剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

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第3章 竜の涙

お母様の書室にて

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ウイプルの商業通りから小道に入った所で、他国の兵とウイプルの民の衝突があったらしい。

何人か負傷者が出たという。

アスデン王国の兵だという話だけど、上級兵のため、詳細は伏せられている。

近隣国との絆を深めるために、多少の代償は目をつぶるという事か。

ドメイル教徒らの聖戦より、ましだという事だろうか。

僕は久し振りに本当の家へ帰った。

お母様の書室は埃で埋もれている様だった。

この部屋に入る気も起きなかった僕が、時間の流れと共に今の現状を受け入れる様になっていったのだろう。

お母様はよく、この部屋で何かの作業をしていた。でも、僕はそれを気にする事もなく、敢えてしようとしていない様にしていたのかも知れない。

あの時の僕は。

僕は、どうして生まれた?

物事つく前の僕は、どうだったのだろう。

今になって、気になる事もあって。

この部屋の机の上に置かれた手記に手を伸ばした。



___________

幼い頃、お母様に2種類の言語を教えてもらった。

1つは、広域で通用する共通言語ミカルド語、そして…

もう1つ、この謎の言語、お母様に教えてもらう時以外は、あまり目に触れた事のない言語。

この書室の机の上に置かれた手記には、その懐かしい文字が並ぶ。

この言葉は、誰かに宛てられた言葉の様な気がする。

もしかして、僕に宛てた言葉か?

わからない。

わからないけれど、

人間が世界に拡散し、繁栄している中で、竜族もまた、確実に進化を遂げている。

この手記には、そう感じさせるものが書かれていたんだ。



___________

赤い翼竜ベルベッタ、君は、金呼鈴福竜コードペイリンカドラゴンという竜族だったんだね。

君の竜族の住む大地は、繁栄するという。

幸せの象徴。

そう、君がいなければ。

僕は、すでに自害していたのだから。

君は、僕にとっても大事な竜…

仲が良かったな、僕らは。

かつてのブルーシーズとヴィルアズ王の様に。

任せてくれ、ベルベッタ。

君は、遠い竜の国で、幸せに。



この国は、

僕が守るから。



アリグルド12日
                 自分の部屋にて
___________
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