才能〜才無きもの非ず〜

倖村

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崩壊した虚飾

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約束の日を迎えた俺はいつも通りの日常を過ごし、家族や周りの人に気取られないようなるだけ平静に努めて過ごした、学校からの帰り際栞が何か言いたそうにしていたが、ちゃんと聞いてやれずにお互いの家路へと向かった、そして約束の時間が迫り、自身の机に親への感謝の手紙を残し俺はこっそり自分の家を後にした、なぜか小さい頃の記憶がほとんどないが、この家で過ごした10数年を噛み締め俺は指定された廃屋へ向かった。
廃屋までは実にあっさりとついた、まるで俺の家から廃屋までの道に人が寄り付かないようにでもなっているかのように、その異常さに違和感を覚えつつ、俺は扉を叩いた。
「どうぞ」
そう中から例の犯人の声が聞こえた、俺は恐る恐る中に入った、部屋の中は実に簡素だった、部屋の奥に簡素な机と椅子そしてその机の上にはパソコンが一台、部屋の中央にも1つ椅子が置いてあるただそれだけの部屋だった。犯人は奥の椅子に腰掛け、こちらじっと睨んでいるように見えた、というのもやはり例の黒コートを目深に被っているのとこの暗さでそう感じただけなのだが。
「よく来たな、てっきり逃げ出すものかと思っていたが、それなりに男らしいところがあるじゃないか、やはり家族や大事な恋人の命には変えられないって事かな?」
「……っ」
やはり栞のことを既に調べがついていた、最悪の予想通りだった、犯人の今までの犯行の手際から考えてこの日までに俺と深い関係の人間をピックアップされている可能性があることは分かっていたがやはり実際に言われると恐怖を強く感じたがなんとか押し込め返答した。
「まぁ、当然だと思うよ、あの時既に僕に選択肢はなかったと思っていたからね、こうやって約束は守ったんだからあんたも約束を守ってくれるんだろうな?」
「ふっ、威勢のいいガキだ、もちろん約束は守るさ、ただし……」
そう言って黙り込んだと思ったら音もなくこちらまで歩み寄ってきて入り口のドアに手をかけた。
「なにして……」
そう言いかけた途端犯人はいきなりドアを開けた、そして外に立っていた人物を捕まえて、先程の続きを話し始めた。
「こちらの彼女は約束違反だよね、消えてもらおうかな」
そう言い放つ犯人の腕の中には栞がいた。
「な、なんで栞がここに……」
「仁君の様子が明らかにあの事件の後おかしくて絶対に何かあると感じたんだ、だから君の家の前で待っていたらここに向かっていくのが見えたからつけてきたんだよ」
そう犯人の腕の中でいう栞は、恐怖に徐々に蝕まれているようだった。
「頼む栞を離してくれ、お願いだ」
俺は慌てて犯人に問いかける、しかし犯人はやはり顔はよく見えないがニヤリと笑ったように見え栞を中央の椅子に縛り付けながら、語った。
「私は1人で来いと伝えたはずだ、これは立派な契約違反だ、だからこの女は殺される、まぁ勝手にこいつがついてきたみたいだから半分は約束を守ったってことでお前の家族は生かしておいてやろう、まずこの女を殺してその後お前だ、動くなよ、動けばその瞬間この女はもうこの世にいない」
「そ、そんな、なんでついてきたんだよ……」
栞は恐怖を顔に浮かべながらもこちらに笑顔を作りながら応えた。
「そんなの決まってるじゃないか、仁君が私を守りたかったように私も仁君の力になりたかったんだよ」
「もうお別れの挨拶はおしまいでいいかな?」
そう言うと犯人はおもむろに栞の足にナイフを突き刺した。
「きゃあぁっ」
突然の激痛に襲われ間髪を容れず悲鳴を上げ、自身が命の危機に襲われていることを実感し恐怖に身を震わせる栞を見て、俺はその場で何もできないことへの怒りがみこ込み上げてきていた。
「いい声が出るじゃないか、ようやくお前らの立場が理解できたかな、しかしここでの殺しはこんな風に痛めつけることをしなかったから久しぶりの感覚で少し楽しくなってきたぞ」
そう言いながら、犯人は栞の反対の足にまたナイフヲ突き刺して、栞があげる悲鳴を聞いて楽しんでいるように見えた。そして俺の怒りのボルテージが頂点に達しそうになるその瞬間、先に栞の恐怖の限界が迎えた。
その時だった、栞がまるで糸の切れた人形のように全身の力が抜け崩れ落ちた。
「栞、どうし……」
栞に話しかけようと思った瞬間、栞が顔を上げた、俺はほっとしたがその後の栞の反応が俺を混乱の渦に叩き落とした。
「え、ここはどこ?いやだ!足が、足が痛い!なんなのこれ!あなた達は一体誰なの、なんでこんなことするの?お願い、助けて、ねぇ、お願い!」
「栞、どうしたんだ、僕の事も分からないのか?」
「あんた、誰よ、ねぇこの人から助けなさいよ、なんでこんな事になってるの?」
「ほぉ、これは面白い事になったな、なるほどお前、自分の女にもスキル使ってやがったのか、とんだクソ野郎だな、まぁだがこれはこれで状況が変わったな、とりあえずうるさいしこの女には眠ってもらおう」
すると犯人はポケットから取り出した布を栞の口に押し当てた、するとさっきまで騒ぎ立てていた栞が一瞬で静かになった。
「これで、まぁ最初の状況に戻ったな、じゃあ次はお前の番だな、あの女みたいにすぐにへばってもらっては困るからな、頑張れよ」
犯人はそう言うとまた音もなく一瞬で俺との距離を詰めてきた、そして犯人のナイフが俺めがけて振り下ろされそうになったその時、
―――ピロロロロ———
「チッ、もう時間か、良かったな、助かったみたいだぞ」
そう言うと犯人は栞に押し当てた布を俺の口に当ててきた、その瞬間意識が遠のいていくのが分かった。遠のく意識の奥で犯人の声が聞こえてきた。
「はい、無事確保に成功しました、スキルの発動は無かったですね、1つ問題がありまして、ターゲットの女がここに来たので対処しましたが、はい、処理はお任せします」
(そう言えばさっきからスキル、スキルってなんのことだ?後、栞は一体、何が起きたんだ……)
そこで俺の意識は完全に途絶えた、俺を待ち受けるこれからの運命を知らずに、そして俺はこの時死んでいた方がよかったのかもしれないと何度も後悔する事になるのだった。
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