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2章 対魔獣戦闘編

82話

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「触れるほどに近づくと?」

私はフィーナが言ったことを疑問に思い、実際に扉に近付いてみた。
そして、段々と近付いても特に思う事は無かったが、触れる事が出来る距離に来ると確かに扉にもっと近づきたくなる、いや扉の向こう側にどうあっても行かなければならないという感覚があった。

しかも、今まで感じた中でも一番に強烈で忘れられない感覚である『死』という感覚に、感覚的な大きさは近い。

私はその感覚が不味いものだと感じ、その感覚を自分の体を両手で包み込むことで、なんとか抑えようとする。

「ん、くっ!!これ、は、駄目だ」

私は抑えきれない感覚に抗う中で、こんな事では抑えられないと理解した。
こんな感覚を味わったフィーナは、よく耐えられるな。

「ろ、ローニャ様?大丈夫ですか!?」

私が崩れ落ち、必死に耐えていると、フィーナが驚き私に近付き心配そうに声をかけてきた。
それに伴い、フィーナの顔を見ると困惑の表情を浮かべていた。

そして、フィーナの顔を見た所で、フィーナの瞳に写った私の顔が見えた。
私の顔はまるで寒さに震えるような顔をしており、顔色は真っ青になっていた。

そこまで見たところで、何処からか『ジャラジャラ』という音が聞こえてきて、体が突然後ろに引っ張られた。
私はそのまま引っ張られ、空が見える所まで引っ張られた。

そこまで引っ張られた所で、扉の向こう側に行かなければならないという感覚が今までで一番強くなった。
それこそ、実際に死んだときよりも強い感覚。

「あの扉の向こうに行かないといけない」

私はそう言って魔法を発動させて、私を引っ張った何かを壊そうとしたが、次の瞬間には感覚が弱くなり、あの扉に関して何も感じくなった。

「あ、あれ?」

それを感じ取り、私は周りを見た。
というか、やっと周りを見る余裕ができた。
そのお陰で私を引っ張った物が鎖だと気が付いたし、その鎖の先にミューが居るのが見えた。

そして、私の様子に気が付いたミューはため息をついた。

「まったく黒色の魔眼を持っている魔獣を倒すまでは、全然良かった良かったのですが、魔獣の巣の魔獣や動物を倒し、扉まで辿り着くなんて驚きましたよ」

「ミュー?」

「はい、ローニャさんとフィーナさんの仲間であるミュールフィスですよ。魔獣の森滞在、お疲れ様でした」

「魔獣の森滞在?」

「はい、後1時間半は時間がありますが、まあ4匹もの黒色の魔眼を持っている魔獣を倒したのですから、流石に十分でしょう」

「十分?なんの話?」

私がそう質問すると、ミューは私に一枚の紙を渡して来た。
その紙を受け取り、紙を見ると私とフィーナが、唯一王国と帝国に属していない中立都市にある『エンドシート』、そこにある世界最高峰の学園、『エンドシート学園』に入学を許可するという旨の内容が書かれていた。





※これで2章は終わりですが、現在3章の制作中なので次回投稿は未定です。
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