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2章 対魔獣戦闘編

72話(フィーナ視点)

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ローニャ様は私が7階の階段に辿り着いたら床を落として良いと言われていたものの、それはしなかった。
何故なら、そのタイミングにて床を落とすのは最低限の時間しか稼げていない事である為。
私が稼ぐべき時間はローニャ様が10階まで行くまでの時間だけでなく、10階の脱出場所まで辿り着き、落ち着くまでの時間。

つまり、私がこの5階の床を落とすのはローニャ様が8階の階段の前まで辿り着いたタイミングよりも後。
そして、そのタイミングの合図が来た今よりあとが床を落すタイミング。

本来ならば、もう少し後まで待つべきであるものの、魔獣達に合わせて動物も混じって突撃してきている事から、その全てを私の後ろに通していない現状、私もそれ程に余裕があるわけではない。
よって、即座に床を落とすことにした。

ただし、本来は床は元々ローニャ様の『溶氷』という氷を解かす魔法を使用する予定だったので、私が身体強化魔法を普通通りにまじ使って、ぎりぎり氷が割れるような厚さになっている。

しかし、今の私にそれは関係ない。
何故なら、私は既に身体強化魔法で、一瞬とはいえ10倍の身体能力までは出せるようになっているためだ。
まあ、10倍にするとその後に動けなくなる程に筋肉が使用されてしまうので、普段は3倍に止めているが。

そして、今回床を落とすのに使う身体能力は通常の身体能力の5倍である。
その5倍の身体能力を一瞬だけ使用して、6階に上がる階段の目の前で5階の床を殴りつけ、6階まで駆け上がった。
階段を駆け上がっている最中から、5階の床が4階に落ちる音が聞こえてきた為に、空を飛んでいる鳥の魔獣や動物達以外は最低でも足止めはできたと踏んだ。

そして、6階まで駆け上がった私は、私の後を追ってこれた魔獣が居ないかと、すぐに振り返ったものの、私のすぐには何も現れなかった。
しかし、それは身体能力の差によるものだったのか、少しすると多数の鳥の魔獣や動物達が6階目掛けてやってきた。

床を落としたので、地面を移動している魔獣や動物達は階段まで届く足場を作らなければ追っては来れない。
しかし、鳥の魔獣や動物達は違うとはわかっていたものの、やって来る数が多すぎる。

階段の前に陣取っているので、階段の幅くらいしか広がって来ないものの、私が5階で築いていた魔獣や動物の死体の壁の横幅よりも余程広いので、私が剣を振り回しても端を移動されると当たらない。
なので、私は剣を振り回すだけでなく、魔獣や動物達を蹴り殴りつけることで、秒間3匹以上は倒してるのに、まだ向かって来るし、魔獣は魔法も撃って来ている。

これは私が考えていたよりも保たないかもしれない。
ローニャ様、どうか脱出地点まで急いで下さい。
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