血の魔法使いは仲間を求める

ロシキ

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1章 第2部 街へと二人目

35話 二度目の『命血』

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『命血』の光が収まった時には、エリーシアは色々と変わっていた。
まず、エリーシアは平民の出身で平民の多くは茶色がかった髪色と瞳で、エリーシアもそれに漏れていなかった。

しかし、『命血』が発動し終わった今は、エリーシアの髪は赤くなっていた。
その変化に俺とアイミナが驚いていると、エリーシアが目を覚ました。

「ん、ここは?」

「エリーシア!!大丈夫か!?」

俺がそう質問すると、エリーシアは俺の方を見ながら起き上がった。

「ストレンス殿?私は何故ここに?確か、結界の中に入ってからー、そうだ!!ストレンス殿!!悪魔はどうなりましたか!?」

「落ち着けエリーシア。悪魔は俺が倒した。それよりも、何処か痛かったり、違和感を感じたりする箇所はないか?」

「え?ええ、ありませんよ?それに寧ろ調子がいいような?」

「なに?」

俺がその言葉に驚いて、『マジックアイ』を使用して服の下を見るのではなく、体内を見ることを意識して発動させた。
すると、どういう訳か分からないが、魔力槽や魔官がきちんと機能していた。

それを見て、「まさか、『命血』には体の状態を完全にする追加効果でもあるのか?」と疑問に思ったが、そんな様子の俺を無視してアイミナがエリーシアに抱きついた。

「心配したのですよ、エリーシア~!!また死んじゃうかと思ったのです!!」

「「また!?エリーシア(私)は死んでいたのか(ですか)!?」」

俺とエリーシアがアイミナの言葉に反応すると、アイミナは両手をワタワタとさせながら否定した。

「あ、ち、違うのですよ!!また、というのは私と仲良くしてくれた、群れの仲間が死んじゃうかと思ったのです」

「群れ?」

エリーシアがアイミナの「群れ」という単語に首を傾げていたが、俺はそれを無視してアイミナが「また」と言った理由が分かった。
恐らく、『ウォレストウルフ』の群れに居たときに仲が良かった『ウォレストウルフ』が死んだか、殺されたかしたのだろう。

俺はなるほどと納得しながらもエリーシアにはアイミナが元々『ハイ・フォレストウルフ』だと言う気は、まだ無いので話を変えた。

「それよりもエリーシア、実はエリーシアに名付けの様な事をしてしまったんだ。名前自体はエリーシアのままだが、名付けを行ったという事実自体が不快かもしれないが、許してくれ」

「私に名付けを?」

「あぁ、体だけなら回復系の魔法で簡単に治せたんだが、魔力槽や魔官の機能が結界内の魔力の濃度のせいで壊れていて、一か八か『命血』という魔法の回復効果に賭けるしかなかったんだ。

不快だと思うが、口外しないと誓うから許しー」

俺がそう言いながら頭を下げようとした時、エリーシアに声をかけられた。

「頭を下げないでください、ストレンス殿。私が結界の中に行くと言ったのは自身の意志です。それに私の方こそ今度は役に立つと言ったのに、再び足手まといになってしまい申し訳ありません」

「エリーシアは悪くないのです!!悪いのは私なのです!!相手の強さも分からないのに、結界?の中に突っ込んでしまったのです」

そう言ってしょぼくれる2人を見て、俺は空気を変えるように言った。

「それを言うなら、相手の強さを正確に測れなかった俺にも非はある。だから、この件はみんな悪い、それで終わりだ。

それとエリーシア。一つお願いがあるんだが、いいか?」

「お願いですか?」

「あぁ、エリーシアに使った『命血』という魔法は正直に言ってぽんぽん発動させたいものじゃない上に、効果内容がはっきりとしていないんだ。

だから、効果内容を確認する為にも、出来ればエリーシアは今後俺達と行動してほしい。もちろん、エリーシアが嫌だと思うなら、断ってくれて構わない」

俺の言葉に一瞬の躊躇いもなくエリーシアは言い切った。

「分かりました。出来る限りお2人と行動を共にしましょう。そして、その間に強くなり、今度こそストレンス殿の盾になってみせますとも!!」

その言葉に俺は苦笑い浮かべながら言った。

「俺としては盾になるよりは自分の命を大事にしてほしいんだけどな。ともかく、これからも宜しく、エリーシア」
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