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中編
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ローゼリッヒ辺境伯とは、大陸一危険な森である『死の森』の四方を囲む様に存在する貴族の名前です。
更に言えば、『死の森』は位置的に言って、この国の土地という訳ではなく、『死の森』を囲う様に存在している4つの国の中心部分にあたります。
しかし、その『死の森』には危険な魔獣と呼ばれる動物達が住んでいます。
魔獣とは、普通の動物達の姿と一部が違うのみに関わらず、その凶暴性や食性も大きく違います。
例えば、猿の魔獣ならば腕が異常に発達しており、手の握力だけで人間を潰せるような魔獣や、腕が魔獣の身長と同じくらいで投擲に特化している魔獣等も居る為、同じ猿の魔獣でさえも千差万別と言えます。
そんな魔獣の共通点は、総じて人間よりも強いという事です。
『死の森』で生まれた魔獣は、あまり『死の森』から離れたがらないので、4伯が抑えられているものの、それがなければ今頃は人類は滅亡していると言わしめる程です。
因みに、その4伯というのが、『死の森』を囲い、『死の森』の外に出ようとした魔獣を倒し続けている英雄の様な家です。
その4伯の内の1家である、ローゼリッヒ辺境伯の方に手を出されて、私は伸ばして良いのか疑問に思いながらも、右手を伸ばしてしまいました。
「わ、私はアリアーノ、アリアーノ・オースバーンと申します」
「アリアーノ嬢か、いい名前だな。俺は堅苦しいのが苦手だから、キーファスかキーと呼んでくれ。よろしく」
「え、あ、はい、よろしく、お願いします」
私が返事をしてから、ようやく周りの状況が目に入りました。
周りの人間、特に私を押さえつけていた近衛騎士達は床に倒れており、その他の会場にいた人間も含めて黒く、長い何かが体に巻き付いており、その何かが口を塞いでいました。
それを見ていると、キーファス様が説明してくださいました。
「ここにいる人間の口を塞いでいる異能は俺の物だ。名前は『万能な黒い触手』で、略して『万黒触』だ。それで、アリアーノ嬢の異能はなんというんだ?」
「い、異能?なんの、ことですか?」
私が目を丸くして質問すると、キーファス様は眉を顰められました。
「異能が分からないのか?」
「は、はい」
「まさか説明されていないとは。異能とは、極々稀に発現する特異な力の事だ。俺の『万黒触』やアリアーノ嬢のソレが異能と言える。
ただ異能は圧倒的数の少なさから我がローゼリッヒ家でも、俺を含めて2人しか異能持ちは居ないし、俺が確認している異能持ちは両手の指で足りる程しか居ない。因みに、俺がここに来たのはアリアーノ嬢を引き込めないかと期待したからだ」
「引き込む?私を、ですか?」
「ああ、アリアーノ嬢がどう思っているかは分からないが、先程都合よく婚約破棄されて居たようだし、どうだろうか?流石に異能の効力により仕事はしてもらうが、戦闘系の異能では無さそうだし、後方活動が主になるはずだ」
私はキーファス様の話にとても魅力を感じました。
しかし、きっとそれが嘘だと思ってしまい、私は床に視線を戻しました。
そして、そのまま私は言いました。
「わ、私はここで死ぬので、無理です」
「ここで死ぬ?公爵家のご令嬢が?」
「はい」
「ふむ」
「なので、勧誘は諦めて、お帰り下さい」
私がそう言うと、キーファス様は黙り込みましたが、すぐに歩き出しました。
それを顔を伏せたままで理解した私は、目を瞑りましたが、それからすぐに両頬を誰かの手に包まれました。
その直後には顔を上に挙げさせられ、私の後ろからキーファス様の声が聞こえてきました。
「今、この場にいる人間で自由に動けるのは、俺とアリアーノ嬢だけだ。アリアーノ嬢は俺が守っており、俺自身は辺境伯家の次期当主であり、アリアーノ嬢自身は次期公爵家当主に最も近いご令嬢だ。
そんな条件で、何故アリアーノ嬢が死ぬ?」
「わ、私は王子や王子の側近の方の暴力で」
「は?いや、なるほど。少し失礼」
キーファス様は私の言葉に戸惑われましたが、すぐに何かを納得し、再び私の前に回り私の目を覗き込んで来ました。
しばらく私の目を近くから覗き込んで来ていたキーファス様でしたが、私から離れると優しい笑顔で言いました。
「そうか、アリアーノ嬢は優しいのだな」
「?」
「アリアーノ嬢、少し異能の説明をしよう。異能は基本的に個人の性質に引っ張られる事が多い。例えば、殴り合いが好きな人間に異能が発現すると殴り合いに関連する何かしらかの効果がある異能が発現するとかな。
この様に効果が千差万別なので、大まかな型で4つに分けられる。その4つは攻撃型、防御型、補助型、特殊型になる。因みに俺の異能は特殊型だが、特殊型は単純に先に上げた3つの型に当て嵌めづらい、もしくは嵌められない異能の事を言う。
アリアーノ嬢の異能は多分補助型になるだろうな。アリアーノ嬢は人の感情や過去や未来が見えるだろ?」
私がキーファス様の言葉に驚いていると、キーファス様は苦笑いしました。
「先に言っておくと、俺がアリアーノ嬢の異能を知っていたのは、家に所属している異能持ちに聞いたからだ。アイツは占い師の様な効果の異能で、俺がここに来れたのもソイツがアリアーノ嬢の事を教えてくれたからだ」
「な、なるほど、そうなのですね」
私がそう呟くと、突然キーファス様の後方からテーブルが倒れる音が聞こえてきました。
テーブルが倒れる音と同時にガラスが割れる音もしてきたので、私は反射的に目を瞑ってしまいました。
そんな私を何かが覆いました。
それに驚き、目を開くとキーファス様が自身の胸に私を抱き寄せ、周りを『万黒触』で守っていました。
更に言えば、『死の森』は位置的に言って、この国の土地という訳ではなく、『死の森』を囲う様に存在している4つの国の中心部分にあたります。
しかし、その『死の森』には危険な魔獣と呼ばれる動物達が住んでいます。
魔獣とは、普通の動物達の姿と一部が違うのみに関わらず、その凶暴性や食性も大きく違います。
例えば、猿の魔獣ならば腕が異常に発達しており、手の握力だけで人間を潰せるような魔獣や、腕が魔獣の身長と同じくらいで投擲に特化している魔獣等も居る為、同じ猿の魔獣でさえも千差万別と言えます。
そんな魔獣の共通点は、総じて人間よりも強いという事です。
『死の森』で生まれた魔獣は、あまり『死の森』から離れたがらないので、4伯が抑えられているものの、それがなければ今頃は人類は滅亡していると言わしめる程です。
因みに、その4伯というのが、『死の森』を囲い、『死の森』の外に出ようとした魔獣を倒し続けている英雄の様な家です。
その4伯の内の1家である、ローゼリッヒ辺境伯の方に手を出されて、私は伸ばして良いのか疑問に思いながらも、右手を伸ばしてしまいました。
「わ、私はアリアーノ、アリアーノ・オースバーンと申します」
「アリアーノ嬢か、いい名前だな。俺は堅苦しいのが苦手だから、キーファスかキーと呼んでくれ。よろしく」
「え、あ、はい、よろしく、お願いします」
私が返事をしてから、ようやく周りの状況が目に入りました。
周りの人間、特に私を押さえつけていた近衛騎士達は床に倒れており、その他の会場にいた人間も含めて黒く、長い何かが体に巻き付いており、その何かが口を塞いでいました。
それを見ていると、キーファス様が説明してくださいました。
「ここにいる人間の口を塞いでいる異能は俺の物だ。名前は『万能な黒い触手』で、略して『万黒触』だ。それで、アリアーノ嬢の異能はなんというんだ?」
「い、異能?なんの、ことですか?」
私が目を丸くして質問すると、キーファス様は眉を顰められました。
「異能が分からないのか?」
「は、はい」
「まさか説明されていないとは。異能とは、極々稀に発現する特異な力の事だ。俺の『万黒触』やアリアーノ嬢のソレが異能と言える。
ただ異能は圧倒的数の少なさから我がローゼリッヒ家でも、俺を含めて2人しか異能持ちは居ないし、俺が確認している異能持ちは両手の指で足りる程しか居ない。因みに、俺がここに来たのはアリアーノ嬢を引き込めないかと期待したからだ」
「引き込む?私を、ですか?」
「ああ、アリアーノ嬢がどう思っているかは分からないが、先程都合よく婚約破棄されて居たようだし、どうだろうか?流石に異能の効力により仕事はしてもらうが、戦闘系の異能では無さそうだし、後方活動が主になるはずだ」
私はキーファス様の話にとても魅力を感じました。
しかし、きっとそれが嘘だと思ってしまい、私は床に視線を戻しました。
そして、そのまま私は言いました。
「わ、私はここで死ぬので、無理です」
「ここで死ぬ?公爵家のご令嬢が?」
「はい」
「ふむ」
「なので、勧誘は諦めて、お帰り下さい」
私がそう言うと、キーファス様は黙り込みましたが、すぐに歩き出しました。
それを顔を伏せたままで理解した私は、目を瞑りましたが、それからすぐに両頬を誰かの手に包まれました。
その直後には顔を上に挙げさせられ、私の後ろからキーファス様の声が聞こえてきました。
「今、この場にいる人間で自由に動けるのは、俺とアリアーノ嬢だけだ。アリアーノ嬢は俺が守っており、俺自身は辺境伯家の次期当主であり、アリアーノ嬢自身は次期公爵家当主に最も近いご令嬢だ。
そんな条件で、何故アリアーノ嬢が死ぬ?」
「わ、私は王子や王子の側近の方の暴力で」
「は?いや、なるほど。少し失礼」
キーファス様は私の言葉に戸惑われましたが、すぐに何かを納得し、再び私の前に回り私の目を覗き込んで来ました。
しばらく私の目を近くから覗き込んで来ていたキーファス様でしたが、私から離れると優しい笑顔で言いました。
「そうか、アリアーノ嬢は優しいのだな」
「?」
「アリアーノ嬢、少し異能の説明をしよう。異能は基本的に個人の性質に引っ張られる事が多い。例えば、殴り合いが好きな人間に異能が発現すると殴り合いに関連する何かしらかの効果がある異能が発現するとかな。
この様に効果が千差万別なので、大まかな型で4つに分けられる。その4つは攻撃型、防御型、補助型、特殊型になる。因みに俺の異能は特殊型だが、特殊型は単純に先に上げた3つの型に当て嵌めづらい、もしくは嵌められない異能の事を言う。
アリアーノ嬢の異能は多分補助型になるだろうな。アリアーノ嬢は人の感情や過去や未来が見えるだろ?」
私がキーファス様の言葉に驚いていると、キーファス様は苦笑いしました。
「先に言っておくと、俺がアリアーノ嬢の異能を知っていたのは、家に所属している異能持ちに聞いたからだ。アイツは占い師の様な効果の異能で、俺がここに来れたのもソイツがアリアーノ嬢の事を教えてくれたからだ」
「な、なるほど、そうなのですね」
私がそう呟くと、突然キーファス様の後方からテーブルが倒れる音が聞こえてきました。
テーブルが倒れる音と同時にガラスが割れる音もしてきたので、私は反射的に目を瞑ってしまいました。
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