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第3章 竜の涙
予見(for two days)
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人が何人か隠れる様な大きな岩が、至る場所に点在している。
ゴブリンだけではなく、野盗が狙う場所としても使われそうだ。
この岩場近くを行商人が通る事は避けた方がいい。
護衛の者を一緒に馬車に乗せていたとしても。
僕らウイプルのゴブリン掃討部隊は、馬を降り、このヘンターの岩場を用心しながら回った。
壊れた荷馬車を発見したけど、これは何年も前のものに感じる。
話に訊いた襲われた行商人ものじゃ、ないだろう。
ゴブリンがいた様な形跡もない。
本当に、この岩場だろうか。
この場から少し離れた、特別大きくはない剥き出しの岩山がある。一目で、誰もいないとわかる。
でも、住処の穴があるかも知れないから。
僕らは、馬の見張りを5人程度残して、岩山に向かった。
そこで、灰色の岩肌と同色に染まる剣を何本か見つけた。
剣身に、古のバライン文字。
これは、ドメイル教徒の兵のものだろう。
これは、邪教連合国軍と僕らウイプル、アスデン、コーリオの連合国軍との戦いの後に、野盗が戦場で拾ったものか。
それとも、ここまで来た骸兵が力尽き、剣だけが残ったか。
それともやはり、この岩山に邪教国軍残党の住処があるか。
僕は、そう思いながら、岩山の穴を探していた。
ここに辿り着いた時に、陽は沈みかけていたから、大して調べる事はできなかった。
岩場まで戻り、テントを張って、今日はここで泊まる。
夜になっても、ゴブリンの気配はない。
明日はさらに詳しく調べるとしよう。
ペテロの27日
ヘンターの岩場にて
________
昨日はなかった、岩場の岩に謎の文字が刻まれていた。
地面の数カ所に何かが外に出ようとした形跡がある。
僕は、すぐ近くにある岩の天辺まで駆け上がり、
辺りを見渡した。
何だ、この臭いは。
そう思って、同じリガード竜騎士団の騎士ソフヴェスに訊いてみたら、何処かで嗅いだ事があると言った。
リガード竜騎士団3人と国王兵50人の全員で、岩場一帯に敵が潜んでいないか、警戒して回ってみた。
岩場の向こう側で人が足掻く音が訊こえた。
急いで向かったけど、誰もいない。
気のせいだ。
また警戒して、回る。
同じ様に、人が足掻く音が訊こえる。
その時に、まさかとは思ったけど、見間違いはないと確信した。
岩が微かに動いた。
僕は、竜剣ジオグリシェルを鞘から抜き、目の前の大きな岩に向かって、叩きつける様に剣を強く振った。
岩が崩れる。
というよりは、半ば石化していた大きな体格のゴブリンの肉片が、砕け、ドロドロの血と共に落ちてきた。
兵の何人かは、すでに半石化のゴブリンに襲われ、食われてしまった。
全員、この岩場から離れる様に声を上げたが、その判断が遅く、一斉に襲われ始めてしまった。
あちらこちらの岩から、訊こえてくる声。
意味のわからない言葉の中に、はっきりわかるものも、あった。
呼んだんだ。
僕を。
ドラゴンバスターと。
ゴブリン共。
僕の行き場のない怒りと、悲しみの矛先になると、言ってくれたのなら、
躊躇いはしない。
僕が竜となり覚醒したあの時から、
内に秘めた凶暴さは増している。
その力全てを、受け止めろ、と。
そう思った時、離れた岩の影から薄く笑う黒装束の男が目についた。
その男が何かを言った後、地面から、湧き出した。
たくさんの骸兵。
まさか。
標的は、
僕か。
半石化の大きな体格のゴブリン5、6匹と骸兵が20、50、もっと増えていった。
僕の足元から顔を出した骸兵が足首を掴み、そこから僕の体をよじ登ってくる。
バランスを少し崩した僕に、一斉に襲いかかるゴブリンと骸兵共。
そうか。
これを予見していたのか。
ブルーシーズ。
僕は、死ねない。
こんな所じゃ。
死ねないのに。
_______
ゴブリンだけではなく、野盗が狙う場所としても使われそうだ。
この岩場近くを行商人が通る事は避けた方がいい。
護衛の者を一緒に馬車に乗せていたとしても。
僕らウイプルのゴブリン掃討部隊は、馬を降り、このヘンターの岩場を用心しながら回った。
壊れた荷馬車を発見したけど、これは何年も前のものに感じる。
話に訊いた襲われた行商人ものじゃ、ないだろう。
ゴブリンがいた様な形跡もない。
本当に、この岩場だろうか。
この場から少し離れた、特別大きくはない剥き出しの岩山がある。一目で、誰もいないとわかる。
でも、住処の穴があるかも知れないから。
僕らは、馬の見張りを5人程度残して、岩山に向かった。
そこで、灰色の岩肌と同色に染まる剣を何本か見つけた。
剣身に、古のバライン文字。
これは、ドメイル教徒の兵のものだろう。
これは、邪教連合国軍と僕らウイプル、アスデン、コーリオの連合国軍との戦いの後に、野盗が戦場で拾ったものか。
それとも、ここまで来た骸兵が力尽き、剣だけが残ったか。
それともやはり、この岩山に邪教国軍残党の住処があるか。
僕は、そう思いながら、岩山の穴を探していた。
ここに辿り着いた時に、陽は沈みかけていたから、大して調べる事はできなかった。
岩場まで戻り、テントを張って、今日はここで泊まる。
夜になっても、ゴブリンの気配はない。
明日はさらに詳しく調べるとしよう。
ペテロの27日
ヘンターの岩場にて
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昨日はなかった、岩場の岩に謎の文字が刻まれていた。
地面の数カ所に何かが外に出ようとした形跡がある。
僕は、すぐ近くにある岩の天辺まで駆け上がり、
辺りを見渡した。
何だ、この臭いは。
そう思って、同じリガード竜騎士団の騎士ソフヴェスに訊いてみたら、何処かで嗅いだ事があると言った。
リガード竜騎士団3人と国王兵50人の全員で、岩場一帯に敵が潜んでいないか、警戒して回ってみた。
岩場の向こう側で人が足掻く音が訊こえた。
急いで向かったけど、誰もいない。
気のせいだ。
また警戒して、回る。
同じ様に、人が足掻く音が訊こえる。
その時に、まさかとは思ったけど、見間違いはないと確信した。
岩が微かに動いた。
僕は、竜剣ジオグリシェルを鞘から抜き、目の前の大きな岩に向かって、叩きつける様に剣を強く振った。
岩が崩れる。
というよりは、半ば石化していた大きな体格のゴブリンの肉片が、砕け、ドロドロの血と共に落ちてきた。
兵の何人かは、すでに半石化のゴブリンに襲われ、食われてしまった。
全員、この岩場から離れる様に声を上げたが、その判断が遅く、一斉に襲われ始めてしまった。
あちらこちらの岩から、訊こえてくる声。
意味のわからない言葉の中に、はっきりわかるものも、あった。
呼んだんだ。
僕を。
ドラゴンバスターと。
ゴブリン共。
僕の行き場のない怒りと、悲しみの矛先になると、言ってくれたのなら、
躊躇いはしない。
僕が竜となり覚醒したあの時から、
内に秘めた凶暴さは増している。
その力全てを、受け止めろ、と。
そう思った時、離れた岩の影から薄く笑う黒装束の男が目についた。
その男が何かを言った後、地面から、湧き出した。
たくさんの骸兵。
まさか。
標的は、
僕か。
半石化の大きな体格のゴブリン5、6匹と骸兵が20、50、もっと増えていった。
僕の足元から顔を出した骸兵が足首を掴み、そこから僕の体をよじ登ってくる。
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そうか。
これを予見していたのか。
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僕は、死ねない。
こんな所じゃ。
死ねないのに。
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