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第1章 ドラゴンバスター
ダルレアス自治領(for two days)
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干し葡萄のたくさん入ったパンを売っているパン屋のクルタスおじさん。
久し振りに見た。
今も、働く姿は変わらない。
幼少の頃、よくお母様と一緒に来ていたな。
パンを作るところが見たくて、ついて来た記憶がある。
懐かしさで、
パンを1個、買ってみた。
相変わらず、葡萄がたくさん入っている。
大体のパンは、腐らない様に固いのが定番だが、このパンは柔らかい。
この味だ。
懐かしい。
ウイプルは、僕の思い出がある。
お母様の大好きなウイプル。
そして、僕の思い出の場所、
ウイプル。
ジスエルの27日
王城の見張り台にて
___________________
ウイプル本国への再統一の提案のため、ダルレアス自治領のザシン領主への謁見に向かった。
リガード竜騎士団騎士長アーマンと僕を含めて、10名ほど。
全員、リガード竜騎士団とウイプル王国の紋章の入ったサーコートを着ていた。
謁見の約束は、事前に取ってあるため、それを今回放棄はできないだろう、と。
ダルレアス自治領入り口のヘールグナンドの砦の橋を通り、警備兵に連れられ、砦内に入っていった。
砦を抜ける長い回廊の出口で、僕らは警備兵から別の兵へ継がれた。
ツォルバ竜騎士団副騎士長バロザッドら数人のツォルバ竜騎士だ。
鋭い目つきをしていて、獲物を狙っている様な感覚だった。
彼らと共に、街を通さず、一気に領主のクフト城へ馬を走らせた。
クフト城の正門両脇に、ツォルバ竜騎士が30人ほど。どの者も、歓迎をしている面じゃない。
その中で、とても長い槍を持つ騎士が2人いた。
穂先が、大きい。重厚で鋭い刃だ。
形だけか、本当に今も存在するのかはわからないが、あれはドラゴンライダーの槍だ。
自分達は、竜と共にあると、言いたいのか。
城壁の細い窓から、金属が光の反射で輝く。
弓矢を構え、こちらを窺っているのがわかった。
僕は、戦場にいる時の様に、精神が研ぎ澄まされていった。
正門、そしてさらに2つの門を越え、主塔にある領主謁見の間へ。
開けた広間に、ツォルバ竜騎士団騎士長ウガニエムら竜騎士が5人、そして奥の中央に座している領主ザシンがいた。
騎士長のウガニエムは、僕の腰にある鞘を見て、恨みにも似た視線を一瞬、僕に向けてきた。
竜剣ジオグリシェルだと気づいたなら、
ドラゴンバスターとも、気づいた、だろう。
リガード竜騎士団騎士長アーマンは、ドメイル教信仰国の動向を踏まえ、ウイプル王国再統一をする機会としたい意向を示した。
ザシンは、予測通り、拒否をした。
民の賛同が一定数を越えた時、建国するつもりだと伝えた。
でも、それは、叶わないだろう。
ダルレアス自治領にも、ウイプル王国に戻りたい者も少なくないはずだ。
ダルレアス地域に住んでいたため、ダルレアス自治領に区分けされているに過ぎないという者もいる。
ただ、その者達を今後説得できれば、話は変わるだろうけど。
騎士長アーマンは、友好国ヘンデルソンの巨大な鷲オーバーシルゾを殺した真相を、知っているのか、と訊いた。
ザシンは、知っていると、言った。
時は流れ、気持ちは建国へと動いたのか。
今回の謁見で、話がまとまるわけじゃないのは、誰もがわかっていた事だ。
検討の余地なしならば、次は王の勅令という形で来る事になる。
それを知らせるための謁見でもある。
ツォルバ竜騎士団騎士長バロザッドが、ザシンに耳打ちをして、ザシンは僕を不敵な笑みで見つめる。
脅しには、乗らないぞとでも言うかの様に。
僕らは顔を上げ、立ち去ろうとした。
その時、ザシンが、少し声を大きくし、僕を呼び止めて、
近くに寄る様に、言った。
そして、僕の顔をじっと見て、とても驚き、その後、少し表情を曇らせていた。
ザシンは、声を張り上げ、他の者達に、大きく離れる様にと告げた。それは、ツォルバ竜騎士達も同じ様に。
ザシンは、僕に問う。
お前が、ドラゴンバスターか、と。
僕は、頷いて見せた。
お前が、貴覇竜ラリュナピュートを殺したのか、と訊いた。
僕は、頷いた。
ザシンは、僕の目をじっと見て、
その理由を訊くのは止めておこう、そう言った。
意外だった。
僕の肩に手をやり、
何かを言いかけ、口を閉ざした。
不思議に思ったけど、彼の目は、僕の気持ちを汲んでいるかの様な目をしていた。
それは、僕の心の中にある暗く大きな塊を少しだけ削り取った様な気がした。
不思議な感覚だ。
この気持ちを、昔誰かに期待していた様な気がする。
それは、どんな期待なんだろうか。
ザシンは、リガード竜騎士団騎士長アーマンに、少し待って欲しいと伝え、そして結論が出た場合は、ザシン側から報告をするとの話になった。
ジスエルの28日
ザンギント山の竜の祭壇にて
___________________
久し振りに見た。
今も、働く姿は変わらない。
幼少の頃、よくお母様と一緒に来ていたな。
パンを作るところが見たくて、ついて来た記憶がある。
懐かしさで、
パンを1個、買ってみた。
相変わらず、葡萄がたくさん入っている。
大体のパンは、腐らない様に固いのが定番だが、このパンは柔らかい。
この味だ。
懐かしい。
ウイプルは、僕の思い出がある。
お母様の大好きなウイプル。
そして、僕の思い出の場所、
ウイプル。
ジスエルの27日
王城の見張り台にて
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ウイプル本国への再統一の提案のため、ダルレアス自治領のザシン領主への謁見に向かった。
リガード竜騎士団騎士長アーマンと僕を含めて、10名ほど。
全員、リガード竜騎士団とウイプル王国の紋章の入ったサーコートを着ていた。
謁見の約束は、事前に取ってあるため、それを今回放棄はできないだろう、と。
ダルレアス自治領入り口のヘールグナンドの砦の橋を通り、警備兵に連れられ、砦内に入っていった。
砦を抜ける長い回廊の出口で、僕らは警備兵から別の兵へ継がれた。
ツォルバ竜騎士団副騎士長バロザッドら数人のツォルバ竜騎士だ。
鋭い目つきをしていて、獲物を狙っている様な感覚だった。
彼らと共に、街を通さず、一気に領主のクフト城へ馬を走らせた。
クフト城の正門両脇に、ツォルバ竜騎士が30人ほど。どの者も、歓迎をしている面じゃない。
その中で、とても長い槍を持つ騎士が2人いた。
穂先が、大きい。重厚で鋭い刃だ。
形だけか、本当に今も存在するのかはわからないが、あれはドラゴンライダーの槍だ。
自分達は、竜と共にあると、言いたいのか。
城壁の細い窓から、金属が光の反射で輝く。
弓矢を構え、こちらを窺っているのがわかった。
僕は、戦場にいる時の様に、精神が研ぎ澄まされていった。
正門、そしてさらに2つの門を越え、主塔にある領主謁見の間へ。
開けた広間に、ツォルバ竜騎士団騎士長ウガニエムら竜騎士が5人、そして奥の中央に座している領主ザシンがいた。
騎士長のウガニエムは、僕の腰にある鞘を見て、恨みにも似た視線を一瞬、僕に向けてきた。
竜剣ジオグリシェルだと気づいたなら、
ドラゴンバスターとも、気づいた、だろう。
リガード竜騎士団騎士長アーマンは、ドメイル教信仰国の動向を踏まえ、ウイプル王国再統一をする機会としたい意向を示した。
ザシンは、予測通り、拒否をした。
民の賛同が一定数を越えた時、建国するつもりだと伝えた。
でも、それは、叶わないだろう。
ダルレアス自治領にも、ウイプル王国に戻りたい者も少なくないはずだ。
ダルレアス地域に住んでいたため、ダルレアス自治領に区分けされているに過ぎないという者もいる。
ただ、その者達を今後説得できれば、話は変わるだろうけど。
騎士長アーマンは、友好国ヘンデルソンの巨大な鷲オーバーシルゾを殺した真相を、知っているのか、と訊いた。
ザシンは、知っていると、言った。
時は流れ、気持ちは建国へと動いたのか。
今回の謁見で、話がまとまるわけじゃないのは、誰もがわかっていた事だ。
検討の余地なしならば、次は王の勅令という形で来る事になる。
それを知らせるための謁見でもある。
ツォルバ竜騎士団騎士長バロザッドが、ザシンに耳打ちをして、ザシンは僕を不敵な笑みで見つめる。
脅しには、乗らないぞとでも言うかの様に。
僕らは顔を上げ、立ち去ろうとした。
その時、ザシンが、少し声を大きくし、僕を呼び止めて、
近くに寄る様に、言った。
そして、僕の顔をじっと見て、とても驚き、その後、少し表情を曇らせていた。
ザシンは、声を張り上げ、他の者達に、大きく離れる様にと告げた。それは、ツォルバ竜騎士達も同じ様に。
ザシンは、僕に問う。
お前が、ドラゴンバスターか、と。
僕は、頷いて見せた。
お前が、貴覇竜ラリュナピュートを殺したのか、と訊いた。
僕は、頷いた。
ザシンは、僕の目をじっと見て、
その理由を訊くのは止めておこう、そう言った。
意外だった。
僕の肩に手をやり、
何かを言いかけ、口を閉ざした。
不思議に思ったけど、彼の目は、僕の気持ちを汲んでいるかの様な目をしていた。
それは、僕の心の中にある暗く大きな塊を少しだけ削り取った様な気がした。
不思議な感覚だ。
この気持ちを、昔誰かに期待していた様な気がする。
それは、どんな期待なんだろうか。
ザシンは、リガード竜騎士団騎士長アーマンに、少し待って欲しいと伝え、そして結論が出た場合は、ザシン側から報告をするとの話になった。
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