は何のことか分からないと思うが、どうかこの世界の事を頼んだ」

そう言ってから国王も応接室を後にした。
私とフィーナはお互いに顔を見合わせた後、ミューに事情を聞くべく、ミューの後を追いかけた。

ミューは私が寝ていた部屋である前当主、つまり私の母の私室に戻ってきていて、私とフィーナはミューが部屋に入るタイミングで追い付いた。
というか、私が当主になるまでは好きに屋敷を彷徨けなかったから気が付かなかったけど、私の母の私室に手を付けていないとは思わなかった。

そんな場違いな感想を抱いて部屋に入ると、先に部屋に入っていたミューが鎖で私が寝ていたベッドを持ち上げて、ベッドの裏側を覗き込んでいた。
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