とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

sayure

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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その65

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「ギルロって、お前会った事あるんだよな。どんな奴なんだよ」



今、俺とシュティールは、湖に囲まれたベネクテという街に向かっている。俺が進んでいた南の方向とは真逆だからと、一転、北に向かって歩いている。そうなると、当然、先ほどのうさ耳オヤジを倒した街、ライアマイアンという街付近を、また通る事になったんだ。


俺は、シュティールに、正直にうさ耳オヤジとの事を話したら、それは死の戦いを仕掛けてきたシンガリ族が、相手を見る目がなかったというだけの事さ、と言った。


次にライアマイアンの街を通る時には、もう誰も俺に仕掛けてこないから、安心だろう、と。



あっさりしたもんだな。



この世界だと、生き死にの戦いなんて、日常茶飯事だから、特別気にかける事でもなかったか?



俺は死にそうになった。地球…日本じゃ、そんな事なんて滅多にないんだよ。



うさ耳オヤジは、俺を殺そうとしたから。



たくさんの、この大陸を救おうとする思いを、殺したんだ。




だから俺は戦わなくちゃいけない、って思った…の…かな。





右京の思いも、あった…。





俺はうさ耳オヤジを倒し、生き残った。





お話しライオン より、人の形をしていたうさ耳オヤジだからか?仕方がない状況だとしても、後味が悪いんだよ。



もう何を言っても、状況は変わらない。ただ、生まれ変わったら、今度は。



いい奴になれよ、うさ耳オヤジ。






俺達は、ライアマイアンの街の石橋をまともに通った。


うさ耳オヤジと同族のカイルズとか言ってたかな?そいつは、俺を店からチラッとみただけで、もう一度見る事はなかった。


行き交う住人達も、俺の事を気にしていない。



覚えていないわけないよな?いや、もう本当に、忘れたのか?いつもの事だから?







石橋の上にあるテデルータという店で、シュティールの奢りで、サンドイッチみたいなものと、ミルクティみたいなものを、食べて、飲んだ。



シュティールは平気に食べているから、俺もお腹が空いていたから、マネして食べてみた。



コームーみたいな正露丸汁とは違って、無料じゃないから大丈夫だろうという思いと、それでも食べ物で油断させておいて、ゲルロブライザー装置に投げ込んで、大陸浮上のエネルギー源にしようとするんじゃないかという恐れもあったんだけど。




結果、大丈夫だった。




安心と、お腹が満たされた満足感で、ふうっと息を吐いた。何か、生きているって、実感があった。




シュティールは、そんな俺の顔を見て、フフフと笑っていたな。















「背後から、突いてくる様な奴さ」







「はぁ…?え、何だっけ??」







「何か違う事考えてたの?僕に質問を投げかけておいて。ウバミエールは、どんな奴かって、僕に聞いたよね??」




ウバミエール…?俺の口からそんな言葉は生み出していない。あ、そうだ。ギルロってどんな奴かって、聞いたんだった。




「ギルロは、どんな奴かって聞いたんだよな。会った事あるんだもんな?」





「まぁ、あるさ。仲間を信頼できない、淋しい奴なのさ」







「でも、王様…って言って、尊敬する奴もいるぐらいだから、そんなに悪い奴には…」







「ああ…。王様、ね。そういう話もあったかな。大陸崩壊が頻繁に起こっている中で、地聖王アーガーベルという王の責務は、果たせていない。そもそも、その地位は未だ生きているのかな?まぁ、僕から見たら、王様ではないね。カスだね、カス」





カス呼ばわりするシュティール、前にもギルロの事を王様とか言ったら、癇に障っていたな。ギルロに対する印象がよほど悪いんだろうな。




「僕も、君に聞きたい事があるんだけどな」







「え?何を聞きたいんだ。地球の事?」







「いや、滅びゆく惑星の事に、関心はないんだ」






…最悪。ただでさえ気分が滅入っている状態なのによ。地球に戻れるか不安でしょうがない俺に、その言葉はないよな。






「君の表情が大きく曇ったね。地球に何かあったみたいだね。僕は地球の情報なんて、常に把握しているわけじゃないから。何となく、嫌々ギルロの事を探してるのかな、と思っていたよ。…フフフ、おもしろいね」




地球の事、まだシュティールには言ってなかったかな。人の不幸をおもしろがるクソシュティール。




「ギルロを探せば、どうなるんだい?言いたくないのなら、言わなくてもいいさ。その方が楽しみが増えるからね」




「うーん…」





「地球から来た君が、この世界に失望しても、まだ居続ける理由は明らかさ。…帰れない。ギルロを、探すしかない。そうなんだろう?」



「…さぁね。意外と、気に入ってるのかも。この世界の住人が、あまりにも感動的な奴らばかりだからさ」



「まぁ、君と比べたら全ての住人がそうなるのかも知れないけど、あまり自分をけなすものじゃないよ?」



1番貶してるのは、お前だけどな。




「この大陸は高天魔こうてんま四大将の1人、炎真えんま大将グレンベール・アルシオンの管轄だから、前にも言った事だけど、彼にギルロの事を聞くと何かわかるのかも知れないね」



「俺なんかと、会ってくれるのかよ…。話も聞いてくれないんじゃないのか?」



「その時は、僕が聞いてあげるよ。でも、君が思っているほど、彼とは距離感なく、気楽には話せるはず。そういう男なのさ」


ヘラヘラ笑いながら言うシュティール。そう言いながら、真実は違ったりして。信用はないからな、シュティール君。


「君も少し、この世界の事を知っておいた方がいいのかもね」





シュティールは、そう言って、片手をグー、パー、して、掌から羽根ペンらしいものを出して、それを空に投げた。



その羽根ペンは、空に光の線を引き、大陸の絵を描き始める。




「このクェル・ダ・ベル大陸は、第1大陸から第7大陸まであるんだけど、どの大陸も、大陸修復を終えてはいないんだ。どの大陸がいつ崩壊してもおかしくはないだろう。その時に、他の大陸が道連れにならないように、各大陸間を通星洞スティクルという交通施設のみで繋いでいる」





「住人の心は、大陸と同じで、脆く、互いの心の繋がりは、見かけ以上に結ばれてはいないんだ」








「…仕方がなく手を取って協力したとしても、その手を取った相手に、殺されるかも知れない。その事だけは、忘れてはいけないよ」






「シュティール…」






それは、お前も含めて、という事でいいよな?でもこいつ、何でその事を俺に教えてくれるんだ?






油断させておいた方が、もしかしたら、都合がいいのかも知れないのに。








「この世界で、力があり過ぎる者同士、ケンカして星が何度も壊れたから、お互いに注意、なんだよな?」




「フフフ、ケンカして星が壊れたから、お互いに注意?随分とかわいい言葉だね、こぐま君、抱いてあげよう!」






はあ?バカにしやがって。こぐま君とか、人をぬいぐるみみたいに言いやがって。…こいつ、結構、地球に馴染んでいたんじゃないのか?こぐま君なんて…。





「ギルロの体と魂、もしかしたら、この第2大陸にはないのかも知れないよ」



「え!?何でだよ…?」




「ギルロが王とか呼ばれていた時の根城は、第7大陸だから、そう思ったのさ。北の地聖王、ギルロだからね」




「何だ、遠いのかよ…?」





「この第2大陸から、1度、第1大陸に出れば、そこから、第3、第4、第5に行き来できるよ。第5大陸からは、第6、第7大陸へ行く事ができる。ちなみに、高天魔四大将は、第2から第5を管轄として動いているんだ」






「高天魔四大将の力を頼り、ギルロの体と魂の場所を探る、それが理想なのかも知れないけどね。『冬枯れの牙』にも睨まれているのなら、特にそうなんだろうけど。炎真えんま大将グレンベール・アルシオン以外は、味方になるとは、思えない。だから、この第2大陸で彼に会う事が、何よりも重要なのさ」






「ほら、水の音が聞こえてこないかい?もうすぐ、炎真大将グレンベールの好む街、ベネクテだよ」





綺麗な芝が続いていたけど、少し岩が多くなってきたかな。このゴルフ場みたいな芝って、大陸修復して間もないから、こんなにも綺麗なのかな?それとも、誰かが整備していたから?あ、確かに、水の音が聞こえるかも。





俺、少し耳が良くなってないかな。手に持ってる大剣も、最初ほど重たいって思わなくなってきてる。慣れっていうだけじゃない。霧蔵や右京の力を通して、体が何かを手に入れたのか?




多少の筋肉痛は感じるけど、2人の凄まじい力を、この体で発揮したんだ、普通、多少の筋肉痛じゃ、済まないよな。




でも、俺のこの体も、地球の…人間としての体じゃないんだろ?





この住人と同じ様な体だったら、俺の体に、まだまだ眠ってる潜在能力ってものが、あるんじゃないのか?




もっと、もっと、鍛えたら、『冬枯れの牙』にも負けない様な、力が。





手に入るのかも知れない。





この世界の住人には、歯が立たないとか、思う事もないだろう。





へへ、希望が見えてきたな!






よーし!ベネクテに入って、炎真大将グレンベールに会って、地球へ帰るぞ!







そんな簡単じゃないよな!







でも、
何となく、少し勇気が湧いてきたぞ。
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