黒いモヤの見える【癒し手】

ロシキ

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1章

17話 別視点(エクス②)

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ドリスと共に呼び出しを受けた為、アリアの訓練を切り上げ、父上を訪ねた。

「父上、エクス並びに魔道具研究室主任ドリスの両名、お呼びとの事で伺いました」

「入れ」

部屋の中には父上の側近は居らず、母上と父上だけが居た。

「失礼します」

「エクス、ドリス、座ってくれ」

俺が椅子に座ると、ドリスは空いている椅子に座らず、椅子を俺の側に持ってきて座った。
それが大体は何時もの事なので、顔を顰めつつ何も言わなかった。

それを見た母上が苦笑いしつつ言った。

「エクスもドリスも、いつも通りね」

「お久しぶりです、母上。
ほんの1ヶ月前に王都に呼び出しを受け、出発したと記憶していますが、いつお帰りになったのですか?」

「今さっきよ。
呼び出しが終わってから、【風】属性の魔法を駆使して、私単身で1日掛けて帰ってきたのよ?」

「随分と無茶をしましたね。
普通に移動すれば王都まで1ヶ月掛かる筈なのに、その道程を1日で踏破するとは」

「王都に居ても無駄な面会が増えるだけだもの。
ただ、今回に限っては良かったと思ってるわよ?」

「ああ、危険度15の魔物ですか。

報告した騎士達に、今後はもう少し声を落として会話するように指示を出しておいてください。
ドリスが【風】属性の魔法で声を拾っていましたよ」

俺が報告すると、父上と母上は頭を抱えていた。
まあ、騎士達も余計な情報を漏らさないように気を付けていた筈だから仕方ない。

父上と母上は少し頭を抱えてから、話を切り出した。

「知っているのなら話は早い。
危険度15の魔物、『タートル』が確認された。
ついては精鋭である魔法騎士部隊を防衛並びに攪拌の主軸とし、エクス、ドリス、私の最高火力で『タートル』を討伐する」

「っ!!
タートル系ではなく、『タートル』でしたか。

中々厳しい戦いになりますが、父上も前線に?
流石に辺境伯家当主である父上が前線に立つのは危険では?」

「それを言うならば、辺境伯家の長男と魔道具研究室主任が常に前線に出ている状況の方が危険だ。

お前達も良い加減、前線から離れろ」

「辺境伯家の人間が1人も戦場に立っていない状況は望ましくないでしょう」

「私はエクス様が前線に立つので、前線に立ちますよ?」

父上の言葉に、俺とドリスが即座に答えると、父上はため息をついた。

「はぁ~、全く頑固者共め。
しかし、今回は私も譲れん。

負ければ城壁が破られ、街が蹂躙されるだろう。
そんな事を許すわけにはいかん。

だが、魔法騎士部隊とお前達でも危険度15の魔物を相手にするのは、難しいだろう。
であれば、私も出るしかあるまい」

「本当なら、私も出たいのだけどね。

ねえエクス、今回は私の代わりに後衛に回らない?」

「回りません。
俺はいつも通り、前線に回してください」

俺の言葉を聞いて、父上と母上は頭痛を耐えるように、頭を抱えた。
この話をすると、いつも同じような仕草をする。

なので、俺を後衛に回したいのは本当なのだろう。

そんな事を考えていると、母上が諭すように言った。

「貴方には王都の貴族達から縁談も来てるのよ?」

「どうせ受けてないでしょう?」

「それは、そうだけど」

「それに父上と母上は縁談からの結婚でしたか?
仮に縁談から結婚しても、王都に住んでいる貴族の大半は母上のように辺境伯家の女主人として振る舞えないでしょう?」

「確かに辺境伯家の女主人は魔法使いの方が良いのは間違いないわ。
でも、必須ではないのよ?
でも、貴方には婚約者が必要よ」

「今は必要ないでしょう。
王都で、ドーラス辺境伯家の男の婚約者が必要なら、ジャックに付ければ良いでしょう。
どうせ今回の件が無事に片付けば、王都に向かわせるのでしょう?」

「はぁ~、必要なのは辺境伯家の婚約者ではなくて、貴方の婚約者なのよ」

「まさか、王家から何か言われましたか?」

「まあ、王家から貴方の婚約者を作る事は要請されたし、候補者も用意されていたわ。
でも、どれも王家に近い家の娘だったから駄目ね」

「そうですか。
それなら、暫くは婚約者なしで良いでしょう」

俺は母上の質問に返答しながら、今回の魔物の事を思い浮かべていた。

『タートル』は、単純に大型(最低でも全長30メートル)の亀の形をした魔物だ。

この魔物の嫌な所は物理、魔法共に効きづらく、遠距離からはダメージ自体が通らない事がほとんど。
致命傷を与えるには最も柔らかい部位である首元まで接近し、首を切り離すのが一番良い方法らしい。
しかし、首元まで近づけても、甲羅よりはマシだが首元自体も固く、傷を付けるだけでも、攻城兵器以上の火力が必要になる。

これらの事は200年前に他国で出現したタートル討伐時の情報を元にした物である為、正確性が高い。

そして、この魔物の悪名である『戦争殺し』は、この魔物が出現すると戦争が無くなる事からきている。
本当ならば『戦争殺し』は、むしろ名誉な称号にもなり得る。
しかし、200年前に出現した際に起こっていた戦争で集まっていた人間や物資を見境なく食い散らかした事から悪名として呼ばれ、この魔物の出現は大陸を震え上がらせる。

特にこの魔物は危険度15の魔物の中では、危険度16の埒外想定に最も近い魔物。
この魔物の名称が『タートル』なのは、魔物の中で最高硬度と呼び声があるほどに固く、首を落とさない限り死なないほどの生命力。
そして、ただ歩くだけで軍すら蹂躙してしまう堂々たる姿。
この事から『タートル』に対して、不純な単語を付け加えることを辞めてしまった為に、『タートル』という名称になった。


タートル系という亀の形をした魔物の総称もあるが、『タートル』はタートル系の中でも最強にして、最凶と聞く。 
危険度15のタートル系は何種類かおり、その中でも『タートル』は最も確認例が少なく、これまで2回さか確認されていないので、他のタートル系だと思っていた。

今も父上や母上と無駄話をする余裕があるように振る舞っている。
しかし『タートル』は現状の戦力で10%あった勝率が、1%にまで落とす相手であるので、人目がなければ頭を抱えたいくらいの絶望感がある。

それでも、俺自身が前線に居ると決めている以上は、何時までも絶望感を感じている暇はない。
そう考えて、俺は父上に質問した。

「さて、少し話が逸れていましたが、今は『タートル』が優先です。
相手は悪名高き【戦争殺し】ですが、どう討伐しますか?」
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