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番外編 『王国学園』編

38話

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私はアリアの説明が終わるのを待っている間に、幼馴染とかいう男は消えたと思っていたが、アリアが持っていく物を考えている最中にフィーナが男を見ながら話しかけてきた。

「ローニャ様、あの氷を解かないと消えれないのでは無いでしょうか?」

フィーナに言われて、男に目を向けると、男は元から若干氷に触れる位置に居たのか、体が少し凍り付きカタカタと震えていた。

「確かに、そうだね」

それだけ言ってから『氷魔支配』で氷を溶かし、『何処かに行け』と追い払った。

しかし、男は未だ残っている氷を避けて私の前に回り込もうとしてきた。
その前にフィーナが剣を抜き男に切り掛かったが、私とフィーナの後ろから魔力の気配がし、その次の瞬間にはフィーナと男の動きが完全に止まっていた。

それを見てから、私はフィーナに笑いかけた。

「無意識とは思えない魔法ね。でも、フィーナ?貴方は無意識で発動された魔法にすら抗えないの?」

私の声を聞いたフィーナは、瞬時に魔法を使い身体能力を高め、動き出した。
それから剣を収め、私の目の前で膝を付いた。

「申し訳ありません、無様を晒しました」

「いいえ、一瞬なら仕方無いわ。それに、その後は魔法をすぐに破ったみたいだから良いのよ。

ただ、黒色の魔眼所持者と言っても、同じ黒色の魔眼所持者には十分に傷付けられる可能性があるわ。それを忘れないように」

「はっ、承知しました」

最近少し弛んでいるのを自覚していたのか、反省した様子のフィーナは頭を垂れた。
因みに、先程の言葉は、私も仕事や面倒事に追われ、戦闘関連の事は鈍くなっている事を理解しているので、自分自身に向けた言葉でもある。

私が『アリアを鍛えるついでに、私も訓練した方が良いかしら?』と考えながら、アリアに言った。

「さて、アリア。とりあえず、魔法を解いてみなさい。そうでないと、貴方は魔力が切れるまで、その男を拘束し続ける事になるわ。

しかも、感じられる魔力の消費量から見て、消費量よりも回復量の方が多そうね。そうなると、飲食出来ずに永遠と縛られて、酷ったらしく死ぬことになるわよ」

「え、あ、え、で、でも、どうやって魔法を解けば」

「魔法は手足も同然よ。使いたいと思えば使う事が出来、消したいと思えば消す事が出来る。

でも、生まれたての赤子が手足を扱えないのも当然。そういう時はただ願いなさい」

「ね、願うですか?」

「ええ、願うよ」

私がそれだけ言って『やってみなさい』と視線を向けると、アリアは体をビクリと反応させてから、目を強く瞑った。
それから数十秒がたった時、アリアから発せられていた魔力の気配が消えた。

それを確認してから、私は『よくやった』とばかりに笑みを浮かべた。
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