剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

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第1章 ドラゴンバスター

マッドク王国(for five days)

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マッドク王国からの使者が、僕らの国へやって来た。

ウイプル兵の誰もが、険しい表情をしていた。

当然だ。

先の遠征で、かつてウイプル王国領だったセケメント地域の奪還作戦を行い、半ば成功している状況。

ただ、今のセケメント地域を領土としているのは、マッドクだ。

マッドク王国は、セケメント地域に対して、現地組織のアルタイ岩頭院に統治を任せ、その組織をマッドクが管理するという、間接的なやり方をしている。

マッドク国王の耳に入るのに、時間がかかっただろう。

リガード竜騎士団のハルガルド副騎士長が、僕の目を見て、そして逸らしていた。

不安だろうか。

そうだろうな。

残念だが、竜は死んだ。

この騎士団についた竜という名は、飾りに成り果てたのだから。


サビィエルの8日
                  ウイプル王城にて

___________________

幼馴染のミスルタが、この間一緒に食べた物は何か知っているかと、訊いてきた。

木の実。

いや、あれは僕が見つけて、1人で食べたのか。

渋くて、まずかったな。

一緒に食べたのは、パンか。

いや、パンじゃないな。
 
思い出そうとしたけど。

わからない。

コメコロだと、言った彼女。

ふっくら柔らかくて何かほんのり甘い、口の中で溶けてなくなる様な食べ物。

コメコロっていうのか。

そうか、と。

また、食べたいな。

サビィエルの9日
                  サイダルの集会場にて

___________________

マッドク王国からの使者が、またやって来た。

この間は3人、

今回は、10人。

その内、軽装兵が7人。

リガード竜騎士団の副騎士長と僕が、彼らの後から続いて、国王謁見の間へ入った。

謁見の間にいる国王の横には、リガード竜騎士団騎士長アーマンが備えている。

僕と副騎士長は、使者等の少し離れた後方で、控えた。

領土奪還へ動いたウイプルに対して、2度目の来訪。

先日にウイプル国王が使者に返した言葉に対しての、マッドク国王の何らかの回答を持ってきているのは、疑いようもなかった。

マッドク国王回答は、意外なものだった。

ウイプルへのセケメント地域の領土を返還、その条件として、このアルガレット地域全て放棄せよ、というものだった。

ウイプル民族発祥のこの地を、明け渡す訳がない。

これは、ウイプルにとって、屈辱的な発言だった。

馬鹿な事を。

マッドク王国は、小国のくせにと、見くびってきたのだ。

本当は、セケメント地域も、重要じゃないだろうに。

態度が、気に入らないんだろう。

マイクリーハ国王は、僕の名前を呼んだ。

こんな事。

卑怯だと思うだろう。

恨むなら、マッドクの国王を恨め。

僕は、使者等に背後から近づいた。

そして、腰にある長剣をさやから引き抜く。

使者等の軽装兵に、剣を構える暇は与えなかった。

1人は背後から斬りつけ、2人目は、振り返ったところを、胸に突き刺した。3人目は、正面から十字斬りにした。

マッドクへの返答が、これだ。

国王は、僕の事を、伝えた。

そうだ。

そうだよ。

僕だよ。

サビィエルの10日
                  王城見張り台にて

___________________

残りの使者は、逃げる様にマッドクへ帰っていった。

これでまた、戦が始まる。

これで、いいのだろう。

少なくとも、僕にとって。

外の訓練場でウイプル兵が、僕に期待していると言った。

そして、付け加えて僕の事を、、、そう呼んだ。

そう。

悪気はないだろうな。

だけど、苛立ちを抑えられず、僕はその兵を殴り飛ばした。

同じ騎士達に止められたが。

そうだよ。

僕が、やったんだ。

竜は、

僕が殺した。

サビィエルの11日
                  王城見張り台にて

___________________

今日は、満月だ。

いつもより、月の明かりが多く、部屋に入り込んでいる。

僕が幼い頃、明かりが多く入ったおかげか、満月の時は、少し長めに話をしてくれた。

お母様。

日記は、書き続けているよ。

毎日ではないかも知れないけど。

そう言えば。

お父様に、生まれてから一度も会った事がないけれど。

あまり、話してはくれなかったね。

僕が幼かったから、気を使ったのかな。

今は、どうだろう。

今なら、話してくれたかな。

ねぇ、お母様。

やっぱり、

一人じゃ淋しいよ。

サビィエルの12日
                  自分の部屋にて

___________________
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