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3章前半 『エンドシート学園』編

106話

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ミューの問に、コローナは表情を暗くして答えた。

「確かに死ぬのは怖いですけど、それでも3人が失敗すれば、私は死ぬ可能性が高いんですよね?」

ミューはコローナの質問に苦笑いをしているような雰囲気で答えた。

「実際に死ぬ可能性が高いかは分かりません。私達が『終わり』に負ければ、『終わり』が人間を支配するでしょうが、その支配する形によっては死なない可能性もありますよ。

まあ、死ぬよりも酷い事になる可能性もありますが」

「それなら参加するしかないじゃないですか。ですが、生きて帰れたら、死ぬまで働かなくとも生きていける待遇を要求します」

コローナの言葉にミューは仮面の口を元を抑えて、笑っている様な雰囲気を醸し出した。

「ふふ、それくらいならば、用意しましょう。さて、ゆっくり出来るのはここが最後です。私に何か質問があれば、今答えましょう」

私はミューの言葉を受けて、手を上げた。

「それなら幾つか質問があるわ。まず、なんでまだミューが仮面をつけているのか、次に戦闘能力が無いに等しいコローナがこの先に同行する理由、最後に敵の構成を」

私の質問にミューは1度頷いてから答えだした。

「最初の質問は最後に答えるとして、コローナがこの先に同行する理由は、既にローニャさんやフィーナさんも体験している理由です」

「体験?」

「ローニャさん、以前扉に近付いたときに、おかしな考えに囚われませんでしたか?例えば、扉の先に行かなければならない、または扉を壊さなければならない、あるいは扉から離れてはならないといった考えに」

私とフィーナはミューの言葉に驚き、目を見開いた。
確かに、私は以前魔獣の巣で、非常用の侵入扉を前にしたときに、扉の先へと行かなければならないという感情に囚われた。
そして、フィーナも扉から離れがたいと思っていたのだ。

ミューは、驚いた私達の顔を見て、「覚えが有るようですね」と言って、説明を始めた。

「『終わり』と呼ばれる天才と天才に同意した者達は、かなり弱かったのです。それこそ、魔眼持ちで、きちんと訓練した騎士が5人もいれば殺せるくらいの実力だったそうです。

そこで『終わり』は、無色透明で無臭な特殊な空気を作り出しました。その特殊な空気は吸った人間によって効果が変わりますが、統一して人間の精神をおかしくします。

ローニャさんが上で学園長を殺そうとしていたのは、黒いのと一緒に出て来た、その空気にあてられての事でしょう。そちらは私が魔法で処置しましたが、この先にはその空気が充満していると予想出来ます。

なので、正確にではないとはいえ心を読めるコローナさんに同行して頂くことで、私達には激しい感情の上下があった場合だけ私が魔法で処置することで、私の魔法発動を最小限に抑える事が目的です」
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