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異常な平常
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俺は栞の待つ喫茶店に戻った、すると外の騒ぎを聞きつけた栞が、俺の顔を見て何があったのか悟ったようだった。
「仁君、もしかしてだけど、まさか今この外で例の……」
「そうだよ、そこのすぐ近くの公園にまた……」
「……さっき出て行ったのはその事件に関係あるの?」
栞はまた俺の表情から読み取ったのか鋭い質問を投げかけて来た。
「いや、そんなことは……」
否定しようとしたが栞の確信に満ちた表情を見て、正直に打ち明ける事にした。
「う、うん、学校の事件の事覚えてるよね、あの時学校に向かう前にすれ違った黒コートの人は覚えてる?」
「そういえば、暖かいのに不思議だねって話をした人だよね、うん、覚えてる」
「さっきこの喫茶店に入る時にその人と入れ違いになったんだ、それで変な違和感を覚えてこっそり跡をつけてみたんだ、そうしたらその人がこの事件の犯人だった」
「そ、そんな、仁君はその人に見つかったの?」
いつもの喋り方が抜けている栞に俺は気付いた、ここでさっきの話をすれば栞はきっと正気ではいられないだろう。
「……いや、見つかる前に隠れてやり過ごしたから大丈夫だと思うよ、ただその人が現場から離れた後に親子連れが来て現場を目撃して辺りが騒がしくなって来たから戻って来たんだ」
「そ、そうなんだ、見られてなくてよかったね、見られてたら何されてたか……」
(選択肢を与えよう、一つお前自身が死ぬ、二つお前の大事な人を代わりに殺す、さぁ好きな方を選べ)
先程の犯人の言葉が栞のその発言で思い起こされ、俺は身を強張らせた。俺か俺の大切な人、この場合大切な人はもちろん家族とあと……
そう思いふと顔をあげ栞の方をみると栞もこちらを心配そうに見つめていた。
「仁君、大丈夫かい?本当に犯人とは何もなかったんだよね?」
そう問いかけてくる栞の表情からは俺が犯人と何かしらあった事がわかっているような表情だった、だがここで嘘を突き通さないと栞も危険に巻き込んでしまう可能性がある。そう思い俺はなんとか表情を取り繕って栞に笑いかけて見せた。
「だから大丈夫だよ、それより今日はもう帰ろうか、大丈夫だったとは言え今からお昼を食べる気分にはなれないからね」
「そ、そうだよね、分かったよ」
そう言って俺たちはその喫茶店を後にした、そしていつもの別れ道でお互いにそれぞれの家路に向かい歩き出した、しかしその時、俺は栞の思い詰めた表情に気付かないほど自分自身が追い込まれている事に後悔することになった。
翌日は何事もなく、日常が過ぎていった、明日、自分の命が失われるはずなのに周りの世界はまるで今までと何も変わらないかのように、そんな日常を自分自身が置かれている非日常の立場から見た時に少し恐ろしく感じた、その日は栞ともあまり長話もせず学校が終わったらすぐにそれぞれ自分の家へと帰った、そして俺は家のベッドに倒れ込み明日の夜の約束を思い出し、自分の愚かさをひたすらに嘆いた、だがここで逃げて家族や栞を危険な目に合わせる可能性を考えた時にどうしても逃げ出す選択肢は取れない、いや取りたくないとも強く感じた。
(明日、俺は死ぬ、だけどタダで死ぬ気はない、せめて俺の死と引き換えにしてでもこの事件に終止符を打つ、その為にはなんとか奴の素性を暴いてそれを警察に伝えられたら……)
そう思い、俺は明日の正念場へ向け準備を始めた、その時にはあんな結末が待っているとは露とも知らず……
時を同じくして、街外れの廃屋に件の人物はいた、また以前と同じようにパソコンで通話をしながらだ。しかし前回との違いはあの感に触る科学者風情のやつではなく、その人物の雇い主と繋がっているという事だ。
「やぁ、報告は聞いているよ、例の人物を見つけて接触まで済ませたとか、どうだいスキルは使われなかったかね?」
「はい、気をつけましたがスキルを使う気配どころかスキルすら知らないような状態でしたので恐らく問題はないかと、しかし確かに渡された機械は反応を示しましたが本当に奴が目標なのか疑問に感じました」
「ふむ、なるほど、それは興味深い意見だね、考えられる可能性としては2つ、1つは君にすら気取られないようにスキルを上手に隠していた、まぁ君の報告の状況からしてこちらの読み通りのスキルならばあの時に使わない方が不思議だがね、だからこちらの可能性はほぼあり得ないと考えていいだろう、とすると残すはもう一つの可能性だが信じられないが、彼のスキルなら可能だろう」
「それはどういう事ですか?」
「……自分自身にすらスキルをかけている、そして違和感を生まないようにあの街全体の人々にスキルをかけているという事だ」
「そんな馬鹿な、いくらなんでもそれは無理が……」
「無理があると言いたいんだろう、私もそう思いたいが今回の彼のスキルそしてそのスキルの強さを考えた場合どちらも不可能ではないのだよ、いや、むしろこの程度で収まっているのが奇跡と言っていいくらいだろう、だからこそ早く奴らに先を越される前に彼の確保をしなければならない、くれぐれも明日気を付けたまえ、下手に刺激してスキルを使われでもしたら手の打ちようが無くなってしまうからね」
「かしこまりました、十全に気をつけます」
そうして2人の会話は終了し、そこには暗くなったパソコンと例の人物が取り残された、自身の雇い主に聞かされた今回の目標の規格外さに一層気を引き締める事にし、明日の約束の時間までを確認し束の間の眠りについたのだった。
「仁君、もしかしてだけど、まさか今この外で例の……」
「そうだよ、そこのすぐ近くの公園にまた……」
「……さっき出て行ったのはその事件に関係あるの?」
栞はまた俺の表情から読み取ったのか鋭い質問を投げかけて来た。
「いや、そんなことは……」
否定しようとしたが栞の確信に満ちた表情を見て、正直に打ち明ける事にした。
「う、うん、学校の事件の事覚えてるよね、あの時学校に向かう前にすれ違った黒コートの人は覚えてる?」
「そういえば、暖かいのに不思議だねって話をした人だよね、うん、覚えてる」
「さっきこの喫茶店に入る時にその人と入れ違いになったんだ、それで変な違和感を覚えてこっそり跡をつけてみたんだ、そうしたらその人がこの事件の犯人だった」
「そ、そんな、仁君はその人に見つかったの?」
いつもの喋り方が抜けている栞に俺は気付いた、ここでさっきの話をすれば栞はきっと正気ではいられないだろう。
「……いや、見つかる前に隠れてやり過ごしたから大丈夫だと思うよ、ただその人が現場から離れた後に親子連れが来て現場を目撃して辺りが騒がしくなって来たから戻って来たんだ」
「そ、そうなんだ、見られてなくてよかったね、見られてたら何されてたか……」
(選択肢を与えよう、一つお前自身が死ぬ、二つお前の大事な人を代わりに殺す、さぁ好きな方を選べ)
先程の犯人の言葉が栞のその発言で思い起こされ、俺は身を強張らせた。俺か俺の大切な人、この場合大切な人はもちろん家族とあと……
そう思いふと顔をあげ栞の方をみると栞もこちらを心配そうに見つめていた。
「仁君、大丈夫かい?本当に犯人とは何もなかったんだよね?」
そう問いかけてくる栞の表情からは俺が犯人と何かしらあった事がわかっているような表情だった、だがここで嘘を突き通さないと栞も危険に巻き込んでしまう可能性がある。そう思い俺はなんとか表情を取り繕って栞に笑いかけて見せた。
「だから大丈夫だよ、それより今日はもう帰ろうか、大丈夫だったとは言え今からお昼を食べる気分にはなれないからね」
「そ、そうだよね、分かったよ」
そう言って俺たちはその喫茶店を後にした、そしていつもの別れ道でお互いにそれぞれの家路に向かい歩き出した、しかしその時、俺は栞の思い詰めた表情に気付かないほど自分自身が追い込まれている事に後悔することになった。
翌日は何事もなく、日常が過ぎていった、明日、自分の命が失われるはずなのに周りの世界はまるで今までと何も変わらないかのように、そんな日常を自分自身が置かれている非日常の立場から見た時に少し恐ろしく感じた、その日は栞ともあまり長話もせず学校が終わったらすぐにそれぞれ自分の家へと帰った、そして俺は家のベッドに倒れ込み明日の夜の約束を思い出し、自分の愚かさをひたすらに嘆いた、だがここで逃げて家族や栞を危険な目に合わせる可能性を考えた時にどうしても逃げ出す選択肢は取れない、いや取りたくないとも強く感じた。
(明日、俺は死ぬ、だけどタダで死ぬ気はない、せめて俺の死と引き換えにしてでもこの事件に終止符を打つ、その為にはなんとか奴の素性を暴いてそれを警察に伝えられたら……)
そう思い、俺は明日の正念場へ向け準備を始めた、その時にはあんな結末が待っているとは露とも知らず……
時を同じくして、街外れの廃屋に件の人物はいた、また以前と同じようにパソコンで通話をしながらだ。しかし前回との違いはあの感に触る科学者風情のやつではなく、その人物の雇い主と繋がっているという事だ。
「やぁ、報告は聞いているよ、例の人物を見つけて接触まで済ませたとか、どうだいスキルは使われなかったかね?」
「はい、気をつけましたがスキルを使う気配どころかスキルすら知らないような状態でしたので恐らく問題はないかと、しかし確かに渡された機械は反応を示しましたが本当に奴が目標なのか疑問に感じました」
「ふむ、なるほど、それは興味深い意見だね、考えられる可能性としては2つ、1つは君にすら気取られないようにスキルを上手に隠していた、まぁ君の報告の状況からしてこちらの読み通りのスキルならばあの時に使わない方が不思議だがね、だからこちらの可能性はほぼあり得ないと考えていいだろう、とすると残すはもう一つの可能性だが信じられないが、彼のスキルなら可能だろう」
「それはどういう事ですか?」
「……自分自身にすらスキルをかけている、そして違和感を生まないようにあの街全体の人々にスキルをかけているという事だ」
「そんな馬鹿な、いくらなんでもそれは無理が……」
「無理があると言いたいんだろう、私もそう思いたいが今回の彼のスキルそしてそのスキルの強さを考えた場合どちらも不可能ではないのだよ、いや、むしろこの程度で収まっているのが奇跡と言っていいくらいだろう、だからこそ早く奴らに先を越される前に彼の確保をしなければならない、くれぐれも明日気を付けたまえ、下手に刺激してスキルを使われでもしたら手の打ちようが無くなってしまうからね」
「かしこまりました、十全に気をつけます」
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