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前編
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ああ、ついに終わりの時が来てしまった。
「アリアーノ・オースバーン!!貴様との婚約を破棄し、予言の聖女を殺害しようとした罪も合せ、これまで侵して来た罪により、貴様を処刑する!!」
国の中でも最高峰の学園での、卒業パーティーで、公爵令嬢の筈の私は騎士達に、地面に押さえ付けられながら宣言された。
私はいつの時からか、私が殺されるこの時までの全てが見えていた。
いつから見えていたかは覚えていないものの、覚えている限りでは、ずっと全てが見えていた。
私の目には、色々な物が見えていた。
人の感情や人や物の過去に未来、物や人の情報、その他にも見えすぎる程に見えていた。
今この時にも、読み上げられている罪状も全て知っている。
その罪状に関与しているのでは無いかと疑われないように、誰からも距離を取っていたし、様々な情報や人の醜悪な感情や思考なんて、見たくなかったから、ずっと地面だけを見て来た。
それでも習わされた事は、全て完璧に熟した、いや熟せてしまった。
それも、この見えすぎる目による物だった。
一度見た物は忘れられず、思い出そうと思えば、簡単に思い出せる目。
こんな見たくもない物が見えて、覚えたくも無い物を覚えている目なんて、要らなかった。
聖女と言われている私の義妹もそうだ。
義妹なんて要らなかった、ただ私に優しくしてくれたお母さんが、側で生き続けていてくれさえすれば、私はそれだけで勇気を持てた。
それでもお母さんを、公爵は殺した。
入婿なのに、自分が公爵家当主と勘違いして、王家や有力な貴族を抱き込んで、お母さんを事故死させた。
そんな公爵の感情やその公爵の愛人と娘、それに同調する周りなんて、何も見たくなかった。
だから、目を潰そうと思った事もあった。
結局、恐怖が勝ってしまって、目を潰せなかった。
私は知識があるだけの、臆病で、何も出来ない、ただの穀潰し。
だから、この未来に本気では抵抗しなかった。
何処かで、認めていた。
私は死ぬべき人間なのだと。
私は抵抗もせずに、地面を見つめていた。
そんな私を見て、周囲は私を嘲笑い、私を処刑すると言った王子は、悦に浸っている表情で私に言った。
「どうした、アリア。そんなに死ぬのが怖いのか?だが、お前は予言の聖女であり、義妹であるピーノを害そうとした大罪人だ。
しかし、そんな女でも幼き頃から私の婚約者だったのだ、そんなお前に私も情はある。よって、特例として、お前が私の奴隷になるならば、処刑をせずに済ませてやる」
王子も、その周りも、私が奴隷になるのは当然と思っていた。
何故なら、私が基本何をされても抵抗しなかったから。
でもそれは、私がどれだけ辛くとも、どれだけ苦しくとも、誰も助けてくれないと知っていたから。
そして、何故王子が、この場合は王家が私を奴隷にしようとしているかも知っている。
現在の国王は、国王の祖父にあたる国王が平民に産ませた子の子供である為だ。
更に、その子供である現在の国王の父も、男爵家の人間と結婚して、王子を産んでいる。
更に現在の国王の息子、つまり王子は男爵家の愛妾の子供であるため、王家の正当性が薄くなりすぎている。
ここで、いくら義妹とは言え、元伯爵家の父の子供であるピーノと結婚などしようものなら、血の正当性が弱くなりすぎて、他の有力な公爵家に王家が取って代わられる。
しかし、他の公爵家や侯爵家も、同じような不祥事が起こり続けた事もあり、王家と似たようなものになっている家が殆ど。
つまり、現在で1番穏便な方法は最も王家の血が濃い私を女王に据えて、その夫になる事しか現在の王家に残された存続の道はないから。
だからこそ、私に死なれたら困る。
でも、ピーノとは結婚したい。
だから、王子は私を奴隷にして、ピーノの子供を私の子として発表する気でいる。
でも、そんな未来は見えなかった。
だから、私は死の恐怖に震えながら、口を開いた。
「お、おこ、お断り、します」
私の小さい声は会場に静けさをもたらした。
しかし、その次の瞬間には王子や周りは怒り、私に物理的に怒りをぶつけてこようとした。
私は、その怒りの途中で死ぬ筈だった。
しかし、私が痛みを感じる前に、不思議な声が聞こえて来た。
「『万黒触』」
そんな声が聞こえて来た瞬間、私の体を押さえつけていた手の重みや感覚すら消えて、私は地面から黒い何かに包まれた。
「え?」
それに驚いて周りを見回したものの、広がるのは真っ黒な景色だけだった。
そんな景色に慌てながら、周りを見ていると、突然優しそうな声が聞こえてきた。
「貴族の令嬢が真っ暗闇の中にいるのはキツイかもしれないが、少し待っていてくれ。すぐに片付ける」
そう言う男の人の声が聞こえた。
「片付、ける?」
私は声の意味が分からずに、首を傾げていると、はっきりとは聞き取れないものの怒号が聞こえてきた。
暫く聞こえてきていた怒号が収まり、再び優しそうな声が聞こえてきた。
「今から、『万黒触』を解くから、驚かないでくれ」
その声が聞こえてきてから、すぐに真っ暗だった視界に光が見え始め、数秒で私を覆っていた暗闇は消えた。
その事に驚き、周りを見回していると、私の目の前に立っていた男の人と目があった。
「こんにちは、ご令嬢。俺はキーフィス・ローゼリッヒ、ローゼリッヒ辺境伯の長男だ。
本当なら、ご令嬢の名前をお呼びしたいのだが、社交界に出ないせいで、顔と名前が一致していないんだ。
よろしければ、無知な俺に名乗ってはくれないか?」
男の人は床に座り込んでいた私の前で膝をつきつつ、私に左手を差し出していた。
私は男の人が名乗った名前に驚き、少し目を見開いた。
「アリアーノ・オースバーン!!貴様との婚約を破棄し、予言の聖女を殺害しようとした罪も合せ、これまで侵して来た罪により、貴様を処刑する!!」
国の中でも最高峰の学園での、卒業パーティーで、公爵令嬢の筈の私は騎士達に、地面に押さえ付けられながら宣言された。
私はいつの時からか、私が殺されるこの時までの全てが見えていた。
いつから見えていたかは覚えていないものの、覚えている限りでは、ずっと全てが見えていた。
私の目には、色々な物が見えていた。
人の感情や人や物の過去に未来、物や人の情報、その他にも見えすぎる程に見えていた。
今この時にも、読み上げられている罪状も全て知っている。
その罪状に関与しているのでは無いかと疑われないように、誰からも距離を取っていたし、様々な情報や人の醜悪な感情や思考なんて、見たくなかったから、ずっと地面だけを見て来た。
それでも習わされた事は、全て完璧に熟した、いや熟せてしまった。
それも、この見えすぎる目による物だった。
一度見た物は忘れられず、思い出そうと思えば、簡単に思い出せる目。
こんな見たくもない物が見えて、覚えたくも無い物を覚えている目なんて、要らなかった。
聖女と言われている私の義妹もそうだ。
義妹なんて要らなかった、ただ私に優しくしてくれたお母さんが、側で生き続けていてくれさえすれば、私はそれだけで勇気を持てた。
それでもお母さんを、公爵は殺した。
入婿なのに、自分が公爵家当主と勘違いして、王家や有力な貴族を抱き込んで、お母さんを事故死させた。
そんな公爵の感情やその公爵の愛人と娘、それに同調する周りなんて、何も見たくなかった。
だから、目を潰そうと思った事もあった。
結局、恐怖が勝ってしまって、目を潰せなかった。
私は知識があるだけの、臆病で、何も出来ない、ただの穀潰し。
だから、この未来に本気では抵抗しなかった。
何処かで、認めていた。
私は死ぬべき人間なのだと。
私は抵抗もせずに、地面を見つめていた。
そんな私を見て、周囲は私を嘲笑い、私を処刑すると言った王子は、悦に浸っている表情で私に言った。
「どうした、アリア。そんなに死ぬのが怖いのか?だが、お前は予言の聖女であり、義妹であるピーノを害そうとした大罪人だ。
しかし、そんな女でも幼き頃から私の婚約者だったのだ、そんなお前に私も情はある。よって、特例として、お前が私の奴隷になるならば、処刑をせずに済ませてやる」
王子も、その周りも、私が奴隷になるのは当然と思っていた。
何故なら、私が基本何をされても抵抗しなかったから。
でもそれは、私がどれだけ辛くとも、どれだけ苦しくとも、誰も助けてくれないと知っていたから。
そして、何故王子が、この場合は王家が私を奴隷にしようとしているかも知っている。
現在の国王は、国王の祖父にあたる国王が平民に産ませた子の子供である為だ。
更に、その子供である現在の国王の父も、男爵家の人間と結婚して、王子を産んでいる。
更に現在の国王の息子、つまり王子は男爵家の愛妾の子供であるため、王家の正当性が薄くなりすぎている。
ここで、いくら義妹とは言え、元伯爵家の父の子供であるピーノと結婚などしようものなら、血の正当性が弱くなりすぎて、他の有力な公爵家に王家が取って代わられる。
しかし、他の公爵家や侯爵家も、同じような不祥事が起こり続けた事もあり、王家と似たようなものになっている家が殆ど。
つまり、現在で1番穏便な方法は最も王家の血が濃い私を女王に据えて、その夫になる事しか現在の王家に残された存続の道はないから。
だからこそ、私に死なれたら困る。
でも、ピーノとは結婚したい。
だから、王子は私を奴隷にして、ピーノの子供を私の子として発表する気でいる。
でも、そんな未来は見えなかった。
だから、私は死の恐怖に震えながら、口を開いた。
「お、おこ、お断り、します」
私の小さい声は会場に静けさをもたらした。
しかし、その次の瞬間には王子や周りは怒り、私に物理的に怒りをぶつけてこようとした。
私は、その怒りの途中で死ぬ筈だった。
しかし、私が痛みを感じる前に、不思議な声が聞こえて来た。
「『万黒触』」
そんな声が聞こえて来た瞬間、私の体を押さえつけていた手の重みや感覚すら消えて、私は地面から黒い何かに包まれた。
「え?」
それに驚いて周りを見回したものの、広がるのは真っ黒な景色だけだった。
そんな景色に慌てながら、周りを見ていると、突然優しそうな声が聞こえてきた。
「貴族の令嬢が真っ暗闇の中にいるのはキツイかもしれないが、少し待っていてくれ。すぐに片付ける」
そう言う男の人の声が聞こえた。
「片付、ける?」
私は声の意味が分からずに、首を傾げていると、はっきりとは聞き取れないものの怒号が聞こえてきた。
暫く聞こえてきていた怒号が収まり、再び優しそうな声が聞こえてきた。
「今から、『万黒触』を解くから、驚かないでくれ」
その声が聞こえてきてから、すぐに真っ暗だった視界に光が見え始め、数秒で私を覆っていた暗闇は消えた。
その事に驚き、周りを見回していると、私の目の前に立っていた男の人と目があった。
「こんにちは、ご令嬢。俺はキーフィス・ローゼリッヒ、ローゼリッヒ辺境伯の長男だ。
本当なら、ご令嬢の名前をお呼びしたいのだが、社交界に出ないせいで、顔と名前が一致していないんだ。
よろしければ、無知な俺に名乗ってはくれないか?」
男の人は床に座り込んでいた私の前で膝をつきつつ、私に左手を差し出していた。
私は男の人が名乗った名前に驚き、少し目を見開いた。
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