剣士アスカ・グリーンディの日記

第4章 貴方へ愛の言葉を

疑惑の3人

看守のフラペイルが、問題を起こした囚人を夜中に独房に入れる。独房は懲罰房で、空気の通りが少なく、光も大して届かず、狭い空間で、何をされても叫び声は響きづらい。

青い炎を帯びた男の姿を見た事はあるのかと訊いたら、フラペイルは、もちろんあると答えた。

その顔を見た事もある、と。

従順な性格なのかも知れない。

ただ、言われるがままに事を成す。

アタフの口を使って、問題を起こした囚人を、夜中に独房に入れたのかという確認は、誰がしたのかと訊くと、フラペイルはまた目を泳がせたから、僕はその者を知っているけれど、嘘を言わずに語っているのかを確認したいだけだと言った。

フラペイルは、言わせないでほしいと返してきた。

今の現状に満足している様だから、僕がどの様な決断を下しても、後悔はしないでほしいと伝えた。

こんな簡単な質問に答えられないなんて、おかしい事だね、と。

そうしたら、フラペイルは、上からの命令に従うのは当然だ、そう答えてきた。

当然という言葉をこのカインハッタ牢獄の指揮系統で考えるなら、アタフの口を使って確認したのは、ゲーベルドンに違いない。

ただ、偽物の方だろうけど。

アタフの口にした言葉は、元々知っていた？

フラペイルは、このカインハッタ牢獄で限られた者達の間で使う隠語だと教わったという。

ケツァル島の特殊言語という事を知らなそうだった。

偽物のゲーベルドンは、紫の海賊？

そして、ケツァル島の出身なのか？

特殊言語は、ケツァル島の一般の民の間で使われていただろうか。

僕は、フラペイルに、夜中に独房に連れて行ったのは誰だと確認したら、誰かを連れて行った事は事実、ただ、その者を覚えていないと言った。

強張った顔をしている。

僕がそんなに恐いか？

たかが年下だ、リガード竜騎士団の名も、飾りに過ぎない。

そう思ったのだろう？

僕に嘘を言う余裕があるのだから。

夜中に独房に連れて行って、生贄として拐われなかった者がいるとしたら、思い当たるのは1人。

ベリオストロフ・グリーンディだ。

2人は看守と囚人だが、彼らの関係は何か違和感がある。

偽物のゲーベルドン、フラペイル、ベリオストロフ・グリーンディ。

実に不愉快な気分だ。

僕を巻き込んだ事を後悔させてあげよう。

僕は、本物のゲーベルドンに命を狙われたんだ。

真相が暴かれる事を防ぐために、これ以上、僕の命を狙う者が現れるのなら、その時は容赦はしない。

それが例え、貴方だとしても。

ベリオストロフ・グリーンディ。





ジスマリアの26日
　　　　　カインハッタ牢獄内にて
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