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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その35
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どうした!?《冬枯れの牙》ラグリェ!まだ、剣を抜くしぐさすらないのかよ!?
思ったより、俺の体重移動は、好調だぜ!
このまま…
見えろ!
…見えろ!
次元斬の軌道を描く、境界線!!
見えなければ、力任せにこの重い大剣を、このラグリェに向かって強振して、テメェを斬ってやる!
…。
見えたッ!
次元斬の軌道を描く境界線!!
くらえ…
これが…
次元斬…!
ヒュン…!
!?
ど、何処だ!?
ラグリェが、目の前から消えた!?
ど、何処だぁ!?
「ククク…。矢倉郁人お前はあの時、私さえも眼中にない様な振る舞いだったな…。戯れる子を払うかの様な扱いだった。実に、見事だった…」
この声の方向、上からか!?
バサバサ…!
うっ!?
あのカラス野郎!移動した…?
「《冬枯れの牙》の幽冥傀士であるこの私を相手にだ。名だたる者共を葬ってきた、この私を…」
くそっ。カラス野郎、冷静を装っている様な声だけど、明らかに俺に対して苛立っているのがわかる。ダメだっ!相手の圧力に負けちゃ、この勝負、万が一にも勝ち目はねぇ!
落ち着け…。
「ライアマイアンで、シンガリ族との戦いでも、その剣技を使っていたな…。どうした?調子が悪そうじゃないか。あの時は、もっと俊敏で力強い剣捌きをしていたじゃあ、ないか。ククク…、私を油断させる必要もあるまい。少しはやる気を見せたらどうだ…」
くっ!
俺の…後ろだ!?
「うぉあああ…っ!」
俺は、次元斬の事も忘れて、冷や汗をかき消す様に、声を張り上げながら、力任せに大剣を振った。
やっぱり、少し。
恐かった…か。
このカラス野郎は、俺の力任せの攻撃を見透かし、あざ笑うかの様に、全力で振っている大剣の上を、踏み台にして、俺の頭の上を越えた。
こいつ…!
確かに、今の俺には、あの右手の炎から生まれる凄い能力が、ない。
でも、こいつは。
お話しライオンやうさ耳オヤジより、嫌な予感がするんだ。
ただ速いだけじゃない。飛ぶからとか、じゃないんだ。
このカラス野郎の余裕は何だ?
まだ、こいつは俺に攻撃をしてこない。
俺の攻撃が全く恐くないのか?
いつでも、俺を攻撃して、倒せる余裕があるのか?
少しは…必死になって、俺に攻撃してこいよ。
お前の強さが全く測れねぇ。どうなんだ?とてつもなく強いのか?今の俺には、全く歯がたたねェのか?それとも、そうでもないのか?
「…ククク。何の真似だ?苦し紛れの芸事を私に披露して、それが何になる?どうした?私を楽しませてはくれないのか?以前、私にした様に」
「…へへ。俺は、十分に楽しい…けどな」
はい、嘘ついてます。でも、こいつ隙を見せてくれねェから、少しでも心を揺さぶって、油断させるしかねぇ。
「…そうか。ならば、今度は私がお前のやった様な拳術を使って、戦って見せようか。ククク…」
ああ、そうかい。じゃあ、俺との戦う距離は近くなっていいよな。大剣で、斬りつけやすく…なる…かな?いや、近過ぎると、逆効果か?まぁ、俺が距離をうまく調整すればいいか。逃げていく敵より、近づく敵に少し距離をとって攻撃する方が楽か。…楽かな?
知るか!
とりあえず、油断させて、少しでも動きが乱れてくれれば、そこに何とか次元斬を合わせて、食らわしてやるぜ!
カラス野郎、俺の5メートルくらい前に立って、体は半身を切って、手を手刀にして構えてるな。
その手は、固いのか?うさ耳オヤジの体は固かった。お話しライオンも、そうだったな。お前もそうなら、その手刀で、この大剣の一振りも、受けてくれるよな?
逃げないで、受けてくれよな?
そうしたら、次元斬で、その手刀をすり抜けて、お前の心臓に直接ダメージを与えて、勝負ありだ。
カラス野郎が、ゆっくりと、地面を擦りながら足を俺の方へ進めてくる。距離は4メートルくらいか?全くの素人じゃない様な動きに見えるけど、こいつ、拳術ができるのか?何でもできるのかも知れないな。でも、剣を使った戦いの方が得意なのは言うまでもないだろうな。じゃなきゃ、その長い鞘の中に入ってる剣は邪魔だよな?
大剣を、もっと速く、もっと速く振るんだ。腕や肩だけじゃない…、腰も使って、体全体のバネを使って、強振するんだ。
避けられないくらいの…だ。
次元斬…。
次元斬を、やるんだ。
もっと、速く…。
『…的確に急所を突け!角度も違うだろう!突いた箇所の筋肉が完全に戻り切る前に、更なる急所が消える前に、更に突くんだ!その様な腕で…一人前…の…』
う…うぅるせぇぇえ…。
俺はッ…。
お前の、奴隷じゃ…ねぇ。
『や…龍…天翔…脚、お前の…っ。わ…って、いるのかぁ!!?』
うぅ…うッ、るうぅ…せぇぇえええ!
うるせぇ!!うるせぇぇえんだよぉ!!
俺は。
お前の!
奴隷じゃねェんだ…よぉぉぉお!!!
「ククク…!この拳術は、お前の真似事だ、矢倉郁人!この拳を食らうが良い!」
「うるせぇぇえ!!!」
テメェを倒す間合いはここだッ!
境界線は、はっきり見えてるぜ、バカガラス!!
く、
ら、
えぇぇ…!!
次元斬!!!
ヒュオオオッ!!
「何…!?」
ヒュンッ!
「!?」
「何処だ…!?」
「ククク…。先程と違い、随分と見違えたぞ、その剣の一閃。興味深い剣技だった。さすがは、矢倉郁人といったところか。ならば、私も、礼として、剣を抜かねば無礼というもの…。この細身剣ガルトデフブリンガーの奏でる惨殺剣術コルト・カラングラシェをその身に受け、血塗れの醜い肉塊となって、死んでゆくが良い」
「…やれるもんなら…ッ!」
「…うッ!?」
「うぅ…お、おぉぉぉ…!」
「…?燃えているのか、それは」
「ああぁ…くっ!」
右手から、突然、赤い炎が吹き出してきた…!
熱いっ!熱…!
けどよ、お待ちかねの炎だぜ…!
そのカラス仮面の向こう側で、冷や汗かくのが見ものだ…。
後悔すんなよ?
こうなった後の俺は…、強ぇぞ!?
思ったより、俺の体重移動は、好調だぜ!
このまま…
見えろ!
…見えろ!
次元斬の軌道を描く、境界線!!
見えなければ、力任せにこの重い大剣を、このラグリェに向かって強振して、テメェを斬ってやる!
…。
見えたッ!
次元斬の軌道を描く境界線!!
くらえ…
これが…
次元斬…!
ヒュン…!
!?
ど、何処だ!?
ラグリェが、目の前から消えた!?
ど、何処だぁ!?
「ククク…。矢倉郁人お前はあの時、私さえも眼中にない様な振る舞いだったな…。戯れる子を払うかの様な扱いだった。実に、見事だった…」
この声の方向、上からか!?
バサバサ…!
うっ!?
あのカラス野郎!移動した…?
「《冬枯れの牙》の幽冥傀士であるこの私を相手にだ。名だたる者共を葬ってきた、この私を…」
くそっ。カラス野郎、冷静を装っている様な声だけど、明らかに俺に対して苛立っているのがわかる。ダメだっ!相手の圧力に負けちゃ、この勝負、万が一にも勝ち目はねぇ!
落ち着け…。
「ライアマイアンで、シンガリ族との戦いでも、その剣技を使っていたな…。どうした?調子が悪そうじゃないか。あの時は、もっと俊敏で力強い剣捌きをしていたじゃあ、ないか。ククク…、私を油断させる必要もあるまい。少しはやる気を見せたらどうだ…」
くっ!
俺の…後ろだ!?
「うぉあああ…っ!」
俺は、次元斬の事も忘れて、冷や汗をかき消す様に、声を張り上げながら、力任せに大剣を振った。
やっぱり、少し。
恐かった…か。
このカラス野郎は、俺の力任せの攻撃を見透かし、あざ笑うかの様に、全力で振っている大剣の上を、踏み台にして、俺の頭の上を越えた。
こいつ…!
確かに、今の俺には、あの右手の炎から生まれる凄い能力が、ない。
でも、こいつは。
お話しライオンやうさ耳オヤジより、嫌な予感がするんだ。
ただ速いだけじゃない。飛ぶからとか、じゃないんだ。
このカラス野郎の余裕は何だ?
まだ、こいつは俺に攻撃をしてこない。
俺の攻撃が全く恐くないのか?
いつでも、俺を攻撃して、倒せる余裕があるのか?
少しは…必死になって、俺に攻撃してこいよ。
お前の強さが全く測れねぇ。どうなんだ?とてつもなく強いのか?今の俺には、全く歯がたたねェのか?それとも、そうでもないのか?
「…ククク。何の真似だ?苦し紛れの芸事を私に披露して、それが何になる?どうした?私を楽しませてはくれないのか?以前、私にした様に」
「…へへ。俺は、十分に楽しい…けどな」
はい、嘘ついてます。でも、こいつ隙を見せてくれねェから、少しでも心を揺さぶって、油断させるしかねぇ。
「…そうか。ならば、今度は私がお前のやった様な拳術を使って、戦って見せようか。ククク…」
ああ、そうかい。じゃあ、俺との戦う距離は近くなっていいよな。大剣で、斬りつけやすく…なる…かな?いや、近過ぎると、逆効果か?まぁ、俺が距離をうまく調整すればいいか。逃げていく敵より、近づく敵に少し距離をとって攻撃する方が楽か。…楽かな?
知るか!
とりあえず、油断させて、少しでも動きが乱れてくれれば、そこに何とか次元斬を合わせて、食らわしてやるぜ!
カラス野郎、俺の5メートルくらい前に立って、体は半身を切って、手を手刀にして構えてるな。
その手は、固いのか?うさ耳オヤジの体は固かった。お話しライオンも、そうだったな。お前もそうなら、その手刀で、この大剣の一振りも、受けてくれるよな?
逃げないで、受けてくれよな?
そうしたら、次元斬で、その手刀をすり抜けて、お前の心臓に直接ダメージを与えて、勝負ありだ。
カラス野郎が、ゆっくりと、地面を擦りながら足を俺の方へ進めてくる。距離は4メートルくらいか?全くの素人じゃない様な動きに見えるけど、こいつ、拳術ができるのか?何でもできるのかも知れないな。でも、剣を使った戦いの方が得意なのは言うまでもないだろうな。じゃなきゃ、その長い鞘の中に入ってる剣は邪魔だよな?
大剣を、もっと速く、もっと速く振るんだ。腕や肩だけじゃない…、腰も使って、体全体のバネを使って、強振するんだ。
避けられないくらいの…だ。
次元斬…。
次元斬を、やるんだ。
もっと、速く…。
『…的確に急所を突け!角度も違うだろう!突いた箇所の筋肉が完全に戻り切る前に、更なる急所が消える前に、更に突くんだ!その様な腕で…一人前…の…』
う…うぅるせぇぇえ…。
俺はッ…。
お前の、奴隷じゃ…ねぇ。
『や…龍…天翔…脚、お前の…っ。わ…って、いるのかぁ!!?』
うぅ…うッ、るうぅ…せぇぇえええ!
うるせぇ!!うるせぇぇえんだよぉ!!
俺は。
お前の!
奴隷じゃねェんだ…よぉぉぉお!!!
「ククク…!この拳術は、お前の真似事だ、矢倉郁人!この拳を食らうが良い!」
「うるせぇぇえ!!!」
テメェを倒す間合いはここだッ!
境界線は、はっきり見えてるぜ、バカガラス!!
く、
ら、
えぇぇ…!!
次元斬!!!
ヒュオオオッ!!
「何…!?」
ヒュンッ!
「!?」
「何処だ…!?」
「ククク…。先程と違い、随分と見違えたぞ、その剣の一閃。興味深い剣技だった。さすがは、矢倉郁人といったところか。ならば、私も、礼として、剣を抜かねば無礼というもの…。この細身剣ガルトデフブリンガーの奏でる惨殺剣術コルト・カラングラシェをその身に受け、血塗れの醜い肉塊となって、死んでゆくが良い」
「…やれるもんなら…ッ!」
「…うッ!?」
「うぅ…お、おぉぉぉ…!」
「…?燃えているのか、それは」
「ああぁ…くっ!」
右手から、突然、赤い炎が吹き出してきた…!
熱いっ!熱…!
けどよ、お待ちかねの炎だぜ…!
そのカラス仮面の向こう側で、冷や汗かくのが見ものだ…。
後悔すんなよ?
こうなった後の俺は…、強ぇぞ!?
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