4 / 21
4.
しおりを挟む
オメガであることが発覚して1年が経ち、ぼくは無事希望していた高校に進学することが出来た。
中学時代、進路のことで何度か両親と揉めたが、ぼくの定期検診の担当医である藤松先生が「オメガだからと言って普通の生活ができなくなるわけではない」と援護射撃をしてくれたおかげだ。
生活も特にこれといった変化はない。
強いていうのならば、月に一度の定期検診の予定が追加されたくらいだ。
発情期を迎えていないのも大きな理由だろう。
そんなこともあり、ぼくの高校生活は順風満帆だと思っていた。
「蓮、ごめんね。今日の昼休み、他の人と約束しちゃったんだ」
「そっか。分かった」
「ごめんね、帰りは一緒に帰れると思うから」
「大丈夫だよ。じゃあ、また放課後にね」
4時間目終わり、拓人が迎えに来てくれたものだと思って弁当を片手に彼に駆け寄ったぼくは落胆した。
仕方がない、拓人は完璧なアルファだし皆仲良くしたいんだろうなと分かってはいるが、残念な気持ちはおさまらない。
高校に入ってからも、拓人と過ごすことが多かったせいで新しい友人がいないのでおひとり様か、と弁当を持ってとぼとぼと自分の席に戻ると、後ろの席の関口に声をかけられた。
「今日は永井と行かないの?」
「なんか、他の人と約束しちゃったって」
「へー、珍しい。じゃあ、一緒にたべようぜ」
関口は、席が近いこともあって班を作る系の授業で何度か話したことがあった。
彼は、拓人以外との関わりが小学校以来ほとんどないぼくに対しても気さくに話しかけてくれて、いい奴なんだろうなという印象を抱いている。
「え? いいの?」
「勿論。むしろよくない理由なんてあるのか? たまにはクラスメイトとの交流も大事でしょ」
そう言いながら関口はぼくの椅子を机から引っ張り出し、机は後ろの関口との机とくっつけた。
「ありがとう。でも、関口も他の友達と約束とかあったんじゃないの?」
「うん? 平気平気、あいつら部活のミーティングや委員会当番のせいで今日はいないんだよ。ま、あいつらがいても篠原がおひとり様してたら普通にそうけどな」
「もう部活のミーティングとかあるんだ……。ぼくは、まだ決めてすらないや」
「まだ、入部届提出の締め切りまで結構あるもんな。田島……今日昼ミーティングに行ってるやつは部活推薦だから入学式の前から部活に参加してたんだって」
「そういうのありなんだ」
「一応、入学式前から参加するって場合はルールがあるみたいだよ。詳しいことは聞いてもイマイチ分からんかったけど」
「なんか、入学式前だと高校生って実感無いからすごく緊張しそう……」
「知ってる先輩とか仲のいい先輩がいたらマシだけど、誰も知らないってなったらアウェイ感が半端ないだろうな。オレ、そういうの結構苦手だから想像しただけでゾワッとする」
「関口はコミュニケーション能力高そうだから、そう言いながらもさっさと馴染みそう」
「え、篠原の俺に対する評価って結構高い系?」
「評価って言うとなんだか上から目線だから違う気がするけど……でも、関口はクラスに馴染めてないぼくに声かけてくれるような良い奴だなとは思ってるよ」
ぼくがそう言うと関口は照れくさそうに頬を掻いた。
案外会話は弾んで、弁当を完食する前に昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。慌てて残りの弁当をかき込んでいると、廊下の方がにわかに騒がしくなった。
中学時代、進路のことで何度か両親と揉めたが、ぼくの定期検診の担当医である藤松先生が「オメガだからと言って普通の生活ができなくなるわけではない」と援護射撃をしてくれたおかげだ。
生活も特にこれといった変化はない。
強いていうのならば、月に一度の定期検診の予定が追加されたくらいだ。
発情期を迎えていないのも大きな理由だろう。
そんなこともあり、ぼくの高校生活は順風満帆だと思っていた。
「蓮、ごめんね。今日の昼休み、他の人と約束しちゃったんだ」
「そっか。分かった」
「ごめんね、帰りは一緒に帰れると思うから」
「大丈夫だよ。じゃあ、また放課後にね」
4時間目終わり、拓人が迎えに来てくれたものだと思って弁当を片手に彼に駆け寄ったぼくは落胆した。
仕方がない、拓人は完璧なアルファだし皆仲良くしたいんだろうなと分かってはいるが、残念な気持ちはおさまらない。
高校に入ってからも、拓人と過ごすことが多かったせいで新しい友人がいないのでおひとり様か、と弁当を持ってとぼとぼと自分の席に戻ると、後ろの席の関口に声をかけられた。
「今日は永井と行かないの?」
「なんか、他の人と約束しちゃったって」
「へー、珍しい。じゃあ、一緒にたべようぜ」
関口は、席が近いこともあって班を作る系の授業で何度か話したことがあった。
彼は、拓人以外との関わりが小学校以来ほとんどないぼくに対しても気さくに話しかけてくれて、いい奴なんだろうなという印象を抱いている。
「え? いいの?」
「勿論。むしろよくない理由なんてあるのか? たまにはクラスメイトとの交流も大事でしょ」
そう言いながら関口はぼくの椅子を机から引っ張り出し、机は後ろの関口との机とくっつけた。
「ありがとう。でも、関口も他の友達と約束とかあったんじゃないの?」
「うん? 平気平気、あいつら部活のミーティングや委員会当番のせいで今日はいないんだよ。ま、あいつらがいても篠原がおひとり様してたら普通にそうけどな」
「もう部活のミーティングとかあるんだ……。ぼくは、まだ決めてすらないや」
「まだ、入部届提出の締め切りまで結構あるもんな。田島……今日昼ミーティングに行ってるやつは部活推薦だから入学式の前から部活に参加してたんだって」
「そういうのありなんだ」
「一応、入学式前から参加するって場合はルールがあるみたいだよ。詳しいことは聞いてもイマイチ分からんかったけど」
「なんか、入学式前だと高校生って実感無いからすごく緊張しそう……」
「知ってる先輩とか仲のいい先輩がいたらマシだけど、誰も知らないってなったらアウェイ感が半端ないだろうな。オレ、そういうの結構苦手だから想像しただけでゾワッとする」
「関口はコミュニケーション能力高そうだから、そう言いながらもさっさと馴染みそう」
「え、篠原の俺に対する評価って結構高い系?」
「評価って言うとなんだか上から目線だから違う気がするけど……でも、関口はクラスに馴染めてないぼくに声かけてくれるような良い奴だなとは思ってるよ」
ぼくがそう言うと関口は照れくさそうに頬を掻いた。
案外会話は弾んで、弁当を完食する前に昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。慌てて残りの弁当をかき込んでいると、廊下の方がにわかに騒がしくなった。
11
あなたにおすすめの小説
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
薄紅の檻、月下の契り
雪兎
BL
あらすじ
大正十年、華やかな文明開化の影で、いまだ旧き因習が色濃く残る帝都。
没落しかけた名家に生まれた“Ω(オメガ)”の青年・白鷺伊織は、家を救うため政略的な「番(つがい)」として差し出される運命にあった。
しかし縁談の相手は、冷酷無慈悲と噂される若き実業家であり“α(アルファ)”の当主・九条鷹司。
鉄道・銀行事業で財を成した九条家は、華族でもありながら成り上がりと蔑まれる存在。
一方の伊織は、旧華族の矜持を胸に秘めながらも、Ωであるがゆえに家族から疎まれてきた。
冷ややかな契約婚として始まった同居生活。
だが、伊織は次第に知ることになる。
鷹司がΩを所有物としてではなく、一人の人間として尊重しようとしていることを。
発情期を巡る制度、番契約を強制する家制度、そして帝都に広がる新思想。
伝統と自由のはざまで揺れながら、二人は「選ばされた番」から「自ら選ぶ伴侶」へと変わっていく——。
月明かりの下、交わされるのは支配ではなく、誓い。
大正浪漫薫る帝都で紡がれる、運命を超える愛の物語。
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
起きたらオメガバースの世界になっていました
さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。
しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。
【R18+BL】甘い鎖~アイツの愛という名の鎖に、縛られ続けたオレは……~
hosimure
BL
オレの1つ年上の幼馴染は、強いカリスマを持つ。
同性でありながら、アイツは強くオレを愛する。
けれど同じ男として、オレは暗い感情をアイツに持ち続けていた。
だがそれと同時にオレ自身もアイツへの気持ちがあり、そのはざまで揺れ続けていた。
★BL小説&R18です。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果
SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。
そこで雪政がひらめいたのは
「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」
アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈
ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ!
※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる