血の魔法使いは仲間を求める

1章 第2部 街へと二人目

22話 エリーシアとの再開

「お久しぶりですね、ストレンス殿。助けて頂き、ありがとうございます」

状況を知るために『鷹の目』で索敵しながら、爆発音がする場所を探っていると、そこに見知った顔があった。
それに気がついてから、アイミナに「先に行くから、追って来い！！」と言い、『身体強化』から『飛翔』に魔法を切り替えて急いだ。

そして、見知った顔の人間が総攻撃を受ける寸前で魔法の範囲内に入ったので『加重』を発動させた。
他の魔法ならば有効射程は『加重』よりも長かったが、それでは『トレント』達に囲まれているエリーシア殿を守れないと判断した。

なので騎士エリーシアを中心として、尚且中心部分と俺だけには『加重』の効果が及ばないようにして、『加重』を使用した。
その結果としてエリーシア殿を守れたというわけである。

とりあえず『トレント』に止めを刺す為に『加重』は維持したままで指を切り、『増血』『操血』『形血』を発動させて血剣を作り出し、『トレント』達を確実に仕留めていった。

目に見える『トレント』達に止めを刺し終えた後も、暫くは『トレント』に『株分け』された一段下の『トレント』達が居ないかを確認する必要があった為に、この場に残る必要がある。
なので、周囲を警戒し続けながらだったが、エリーシア殿に声をかけた。

「確かにお久しぶりですね。最後にご一緒したのは、王城で行われた建国祭のパーティーでしたか。

それでエリーシア殿はなぜこの場所に？」

俺は少しだけエリーシア殿を警戒しながら質問した。
俺はエリーシア殿よりも強いが、エリーシア殿が俺を王国に連れ戻すだけならば、『転移玉』を使えばそう難しいことでは無いし、今からアイミナも来るのだから警戒していて損はない。

そんな理由から『トレント』を警戒しつつ、エリーシア殿も警戒していると、エリーシア殿は恥ずかしそうに頬を掻きながら言った。

「実はストレンス殿にお会いしたくて、辞任書を自室に置き城を『転移玉』で飛び出してきました」

「ーは？今なんと？」

俺はありえない言葉が聞こえてきたので、一瞬の思考の空白の後にエリーシア殿に再度質問した。

「で、ですから、そのストレンス殿と、お会いしたくて、城に辞任書を置いて飛び出してきました」

やはり聞き間違えでは無かったらしい。
エリーシア殿は俺に会いたくて騎士を辞めてまで、俺を追いかけてきたのか。

は？まじで！？
そもそも騎士って完全とは言わないがかなり実力主義で、騎士になるには最低でも単独級の魔物と戦い勝てなくとも生き残れるレベルは必要だ。

それくらいの強さの人材は極端に少ないとは言わないが、魔物が蔓延るこの世の中では貴重な人材。
なので、騎士には最低でも騎士爵位という１代限りの爵位が与えられるし、部隊級の魔物と単独で渡り合える強者になれば男爵位くらいは貰える。
そして、エリーシア殿は男爵位を授かるほどの強者であるため、王国は大混乱しているだろう。
なにせ、部隊級の魔物を倒すことは出来なくとも単独で生き残れる程の強者は各国に5人居るかどうかなのだから。

そんな人が俺に会いたくて追いかけてくるて、こう言ってはなんだが、俺自身にはそこまで魅力は無いし、追いかけてくるエリーシア殿もエリーシア殿だと思う。

俺がそんな風に考えて困惑していると、アイミナが俺に追いついてきた。

「ボス！！どうでしたか！？」

エリーシア殿は俺に話しかけてきたアイミナに反応して、アイミナを見つめた。
アイミナはそんなエリーシア殿の視線に反応して、ささっと木の後ろに隠れてしまった。

そんなアイミナに『この人は俺の知り合いだから、そう反応するな』と言おうとした所で、エリーシア殿から声かかった。

「ストレンス殿、そちらの少女は？」

「え？あぁ、この子はアイミナだ。色々あって今は俺の仲間で、一緒に暮らしてる」


俺がそう言った所でエリーシア殿の雰囲気が変わった。

「ほう？そんな隠さなければならない所が見えそうな程にサイズが合っていない服で、一緒に暮らしている、と？」

そう言ったエリーシア殿は見えない黒いオーラをたれ流しながら俺にそう質問してきた。
俺はそのオーラに気圧されたものの、質問に答えた。

「そ、そうだが、彼女は俺の義理の家族の様な物なんだ。誓って変なことはしていないぞ？」

「そうなのですか」

俺が質問に答えると、エリーシア殿のオーラが消えたので、エリーシア殿に気づかれないように息を吐いた。