剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

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第4章 貴方へ愛の言葉を

洞察

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偽者のゲーベルドンは、不敵な笑みを浮かべたまま、その後は僕を看守長の部屋まで案内し、戸を開け、椅子に腰掛ける様、勧めてきた。



ゲーベルドンは終始、口元に笑みを浮かべていた。それがその時、すぐには何を意味するのかわからなかったけど。




僕に薄い果実酒を木のコップに入れ、出してきた。




彼自身もコップにその果実酒を入れ、祝うかの様にコップを僕に向けて少し持ち上げ、飲み干した。






僕も、それを見て、その果実酒を飲み干した。






この果実酒に毒を盛っていたとしても、僕には効かない。僕にはお母様と同じ様に、毒の耐性が強い。





偽者のゲーベルドンは、このカインハッタ牢獄では不思議な事が度々起こるが、その事で気を取り乱す事がない様にしてほしい、そう僕に伝えた。





その言葉を訊いて、僕をその場ですぐに殺そうなどという事はないんだとわかった。




でも、何故、僕がミノタウロスによる迷宮化で、あの鍵のかかった部屋にいると、すぐに気づいた?




偶然とは思えない。




それに、あの時は、彼は驚きひとつ見せなかった。僕の場所まで来るのに少しの時間はあっただろう、だから、平静を装う時間はあった。だからだろうか。






僕がこのカインハッタ牢獄内の事を探ろうとしていた事は、気づかれていたのかも知れない。





僕が迷宮化したカインハッタ牢獄に迷い込んだと知り、ミノタウロスか本物のゲーベルドンが僕を倒してくれると思ったのか?





僕の目を覗き込む様な仕草を、この偽者のゲーベルドンはしてきた時、気づいたんだ。






そういう見られ方をされる事は今までもあったから、もう慣れている。ウイプル人とは違う瞳の色、緑色だ。







僕の瞳の色が、生粋のウイプル人の茶色の瞳とは違う。よそ者が来たと、思われたか。もしかしたら、竜の目に近いとまでも、感じたか。特別興奮状態にない場合、この目は色以外、ウイプル人と何ら変わりはないはず。







僕の正体を知ったか?






どうかな。







僕の名自体は、僕らが来た時に、彼が知る事はない。ウイプル国王は、僕をカインハッタ牢獄に送る時に、僕の手によってカインハッタ牢獄に送った囚人がいた場合、混乱を招くため、それを避けるためにファーストネームだけを残し、名を変えている。




看守長の部屋にいた時に、問答無用で戦う事になるわけじゃないのなら、僕はその場で事の全てを解決をするべきじゃないと思った。



この偽者のゲーベルドンの正体をその場で暴いて、そして戦う事になっても、正直、今は都合が悪い。




まだあらゆる情報が少ない中で、これ以上、事が大きく動くのはまずい。





偽物にせよ、ここの看守や囚人の知る看守長がこのゲーベルドンなら、今はその姿を見せてもらっていた方がいい。




看守長の肩書きはもう少し、持ってもらう。




ベリオストロフ・グリーンディとそれに従うヘイル・サイン騎士隊の動きも知るべきだ…





このカインハッタ牢獄に何があるのか。






夜になると、この島にかなり接近する海賊船が見える時がある。







囚人が選ばれ、海賊船に乗り込む。恐らく、そうだろう。ただ、ベリオストロフ・グリーンディは、その手助けをしていたとしても、ただ海賊に囚人を渡しているだけとは思えない。




何か目的がある。






何かある。






何を考えている?






魔物と化したゲーベルドンは死んだ。だから、海賊に囚人を渡す行為は、しばらくはなくなるに違いない。







しかし、紫の海賊が、この事に気づくのは時間の問題だ。ただ、すぐには行動に移さないはず。このカインハッタ牢獄の様子を窺って、数日、または数週間後、何か行動を起こす事があるかも知れない。その前に、僕は気づかなければならない事がある。













僕はあの後、看守長部屋で彼と特に何を話す事もなく、自分の部屋まで戻ってきた。



今日は体を休めて、そしてまた明日以降、情報を集めよう。




時間は、あまり残されていない。








ジスマリアの24日
      カインハッタ牢獄内にて
_______________________________

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