黒いモヤの見える【癒し手】

ロシキ

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1章

3話 領主様

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「この球に触るな、と?
何故だ?」

「えっと、わ、悪い物な気がして」

「ふむ、分かった」

エクス様はそう言うと、どこからか布を取り出して、球を包んだ。
すると、球から出ていた黒いモヤモヤは消え去り、本体は手で包み込めるくらい小さい物なのだと分かった。

「これなら大丈夫そうか?」

「あ、はい、多分」

「そうか。
それでは悪いが、辺境伯邸まで一緒に来てくれないか?」

「へ、あ、あのな、何か無礼な事をしてしまいましたか?」

「いや、そんな事はない。

あくまでも状況を説明の時に居て欲しいと言う事と、もう1つ確認したい事が出来たから、付いてきて欲しい。
断る事も構わないが、断られると後から正式に要請する事になる。
その場合は、今よりも緊張してしまうだろう?

だから、一緒に来て欲しいんだ。
良いか?」

「は、はい」

エクス様から断っても良いと言われても、領主様の子供のエクス様のお願いを断れるわけも無かった。
だから、震えながらもエクス様のお願いに頷いた。




御屋敷に着くと、すぐに領主様の居る部屋に通された。
それからは周りに居たメイドの人や騎士の人達が部屋から出されて、領主様とエクス様、そして私だけ残された

領主様は顔の半分と左腕に黒いモヤモヤがあった。

そんな部屋で領主様とエクス様は、学校での事を話し合っていた。

「なるほど、ジャックがそのような事をしたと。

全く、昨日に引き続き問題を起こしてくれる。
しかし、エリシアはまだ部屋の中で震えていると報告があるのに、随分と元気だな。

もしかすると、私でも見抜けなかった戦士の才があるのかもしれん」

「図太いだけでは?
仮に戦士の才があったとしても、ジャックは民の為に身を粉にするとは思えません」

「そうだな。
それで何故、この娘を連れてきた?」

「色々聞きたい事や調べさせたい事があったので、連れてきました。

彼女の親には、『彼女を守る為、一時的に辺境伯邸にて預かる。ですが、近日中には必ず送り届けるので安心して欲しい』と、学校の者に伝言を任せました」

「そうか、その事については良い。

まあ、欲を言えば、伝言を伝えるのは騎士の者が良かっただろう。
いくら学校の教師とは言え、騎士の言葉とは重みも信頼性も別物だ。

次があれば、騎士を使いなさい」

「その騎士にも知られたくない事があったのですよ」

「なに?
どういうことだ?」

「父上、彼女は魔法使いです。
しかも、魔力だけなら俺と同等か下手をすれば俺よりも多い」

「なんだと?
彼女が?」

私は良く分からない話が続いた事もあって、少しだけ気を抜いて居たのに、急に私の話になって驚いていた。
そんな中で領主様からとても険しい顔を向けられて、悲鳴が出てしまった。

「ひ、ひう」

「父上のお顔は魔物討伐等で、見つめられただけで泣く幼子が即死する程に凶悪なものになっているのですから、自重してください」

「む、そんな事はないぞ。
ジャックはともかく、エクスは言葉も分からなぬ内に私の顔を見ても笑っていた」

「それは父上が、泣き続ける俺の側に居続けて、俺が見慣れたからでしょう?
見慣れるまでは、父上と似た背丈の者が近寄れなかったと母上やメイド達が言っていましたよ」

「な、なに!?
そ、そんな話、私は聞いた事が無いぞ」

「昔の話ですから、今更教えて父上を傷付けたくなかったのでしょう。

それよりも、彼女の話です。
彼女に魔法の適性検査を受けさせたいのです。
出来るだけ早く、父上が一番信頼出来、口の最も固い者に」

「それほどの事か?
彼女は平民なのだろう?」

「ええ、ですが、その前に報告を聞きたいのです」

「報告?」

領主様がそう言うと扉が叩かれた。
領主様は扉の外に聞こえる様に、少し大きな声で言った。

「入れ」

「失礼します、エクス様に分析を頼まれていた物をお持ちしました」

扉から男の人が入って来て、そう言った。
その男の人はジャック様が学校で取り出していた黒いモヤモヤのものを取り出した。

「これは?」

「エクス様よりも渡されました、ジャックが学校にて使おうとした物です。

正確な効果までは分かりませんが、かなりの魔力が無ければ発動しない魔道具の様ですね。
しかも、効果は攻撃性の物でしょう」

「今判明している時点での効果は?」

「それは、」

男の人は言葉を止めて、私を見てきた。
それに何かに言わなければならいのかと考えていると、エクス様が話しだした。

「彼女も居ることですし、詳細な効果等は後から聞けば良いでしょう。
それよりも先程の話に戻っても?」

「そうだな。
お前は出来るだけ早く、その魔道具の効果を正確に纏めて、後で報告してくれ」

「はい、分かりました。
失礼します」

そう言って、頭を下げてから男の人は外に出て行った。
扉が閉まりきってから、男の人の足音が聞こえなくなってから、エクス様は再び話し始めた。

「父上、先程の魔道具は攻撃性の物だろうという報告がありましたが、その魔道具を止めたのは俺ではありません」

「まさか、彼女か?」

「はい。
ジャックが魔道具を起動させる前に、ジャックが持っていた魔道具をはたき落としました。
更に、何故阻止したのかと聞いた所、『悪い物な気がして』と返して来ました。

もちろん、ただの勘の可能性もありますが、それ以外の可能性を無視できませんでした」

「なるほど、確かにそうだな。
それで彼女の名は?」

領主様の質問に対して、エクス様は固まってしまった。
その様子を見た領主様は、ため息をついて言った。

「無傷だったとはいえ、連戦続きで学校に行かせた私にも悪い所はあった。
だが、それでは彼女の不安は大きくなってしまうだろう。

せめて名くらい確認してから連れてきなさい」

「はい、申し訳ありません」


「それでお嬢さん、名前を教えてくれ」

「は、は、はい。
あ、アリアです」

「アリア君か。
アリア君、ひとまず君に魔法の適性があるかを確認して貰う。

その後は結果次第で君の将来も変わるだろうが、少なくとも今回の件は私達の不手際が原因の事。
よって君にも、君の家族にも絶対に不利益は被らせない。
詫びは出来ないが、それでも良いかな?」

「は、はい!!
も、もちろんです」

「うん、いい返事だ。

エクス、アリア君の事はお前に任せる。
いくら急いでも流石に今日中には魔法の適性検査は出来ないからな。
明日の朝、いや午後一番で適性検査を受けて貰う。

それで良いな?」

「はい、ありがとうございます」

エクス様の言葉に領主様は頷いてから、部屋から出て行った。
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