黒いモヤの見える【癒し手】

ロシキ

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1章

13話 別視点(ドリス②)

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当時の王太子が出した捕縛命令は実行された。
しかし、当時の国王は私から魔道具を取り上げた事を多少は悪いと思っていたらしい事と、領主様と奥様が私を助けてくれたから、すぐに解放された。

しかし、一時的に捕縛された私には実家にも居場所はなく、解放されてからは実家を離れて残っていた魔道具の利益で生活していた。
それでも魔道具の権利で王家に楯突いた後で捕縛された私では、後が無かった。

そんな私を領主様と奥様が拾ってくれたから、辺境伯家に役に立つ魔道具の研究をある程度は好き勝手に続けられている。


だからこそ、私は領主様に恩があり、代わりに王家は多少恨んでいる。
とはいえ、王家への忠誠心が強い辺境伯家で王家を恨んでいる事がバレれるのは不味いから、隠してはいるけれど。

ただ領主様も奥様も、それを分かっている上で私を使っているのだから、多分王家への忠誠も絶対ではないのだろう。

それでも領主様と奥様が、自身の口から王家を疑う言葉を出す事はない。
だからこそ、私があえて口に出す。

「現国王は身内を優先し過ぎて、王としては不適格です。
そんな王が身内にいるせいで、現在の王族は好き勝手が過ぎます。

それは領主様も分かっているでしょう?」

私の言葉に領主様は顔を歪ませた。
それから少しだけ間を空けてから、口を開いた。

「ああ、それは分かっている。

だが、あの魔道具はあくまでも外部から持ち込まれた可能性が高いだけだ。
まだ誰が、何を目的としていたか分からない以上は断定できん」

「それは分かっていますよ。
ですが、アリアには気を付けた方が良いですよ?」

「何?」

「ああ、アリア自身に気を付けた方が良いという意味ではなく、彼女の周囲に気を配った方が良いという意味ですよ。

だって彼女、【癒し手】なのでしょう?」

私の言葉に領主様は顔色一つ変えなかった。
しかし、私の隣に居たエステールは一瞬だけ顔色を変えた。

それを見て、私の予想が確信に変わった段階で、領主様はため息をついた。

「失態だな、エステール。
もう少し、表情を隠せ」

「っ!!
も、申し訳ありません」

「よい、ドリスには隠し通せるとは思っていなかったからな。
ドリス、分かっているとは思うが、口外は禁止する。
それと例え関係者だけの話し合いでも、本人を『照らす者』、【癒し手】を『光』と呼称するように」

「分かりました。
因みに誰が知っているのです?」

「現状は私とエクス、エステールの3人のみだ。
いずれは他の者も引き込むが、それも時期が来るまでは引き込まん」

「奥様にも隠しているとは驚きました。

それに時期、ですか。
魔物共の暴走まで待つ気ですか?」

「ああ、魔物共の暴走は近々起こるだろう。
むしろ、まだ起こっていない事の方が驚きだ。
だが、そのお陰で魔物共の暴走前に『照らす者』の魔法が使用出来るまで育てられるかもしれん」

「まあ、魔物共の暴走は起こるでしょうしね。
第二夫人バカ達のせいで、魔物の血は当然として、人間の血も相応に流れましたから、仕方ありません。

しかし、ある程度の強さの魔物による、数にものを言わせた襲撃でないせいで事前の間引きも出来ませんね。
エステール、近くに強力な魔物の反応はないでしょう?」

「え、ええ、魔道具と騎士達で空中から探らせていますが、魔物の本体どころか、痕跡も見当たりません。
近くに居るのは普段からよく見る魔物のみで、数も多少増えているものの無視できる程度だと報告がありました。

ですので、強力な魔物はまだ近くに居ないだろうとの事です」

「そう、なら相手は足が遅い魔物になるかな。

しかし、足が遅いのに他の魔物共を多少しか抜かせない相手となると、中々思い浮かばないけどね」

「うむ、エクスとドリスは普段から出撃が多い為に仕方ないが、下手をすれば妻やエステールにも出撃してもらう事になるだろう」

「そうですか、私はいつも通りにエクス様とペアで配置してくださるのですよね?」

「お前の希望なのだから、出来るだけペアで配置はする。
だが、お前はまだ諦めていないのか?」

「ええ、それはもちろん!!

赤子の頃に見せた、私を見る時の理性的な瞳!!
その後に見せた、私がベッドに近づいて来た時の、あの嫌悪感の籠もった表情!!

なによりも、私よりも多い魔力の総量と【属性使い】なのに4つの属性全てに適正があり、全てを同等の精度で使用可能であるという天性の才能!!

ああ、【属性使い】のエクス様と【付与師】の私が子供を産んだら、どんな子が生まれてくるのか!!

領主様と奥様の許可が出れば、今すぐにでも夜這いをしますし、エクス様と出来るなら閨教育の相手でも、愛人でも良いと言ってますのに、何故まだ許可をくれないのですか!?」

「はあ!?」

私が領主様に詰め寄っていると、後ろからエステールの叫び声が聞こえてきた。
しかし、そんな事はどうでも良いと思い、無視していると領主様は疲れたように左手で顔を隠した。

「はぁ~、あの子はまだ10歳だぞ?
許可する訳があるまい。

そもそも、お前は伯爵なのだぞ?
いくらエクスが次期ドーラス家当主に最も近いと言っても、教育の相手や愛人には不適格だ。

せめて第二夫人と言ってくれ」

「私はエクス様の子供が産めれば、呼び方なんてどうでも良いのですよ」

「ちょ、ちょっと待ってください、主任!!」

「ん?
なに?」

「『なに?』、ではありません!!
まさかエクス様に嫌がらせかと思われるくらい付きまとっているのは、今の話の件に関係してはいませんよね!?」

「なにを言うかと思えば、関係あるに決まっているでしょう?

エクス様の近くに居れば、いつかは女を知る日が来る。
そうなれば、多少は女として魅力がある私に欲情して襲ってくれるかもしれない。
だからこそ、エクス様の近くに居るのよ?」

私がそう言うと、エステールは頭を抱えた。
それに首を傾げると、領主様が再びため息をついた。

「はぁ~、何故そこまでエクスに執着するのか。

これまでも色々とお前のやらかしは見てきた。
それでも魔道具と結婚したと抜かしていたお前が、好きな男が出来たと聞いた時は喜んだものを」

「あら、あの時は領主様も奥様も揃って応援すると言ってくれたのに、後から前言を翻して、冷たいですね」

「応援すると言ったのは好きな男がエクスだと聞く前だ。
それなのに、なにが冷たいものか。

当時15歳の人間が、まだ赤子だった私達の子に手を出そうとしたのを見た時の、私達の気持ちはどんなものだったか想像出来るか?

私は死んだ後の狂気的な夢だと思い、妻は倒れかけたぞ?」

「そんな事は知りません。
それよりも報告は終わったので、退出しても?」

私の言葉に、領主様は深いため息を付いてから頷き、退出するように言った。
私の退出と同時にエステールも退出したので、エステールに釘を差しておく。

「エステール、さっきの話はエクス様にしないように。
これ以上避けられると、私が何をするか分からないからね?」

「は、はい!!」

私がエステールに釘を刺すと、エステールは壊れたように首を振って肯定した。
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