血の魔法使いは仲間を求める

ロシキ

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1章 第1部 追放と一人目

5.5話中編 入場後に(国王視点)

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私とカラオが卒業パーティーの会場に入場した時には、おかしな空気が漂っていた。
まるで『なんでパーティーが継続しているんだ』とでも言うような空気だ。

おかしな空気を感じ取ったカラオも、なんでこんな空気になっているのか分からずに、ほんの少しだけ眉を潜めている。

そのためにすかさず事情を聞こうとストレンスを探すがすぐに見つからず、宰相や騎士団長にも目線をやったが首を振られた。
誰かに事情を聞き、何故この様な雰囲気になっているのか把握しようとしていたが、私とカラオに用意された席についてしまった。
流石にこのまま何もせずにパーティーを続けるのは不味いと判断した私は、私とカラオの為に用意された席に座ると同時に言った。

「今回は我が娘と我が国の魔法使いストレンス・ブラーディトが卒業する記念すべきパーティーだ。よって今回は特別に無礼講とする。何か言いたいことがある者はおるか?」

私とカラオはこの場でストレンスが出てくると思っていたが、予想外の人物が出てきた。

「陛下!!恐れながら、申し上げたい事がございます!!よろしいでしょうか!!」

それはユウキ・バーデンだった。
正直彼の兄は仕事が出来る男だが、この男は仕事は出来ないは、自分よりも地位が低いものには強く当たるはで、あまり話したくない人物だ。
ただ建前とはいえ、自分から無礼講だと言った手前拒否する事は出来ない。

そのために、ユウキから顔と目を反らさない範囲でストレンスを探し続けながらも、ユウキに話す許可を出した。
すると、ユウキは自身だけでなくアイリスを伴って私達の前に出てきた。

しかし、その距離感はダンス等もあるために時たま必要以上に近づくことはあれど、決して貴族の既婚者でない者達の普通の距離では無く、恋人又は婚約者とは言い難いが、決して友人とは言い張れない無い距離感だった。
それを見たカラオは目を鋭く細め、アイリスに忠告した。

「アイリス。貴方にはストレンス・ブラーディトという、正式な婚約者が居るのですよ?それなのに、その距離感はなんですか?」

私はカラオが言った『ストレンスというブラーディトという言葉に驚かなかったが、会場の大半はその言葉に驚いた様子だった。
まあ、ストレンスは魔法使いとはいえ一応三男なので、家を出ると考えていた者が多かったのだろう。

一応この事についてストレンスに承認を貰っていたが、その様に誤解させ、ストレンスが余計なハニートラップ等を受けない様にするためとはいえ、ストレンスの父親を公爵家の当主扱いするのは私でさえ不快だったのだ。
ストレンスはさぞ辛かっただろう。
公式の場での謝罪は出来んが、ストレンスの父親とその家族は公の場に出れんようにしなければ、私の気が収まらんな。

そんな事を考えていると、ユウキとアイリスは顔を青くしたが、それでもユウキとやらが私達に言った。

「も、申し訳ありません、王妃様。ですが、を認めて頂きたいのです」

そうユウキが言った瞬間に、私とカラオ、この場に居る宰相や騎士団長、更にはアイリスの事情を知る者達は思考に空白が生まれた。
私はそんな中でも辛うじて暗部に目線で確認したが、首を横に振り分からないと返してきた。

そもそも王家の暗部はこのパーティーでは殆どの重鎮が集まる為に同時に各地が手薄になるので、国内全ての主要都市や危険地域に赴くと同時に、会場自体の警備かあるので手一杯になる。
今回はストレンスも会場内には居るので、暗部は私達が入場してから会場に入る予定になっていた為、情報は無いだろう。

私がその事を理解し、この状況は非常に不味いと徐々に理解出来始めて居ると、未だに固まっていた事を好印象だと捉えたのか、ユウキは更に言い募った。

「あの魔術師にもなれぬ者は、アイリスには相応しくありません!!ですからー」

「ストレンス!!ストレンスは何処ですか!?この場に居るのでしょう!?早く出てきなさい!!」

ユウキの言葉を遮り、カラオが叫んだ。
その叫びで私の他固まっていた者達、現状を素早く理解させられた為に動き出し、急いで会場を見回してストレンスを探した。
しかし、どこにストレンスは居らず、段々と私達が事態の深刻さに震えてきていると、ブラーディト家の当主代理、いや元当主代理が得意げに私達の前で言った。

「あの出来損ないを、陛下や王妃様、他の方々も評価しておられたようですが、あれは無能ですからから追放しました。

その事を陛下達に知らせようとしたものおりましたが、その様な事は報告するまでも無いと黙らせていました。しかも『転移玉』で飛ばしましたので、今頃は魔の森で魔物達の餌になっているでー」

そう言った瞬間に、カラオの筆頭護衛騎士である女騎士、エリーシア・ドラークが元当主代理を殴り飛ばした。

彼女はストレンスを除けば我が国でもトップだと言っていい強者であり、しかしストレンスとは圧倒的な差があった。
その為、彼女はストレンスの強さに憧れ、尊敬すると同時に、彼女がまだ騎士見習いだった頃に命を救われいるので、恋慕していた。

本人的にはストレンスに婚約者が居た事から隠しているようだったが、エリーシアのことをよく知っている人間ならば気がつけることだった。

そんなエリーシアはその後に私達に振り返り、膝をついた。

「ストレンス殿は既に我々近衛騎士団の総力を上げても勝てぬ戦力を有しておりますので、魔の森といえど簡単には死ぬことは無いと思います。ですが、戦力がいくらあろうとも一人で魔の森を生き抜くのが難しい事もまた事実です。

なので今すぐにあの愚か者を殺し、私個人が所有している『転移玉』を使いストレンス殿を追う許可を頂けないでしょうか」

私はその願いに許可を出したかったが、それをすることは出来なかった。

「エリーシア。私とてストレンスを追いたい気持ちはあるし、そこの愚か者を殺したい気持ちもある。だが、まずは調査からだ。そこの愚か者がどんな罪を犯したのかを全て暴き出し、それに相応しい罰を与える。

それにストレンスをお前に追われては、城の警備に係る。よって、ストレンスの調査部隊自体は『転移玉』にて早急に出すが、お前が追うことは許可出来ない。分かってくれ」

「はっ」

私が言ったことに理解を示したのか、エリーシアは頭を垂れた。
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