51 / 65
3章 ダンジョン突入編
47話 元奴隷は仲間を増やす
しおりを挟む
あのダンジョンでは、現状2種類しか魔物を確認していないが、流石に2種類だけのダンジョンでは無いと思うので、今後食用の魔物が出て来てくれるのを祈るばかりだ。
まあ、出て来なくとも、ポーチの中にはキラーアント種がかなりあるし、オークやここに来る前に回収した食料も多くあるので、当分は大丈夫なのだが。
そんな事を考えていると、家の下に人の気配がした。
気配は2つだったので、多分ムタイとワタナベだろう。
そう思って、とりあえず出していた物を片付けてから下に降りた。
すると、予想通りにムタイとワタナベだったが、今までに見ない程に真剣な表情で、降りてきた俺を見つめてきた。
それに首を傾げると、ムタイが無言でスマホを出してきた。
スマホを見てみると、『渡辺 瀬里香をパーティーに招待しますか?』と書かれていた。
それを見て目を見開いたが、すぐに眉を顰めた。
「どういうことだ?ワタナベは戦闘向きじゃないだろう?それなら、俺達のパーティーに入れるのは危ないだろ」
「ああ、独立遊撃部隊の仕事がある、ここで瀬里香をパーティーに入れても、殺してしまうだけだろう」
「それなら、そのスマホの画面はどういうことなんだ?」
俺がそう聞くと、ムタイは真剣な表情で言った。
「ロキ、私達と拠点を出ないか?」
俺はムタイの言葉で思考に空白が生まれた。
それから少し考えて、ムタイに質問した。
「拠点を出るって、食料や物資の回収の話だよな?」
「いや、ここではない何処かに、新たな拠点を私達だけで作らないかという話だ」
「本気か?」
「本気だ」
暫くムタイと見つめ合っていたが、ムタイは一切目を逸らさなかったので、本気だと分かった。
それから、この場にいる瀬里香に目を向けた。
「ムタイの話は理解した。やるかどうから置いておいて、ワタナベは何でここに居るんだ?」
「私も2人に付いて行きたくて」
「俺とムタイは強いが、『名付き』を圧倒できるか程じゃない。そのせいで、ワタナベを殺す事になるかもしれない。それでも、付いてくるのか?」
「うん。もうここでは、やっていけないと思ったから」
瀬里香とも暫く見つめ合っていたが、こちらも本気だと分かったので、俺はため息をついてから、頭を搔いた。
「なんで急に、そんな話になったんだ?とりあえず、理由を話してみろ」
「で、でも」
「安心しろ、時間が掛かっても最後まで聞いてやるし、聞き終わるまでは何も口を挟まない」
俺がそう言うと、ムタイとワタナベが顔を見わせてから、諦めたように話しだした。
◇
ムタイとワタナベの話を聞き終えてから、俺は頭を抱えてため息をついた。
「はぁ~、馬鹿が多いと思っていたが、馬鹿しか居なくなったのか?」
「そう言われても、反論出来ない状態だな。それでだが、私達と拠点を出てくれるか?」
全ての話を聞いてからも、俺は即答は出来なかった。
なので、一番の懸念点をムタイに質問した。
「ムタイ、ワタナベ、俺はお前達と拠点を出る事自体は構わない。だが、この拠点はお前達が心血を注いで作り上げた拠点なんだろ?
それなのに、そこから離れて、悪い言い方をすれば捨ててしまってもいいのか?止めるなら、今だぞ?」
俺がそう言うと、ワタナベは即座に首を横に振った。
「確かに頑張って来たけど、誰かに全てを押し付ける様な拠点を作りたかった訳じゃないから」
俺はワタナベの言葉で、『これは決意が硬いな』と判断して、今度はムタイに顔を向けた。
ムタイはまだ若干迷いがあるのか、ワタナベの様に即答はしなかったが、ゆっくりと自分の中で纒めるように、しかししっかりとした口調で言った。
「最初はただ生き残りたかったから、ここに居た。それから魔物を狩って強くなり、いつの間にかここのリーダーに収まって、誰からも頼られるようになった。
それが嫌な訳じゃない。ただリーダーになったばかりの頃は、それでも良かった。だが、今ではそれが重しになって、期待が重かった。
そんな時に私よりも強いロキが現れて、驚くと同時に安堵してしまった。これで私だけじゃ無い、1人で背負わなくていいかもしれないと期待した。
その結果がこれだ。結局、期待は依存に変わりかけている。無責任な自覚はある。だが、それでももう私はここには居られない。
だから、ロキと瀬里香がこなくとも、私は1人で拠点を出る」
ムタイは最後の方は確固たる意志を持って言ったように感じた。
そんなムタイを見て、俺はため息をつきながら、言った。
「まあ、俺は拠点が欲しかったから、ここに来た訳だし、その拠点もパーティーメンバーが居ないんじゃ意味がない。
だから、安心しろ。最低でも俺は、お前に付いて行ってやる」
そう言い切った俺にワタナベが体を寄せてきた。
「ちょっと、私の事忘れてない?」
「ワタナベはどうせ付いてくるんだろ?」
「む、それは、そうだけど。あれだよ、女子的には私にも何か言葉が欲しいわけだよ」
俺がワタナベの言葉に首を傾げながら聞いた。
「なんだよ、女子的にはって」
「む~」
「ああ~、もう分かった。それなら付いて来い、扱き使ってやるが、俺が死ぬ迄は守ってやる」
俺がそう言うと、ワタナベはポカンとした表情をした。
それに俺が首を傾げていると、ワタナベはポカンとした表情のままで、俺に聞いてきた。
「俺が死ぬ迄は守ってやるって、告白?」
「はい?俺が出会って1日そこらの女に告白すると?」
俺が本気で驚きながら言うと、ワタナベは俺に背を向けながら頭を掻いた。
「あは~、そうだよね~。びっくりしちゃったよ~」
「そう言う割には顔も耳も真っ赤だぞ、瀬里香」
「な、何を言ってるのかな、このハクは。そんな訳ないでしょ?」
「いや、後ろから見ても耳が赤いのはわかるぞ?」
俺がそう言うと、ワタナベは耳を両手で隠してながら、俺を睨んできた。
それをサラリと無視しつつ、俺はワタナベに右手を出した。
「んんっ。これからはパーティーだからな、とりあえずパーティー結成時の挨拶である握手だ。これからよろしく、ワタナベ」
俺がそう言うと、ワタナベは諦めの表情をして、俺の握手に応じた。
「はぁ~、そうだね。パーティー結成自体はスマホで出来るけど、味気無いしね。それじゃあ、私の事は瀬里香って呼んでね」
「セリカ?ワタナベじゃなくて良いのか?」
「いいよ、それにパーティーになったんだから、名字で呼ばれるよりも名前の方がいいでしょ?」
「そんなものか?」
「そんなものだよ」
「そうか、それなら改めて、これからよろしくセリカ」
「うん、これからよろしくね、ロキ」
まあ、出て来なくとも、ポーチの中にはキラーアント種がかなりあるし、オークやここに来る前に回収した食料も多くあるので、当分は大丈夫なのだが。
そんな事を考えていると、家の下に人の気配がした。
気配は2つだったので、多分ムタイとワタナベだろう。
そう思って、とりあえず出していた物を片付けてから下に降りた。
すると、予想通りにムタイとワタナベだったが、今までに見ない程に真剣な表情で、降りてきた俺を見つめてきた。
それに首を傾げると、ムタイが無言でスマホを出してきた。
スマホを見てみると、『渡辺 瀬里香をパーティーに招待しますか?』と書かれていた。
それを見て目を見開いたが、すぐに眉を顰めた。
「どういうことだ?ワタナベは戦闘向きじゃないだろう?それなら、俺達のパーティーに入れるのは危ないだろ」
「ああ、独立遊撃部隊の仕事がある、ここで瀬里香をパーティーに入れても、殺してしまうだけだろう」
「それなら、そのスマホの画面はどういうことなんだ?」
俺がそう聞くと、ムタイは真剣な表情で言った。
「ロキ、私達と拠点を出ないか?」
俺はムタイの言葉で思考に空白が生まれた。
それから少し考えて、ムタイに質問した。
「拠点を出るって、食料や物資の回収の話だよな?」
「いや、ここではない何処かに、新たな拠点を私達だけで作らないかという話だ」
「本気か?」
「本気だ」
暫くムタイと見つめ合っていたが、ムタイは一切目を逸らさなかったので、本気だと分かった。
それから、この場にいる瀬里香に目を向けた。
「ムタイの話は理解した。やるかどうから置いておいて、ワタナベは何でここに居るんだ?」
「私も2人に付いて行きたくて」
「俺とムタイは強いが、『名付き』を圧倒できるか程じゃない。そのせいで、ワタナベを殺す事になるかもしれない。それでも、付いてくるのか?」
「うん。もうここでは、やっていけないと思ったから」
瀬里香とも暫く見つめ合っていたが、こちらも本気だと分かったので、俺はため息をついてから、頭を搔いた。
「なんで急に、そんな話になったんだ?とりあえず、理由を話してみろ」
「で、でも」
「安心しろ、時間が掛かっても最後まで聞いてやるし、聞き終わるまでは何も口を挟まない」
俺がそう言うと、ムタイとワタナベが顔を見わせてから、諦めたように話しだした。
◇
ムタイとワタナベの話を聞き終えてから、俺は頭を抱えてため息をついた。
「はぁ~、馬鹿が多いと思っていたが、馬鹿しか居なくなったのか?」
「そう言われても、反論出来ない状態だな。それでだが、私達と拠点を出てくれるか?」
全ての話を聞いてからも、俺は即答は出来なかった。
なので、一番の懸念点をムタイに質問した。
「ムタイ、ワタナベ、俺はお前達と拠点を出る事自体は構わない。だが、この拠点はお前達が心血を注いで作り上げた拠点なんだろ?
それなのに、そこから離れて、悪い言い方をすれば捨ててしまってもいいのか?止めるなら、今だぞ?」
俺がそう言うと、ワタナベは即座に首を横に振った。
「確かに頑張って来たけど、誰かに全てを押し付ける様な拠点を作りたかった訳じゃないから」
俺はワタナベの言葉で、『これは決意が硬いな』と判断して、今度はムタイに顔を向けた。
ムタイはまだ若干迷いがあるのか、ワタナベの様に即答はしなかったが、ゆっくりと自分の中で纒めるように、しかししっかりとした口調で言った。
「最初はただ生き残りたかったから、ここに居た。それから魔物を狩って強くなり、いつの間にかここのリーダーに収まって、誰からも頼られるようになった。
それが嫌な訳じゃない。ただリーダーになったばかりの頃は、それでも良かった。だが、今ではそれが重しになって、期待が重かった。
そんな時に私よりも強いロキが現れて、驚くと同時に安堵してしまった。これで私だけじゃ無い、1人で背負わなくていいかもしれないと期待した。
その結果がこれだ。結局、期待は依存に変わりかけている。無責任な自覚はある。だが、それでももう私はここには居られない。
だから、ロキと瀬里香がこなくとも、私は1人で拠点を出る」
ムタイは最後の方は確固たる意志を持って言ったように感じた。
そんなムタイを見て、俺はため息をつきながら、言った。
「まあ、俺は拠点が欲しかったから、ここに来た訳だし、その拠点もパーティーメンバーが居ないんじゃ意味がない。
だから、安心しろ。最低でも俺は、お前に付いて行ってやる」
そう言い切った俺にワタナベが体を寄せてきた。
「ちょっと、私の事忘れてない?」
「ワタナベはどうせ付いてくるんだろ?」
「む、それは、そうだけど。あれだよ、女子的には私にも何か言葉が欲しいわけだよ」
俺がワタナベの言葉に首を傾げながら聞いた。
「なんだよ、女子的にはって」
「む~」
「ああ~、もう分かった。それなら付いて来い、扱き使ってやるが、俺が死ぬ迄は守ってやる」
俺がそう言うと、ワタナベはポカンとした表情をした。
それに俺が首を傾げていると、ワタナベはポカンとした表情のままで、俺に聞いてきた。
「俺が死ぬ迄は守ってやるって、告白?」
「はい?俺が出会って1日そこらの女に告白すると?」
俺が本気で驚きながら言うと、ワタナベは俺に背を向けながら頭を掻いた。
「あは~、そうだよね~。びっくりしちゃったよ~」
「そう言う割には顔も耳も真っ赤だぞ、瀬里香」
「な、何を言ってるのかな、このハクは。そんな訳ないでしょ?」
「いや、後ろから見ても耳が赤いのはわかるぞ?」
俺がそう言うと、ワタナベは耳を両手で隠してながら、俺を睨んできた。
それをサラリと無視しつつ、俺はワタナベに右手を出した。
「んんっ。これからはパーティーだからな、とりあえずパーティー結成時の挨拶である握手だ。これからよろしく、ワタナベ」
俺がそう言うと、ワタナベは諦めの表情をして、俺の握手に応じた。
「はぁ~、そうだね。パーティー結成自体はスマホで出来るけど、味気無いしね。それじゃあ、私の事は瀬里香って呼んでね」
「セリカ?ワタナベじゃなくて良いのか?」
「いいよ、それにパーティーになったんだから、名字で呼ばれるよりも名前の方がいいでしょ?」
「そんなものか?」
「そんなものだよ」
「そうか、それなら改めて、これからよろしくセリカ」
「うん、これからよろしくね、ロキ」
0
あなたにおすすめの小説
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる