黒いモヤの見える【癒し手】

ロシキ

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1章

15話 先天性所持者と先天性

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私は質問してしまってから、失敗したと思って謝罪した。

「あ、す、すみません」

「いや、構わない。
そうか、アリアは魔物と俺達の戦闘は見た事が無かったか」

「それは、そうですよ。
むしろ、なんの権限もない平民なのに、私達の戦闘を知っていたら、それはそれで問題でしょう?」

「それは確かにな。
それで、どうして笑えるか、だったか。
そうだな、考えの違いかな。

アリアは俺とドリスが組んで相手にする時、危険度が1の子供でも倒せる魔物のスライム100体を相手にするのと、危険度7の魔物を1体を比較すると、どっちが危険だと思う?」

「え、えっと、それは危険度7の魔物ではないでしょうか?」

「いや、危険なのはスライム100体の方だ。
単純だが、数は脅威になる。

特に相手が、こちらの倍以上の場合はかなり上手く立ち回らなければ攻撃を受けてしまう。
その結果、攻撃を連続で受けてしまう事もありえる。

逆に相手が1体の時は、その1体だけに集中しておけば良い。
その上、その1体を殺せば良いのだから、魔力はどれだけ使っても問題はない。
だからこそ、魔物は危険度でも見る必要はあるが、それだけで考えると足元を掬われる。

まあ、これもある程度の実力がないと言えない事だけどな」

「そんな事を言えるのはエクス様とドリス主任だけですよ。
他の騎士達はエクス様が例に挙げた状況に陥ると、両方死ぬだけです」

「そうか?
危険度7くらいなら、頭か生命に必要な器官を狙えばいけるだろう?」

「いやいやいや、いけませんよ。
騎士だって人間なのですよ?」

「まるで俺が人間では無いような言い草だな」

「うえ、いえ、そんな事、あ、ありませんよ~?」

エステールさんはエクス様の追求に濁して返答し、再び空を見つめ始めた。
そんなエステールさんを見つつ、【付与師】さんが言った。

「まあ、エステールは後で締め上げるとして、今はアリアさんの魔法を試しましょう」

「魔法?
何を使わせるんだ」

「もちろん4属性の魔法ですよ?
得意な属性は分かりませんが、魔法を発動させる体験をしておけば、得意な属性が分かってからスムーズな魔法発動が出来るでしょう」

「それもそうか。
なら【水】属性の魔法だな、一番安全だし」

そこまで言うと、エクス様は危険度15の魔物で混乱していた私に向き直った。
それから私に手を出してきて、言った。

「とりあえず、先に感覚的に教えるから手を繋げ」

「は、はい」

すると、エクス様は繋いでいない手を前に出した。
それから私の体にエクス様の魔力が流れてきて、その魔力はエステールさんの魔力よりも少なかった。
けど、それは凄く早く動いて私の体を一瞬で回ってから、エクス様の手に集まった。

それから手に集まった魔力が体の外に出ると同時に、手から球体状の水が遠くに飛んでいった。

それからエクス様は私に向き直ってから、言った。

「どうだった?」

「とても早く体に魔力が回って、それから一瞬で手に魔力が集まってました」

「まあ、そうだろうな。
それに魔法は早く発動すれば良いという訳でもないから、俺のように速くする必要はない。

今の感覚だけで使えそうか?」

「えっと、やってみます」

私はエクス様に言われて、手を前に出した。
それから魔力を体に流して、手に魔力を集めて、外に魔力を球体状の水に変えて出すイメージをした。

すると、エクス様のように球体状の水ではなく、水がちょろちょろ流れただけだった。

それを見た【付与師】さんは拍手した。

「おお、一回で魔法を使える様になるなんて凄いね。
最初は失敗して、少しコツを教えてから何日も練習して、ようやく発動出来るようになるのに、流石の才能ね。

やっぱり、アリアさんも先天性所持者ギフテッドだったのね」

先天性所持者ギフテッド?」

「あら、説明してないのね。

先天性所持者ギフテッドは生まれた瞬間から魔力を使い続けている者の事よ。

しかも、先天性所持者ギフテッドが魔力を使い続けているのは、体の何処かを無意識に強化し続けているからなの。
因みに、その強化の事を先天性ギフトと呼ぶの。

それによって強化されていた体は、普通の人よりも強化されたり、特殊な能力を持ったりする事もあるし、魔力の総量自体も先天性所持者ギフテッドとそうでない人を比べると何倍も多いの。

因みに、エクス様も先天性所持者ギフテッドなのよ。
だから、領主様や奥様、私よりもエクス様の方が魔力の総量が多いの」

「そ、そうなんですね。
でも、私は先天性所持者ギフテッドでは無いと思いますけど」

「あら、そう?
何かあるんじゃない?

身体能力が他の人よりも強いとか、耳がとても良いとか、頭がとても良いとか、見えない何かが見えるとか。
どれかに心当たりはない?」

「え?
あ、えっと、黒いモヤモヤは見えました」

私は【付与師】さんの言葉で、最近まで見えていたモヤモヤの事を思い出して、口に出した。
ただ、この黒いモヤモヤはいつも見えていたのに、魔力を使い始めてから見えなくなっていた。

【付与師】さんは私の言葉を聞いて目を見開き、私に詰め寄ってきた。

「黒いモヤモヤ!!
どんな物!?」

「うえ、えっと多分、怪我をしていたり、疲れている人に付いている物だと思います」

「その黒いモヤモヤは、今も見える!?」

「え、いえ、今は見えません」

「キター!!
やっぱり私の仮説は正しかった!!」

【付与師】さんは私の言葉を聞いて、喜んで叫びながら、私に詰め寄って来た。
それを見ていたエクス様とエステールさんは頭を抱えていた。

「そういえばドリスは先天性所持者ギフテッドについて研究していたのだったか」

「ええ、研究テーマは先天性所持者ギフテッドと魔力の総量増加の関連についてですね。
確かエクス様で大まかに増加量を割り出したので、後は先天性所持者ギフテッドが魔力を流している場所による増加量の違いを確かめるとか言ってましたよ」

「はぁ~、先天性所持者ギフテッドと魔力の総量増加の関連についての研究なんて、公表すれば莫大な報酬が手に入るだろうに。
本当に変態でなければ素直に優秀だと褒められるのだが」
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