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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その44
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くっ、来るぞっ!
的を絞らせない…!動け、俺の足!
俺の方へ、剣を向けていないか?そうだ、このタイミングで、このカラス野郎の横に回り込む様に…!
ビヒュンッ!
どうだ!?
かわせ…た…。
「私の細身剣ガルトデフブリンガー、その切っ先を見極めるには、お前の目は役立たずの様だ」
お、俺は…刺されたのか?
目の前に、赤い霧が舞っている。
俺の血…か?
「私が本気を出せば、お前ごとき、私の足元にも及ばない…。クククッ…。どうだ?あの矢倉郁人を、翻弄しているこの私の実力を?素晴らしい…。お前の存在も、私の杞憂に終わる。さぁ…死を存分に味わうが良い」
い、痛…いッ。
カラス野郎がまた、すぐに腰に手を当てた…!すぐに次の攻撃がくる!どうする…?このまま、やられる訳にはいかない。手を、手を出すんだっ!
痛みで、俺の手の指が笑ってやがる…!しっかり、しっかりしろ!
ザッ!
「カァッ!カァアッ!」
な…!?カラス野郎、腰に手を当てて…??またすぐに攻撃を…!?
か、構えろ…!
ビヒュンッ!ビヒュンッ!
手を…!手を出せぇぇッ!
「うぉぉあっ!?」
ブォンッ!
ち、ちくしょう…!
「くぁぁッ…。いッ、痛…!」
一瞬、痛みで、意識が飛びそうになった…。何処の場所がやられたのか、もうわからねぇ。体中が痛いって、感じる…。刺突は、偏りなく、体中全体を配分よく刺してるって感じ…だ。
「クククッ…。少し、危なかった。足掻く事は、無粋な事ではないぞ。存分に足掻くが良い…」
はぁ…。
はぁ…。
危なかっただって?何処が危なかったんだ…。俺は今のは、大剣を力任せに振っただけだ。お前の体まで大して届く様な振り方はしなかったっていうのに。
バカにしてんのかよ。
…くそっ。
体を動かすと、傷口が火を吹いた様に痛みが膨れ上がる。とても108の刺突どころか、その半分も受けてられない…。
惨殺剣術なんて考えた奴の気が知れない。生きたまま、できる限りの痛みを与える拷問なだけだ…。
あいつの剣をかわすなんて、できない…。
…。
今の俺の大剣は、振ると予想がつかなかったか?
カラス野郎が、気を抜いていただけか?
何かを、嫌がった?
何を嫌がったっていうんだ。このカラス野郎は、俺に嫌味を言ってるだけなんだよ。
こいつ、また剣を鞘に納めてるな…。
一振りしたら、剣はお片づけ…か。几帳面な奴だ。
…。
…?
へっ…。
「クククッ…。痛みで頭がおかしくなったか?賢そうな笑みではないが、それが最後の笑みならば、それも寛大な心で許してやろう。カァッ!カァッ!」
まだ、大剣を握る力は入りそうだ。さすがに、真空斬は難しそうだけどな。あそこまで高速で剣を振るなんて、今のこの体に受けた傷の状態じゃ、無理だ…。
無理…か。
すぐに限界を作っちまうのは、俺の悪い癖だよな。
カラス野郎は、俺が予測の範囲内の動きしかできないと思って、バカ正直に腰に手を当て、鞘から剣を抜いて、そのまま俺に刺してくる。
俺は、はははっ…。こいつの剣の切っ先が見えない。それどころか、剣自体が見えないんだから、腹立つくらい、難しい戦いだよな…?
俺に勝ち目がない…。
でも、お前の剣を抜いて、刺そうとするタイミングは、感覚的にわかってきた…。
お話しライオンやキリングみたいに、自分の体だけを武器にして戦う相手じゃないせいか、あそこまで接近した戦いをする機会が作れない…。このカラス野郎は剣の先で刺す様な戦い方だ、嫌な距離が空く状態が続く。俺の大剣も、そこまで長さがない訳じゃないから、奴の間合いでも、振れば奴の体に剣は届くだろう。ただ、深くは斬りつけられないから、奴の俊敏さで、簡単にかわされそうだ。
今の状態でも、太い針を何本も深く刺されたままの様な痛みで、つらい…。
もうこれ以上、刺されたくねぇけど…。
次の攻撃を、してこいよ。
俺から攻撃を仕掛けて、ムダにかわされて体力を消耗しても、勝ち目がさらになくなっていくだけだからな。
動き回って、血が垂れ流し状態になって、死んだら、意味がねぇ。
こいよ…。
バカガラス。
「お前に与えた刺突箇所は…」
「…わかってるよ。14箇所って、言いたんだろ?」
「ほう?死へのカウントダウンを、自分でしていたとは、潔いな。褒美として、その時間の針を早めてやろう。お前も、3/4の致命箇所を狙う惨殺劇の本幕を期待していた事だろう。それは、私もだよ…。クククッ」
それは、一度にたくさんの刺突をしてくるって事か…。ああ、嫌だな。勘弁してほしいよ、この黒い物体はよ!日本には、カラス狩るとダメって、鳥獣保護法があった様な気がするけど、お前なら、積極的に狩っても、誰も迷惑がかからないよな?保護もされてないだろうし。
でも、そうだよな、人でなしのボーグン族は困るよな…。俺を命の恩人とか言っておいて、少しでも俺に違和感がしただけで、お前みたいな殺人鬼に俺を差し出すんだからな。俺、ボーグン族に危害なんて、加えてなかったにも関わらずな。
ボーグン族のゴミクズどもに仕返しをしないといけないからな、何とかしてこいつを倒して、行ってやらないと。
麗しの、切り株街によ…。
「カァッ!カァアッ!」
カラス野郎が腰に手を当てたッ!
俺は大剣を横にして、深く剣を引いて構えた。腰をさらに大きく回転させ、その反動をうまく利用して、大剣を最大限に素早く、より強く振ってやる…!
カラス野郎が剣を抜いた…よな!?
このタイミングだっ!!
ビヒュ…ッ!
「うぉぉ…っ!」
ヒュオッ!
ガキイィィ…ンッ!!
剣が…!
剣と剣が、ぶつかったッ!!
どうだっ!?
お前が先ほど嫌がったのは、これだろう!?
先ほど、お前が剣で刺突をしようとした時、俺は大剣を振った。お前の体に俺の剣が届きそうもなかったのに、お前は今のは危なかったと言った…。
それは、お前が、自分の剣と俺の剣がかち合うのを嫌がったからだろう!?
お前がいちいち、剣を振った後に、剣を鞘に納めるのも気になっていた…。
どうだ、カラス野郎!!?
さぁ、お前の秘密を、明かさせてもらうぞ…!
的を絞らせない…!動け、俺の足!
俺の方へ、剣を向けていないか?そうだ、このタイミングで、このカラス野郎の横に回り込む様に…!
ビヒュンッ!
どうだ!?
かわせ…た…。
「私の細身剣ガルトデフブリンガー、その切っ先を見極めるには、お前の目は役立たずの様だ」
お、俺は…刺されたのか?
目の前に、赤い霧が舞っている。
俺の血…か?
「私が本気を出せば、お前ごとき、私の足元にも及ばない…。クククッ…。どうだ?あの矢倉郁人を、翻弄しているこの私の実力を?素晴らしい…。お前の存在も、私の杞憂に終わる。さぁ…死を存分に味わうが良い」
い、痛…いッ。
カラス野郎がまた、すぐに腰に手を当てた…!すぐに次の攻撃がくる!どうする…?このまま、やられる訳にはいかない。手を、手を出すんだっ!
痛みで、俺の手の指が笑ってやがる…!しっかり、しっかりしろ!
ザッ!
「カァッ!カァアッ!」
な…!?カラス野郎、腰に手を当てて…??またすぐに攻撃を…!?
か、構えろ…!
ビヒュンッ!ビヒュンッ!
手を…!手を出せぇぇッ!
「うぉぉあっ!?」
ブォンッ!
ち、ちくしょう…!
「くぁぁッ…。いッ、痛…!」
一瞬、痛みで、意識が飛びそうになった…。何処の場所がやられたのか、もうわからねぇ。体中が痛いって、感じる…。刺突は、偏りなく、体中全体を配分よく刺してるって感じ…だ。
「クククッ…。少し、危なかった。足掻く事は、無粋な事ではないぞ。存分に足掻くが良い…」
はぁ…。
はぁ…。
危なかっただって?何処が危なかったんだ…。俺は今のは、大剣を力任せに振っただけだ。お前の体まで大して届く様な振り方はしなかったっていうのに。
バカにしてんのかよ。
…くそっ。
体を動かすと、傷口が火を吹いた様に痛みが膨れ上がる。とても108の刺突どころか、その半分も受けてられない…。
惨殺剣術なんて考えた奴の気が知れない。生きたまま、できる限りの痛みを与える拷問なだけだ…。
あいつの剣をかわすなんて、できない…。
…。
今の俺の大剣は、振ると予想がつかなかったか?
カラス野郎が、気を抜いていただけか?
何かを、嫌がった?
何を嫌がったっていうんだ。このカラス野郎は、俺に嫌味を言ってるだけなんだよ。
こいつ、また剣を鞘に納めてるな…。
一振りしたら、剣はお片づけ…か。几帳面な奴だ。
…。
…?
へっ…。
「クククッ…。痛みで頭がおかしくなったか?賢そうな笑みではないが、それが最後の笑みならば、それも寛大な心で許してやろう。カァッ!カァッ!」
まだ、大剣を握る力は入りそうだ。さすがに、真空斬は難しそうだけどな。あそこまで高速で剣を振るなんて、今のこの体に受けた傷の状態じゃ、無理だ…。
無理…か。
すぐに限界を作っちまうのは、俺の悪い癖だよな。
カラス野郎は、俺が予測の範囲内の動きしかできないと思って、バカ正直に腰に手を当て、鞘から剣を抜いて、そのまま俺に刺してくる。
俺は、はははっ…。こいつの剣の切っ先が見えない。それどころか、剣自体が見えないんだから、腹立つくらい、難しい戦いだよな…?
俺に勝ち目がない…。
でも、お前の剣を抜いて、刺そうとするタイミングは、感覚的にわかってきた…。
お話しライオンやキリングみたいに、自分の体だけを武器にして戦う相手じゃないせいか、あそこまで接近した戦いをする機会が作れない…。このカラス野郎は剣の先で刺す様な戦い方だ、嫌な距離が空く状態が続く。俺の大剣も、そこまで長さがない訳じゃないから、奴の間合いでも、振れば奴の体に剣は届くだろう。ただ、深くは斬りつけられないから、奴の俊敏さで、簡単にかわされそうだ。
今の状態でも、太い針を何本も深く刺されたままの様な痛みで、つらい…。
もうこれ以上、刺されたくねぇけど…。
次の攻撃を、してこいよ。
俺から攻撃を仕掛けて、ムダにかわされて体力を消耗しても、勝ち目がさらになくなっていくだけだからな。
動き回って、血が垂れ流し状態になって、死んだら、意味がねぇ。
こいよ…。
バカガラス。
「お前に与えた刺突箇所は…」
「…わかってるよ。14箇所って、言いたんだろ?」
「ほう?死へのカウントダウンを、自分でしていたとは、潔いな。褒美として、その時間の針を早めてやろう。お前も、3/4の致命箇所を狙う惨殺劇の本幕を期待していた事だろう。それは、私もだよ…。クククッ」
それは、一度にたくさんの刺突をしてくるって事か…。ああ、嫌だな。勘弁してほしいよ、この黒い物体はよ!日本には、カラス狩るとダメって、鳥獣保護法があった様な気がするけど、お前なら、積極的に狩っても、誰も迷惑がかからないよな?保護もされてないだろうし。
でも、そうだよな、人でなしのボーグン族は困るよな…。俺を命の恩人とか言っておいて、少しでも俺に違和感がしただけで、お前みたいな殺人鬼に俺を差し出すんだからな。俺、ボーグン族に危害なんて、加えてなかったにも関わらずな。
ボーグン族のゴミクズどもに仕返しをしないといけないからな、何とかしてこいつを倒して、行ってやらないと。
麗しの、切り株街によ…。
「カァッ!カァアッ!」
カラス野郎が腰に手を当てたッ!
俺は大剣を横にして、深く剣を引いて構えた。腰をさらに大きく回転させ、その反動をうまく利用して、大剣を最大限に素早く、より強く振ってやる…!
カラス野郎が剣を抜いた…よな!?
このタイミングだっ!!
ビヒュ…ッ!
「うぉぉ…っ!」
ヒュオッ!
ガキイィィ…ンッ!!
剣が…!
剣と剣が、ぶつかったッ!!
どうだっ!?
お前が先ほど嫌がったのは、これだろう!?
先ほど、お前が剣で刺突をしようとした時、俺は大剣を振った。お前の体に俺の剣が届きそうもなかったのに、お前は今のは危なかったと言った…。
それは、お前が、自分の剣と俺の剣がかち合うのを嫌がったからだろう!?
お前がいちいち、剣を振った後に、剣を鞘に納めるのも気になっていた…。
どうだ、カラス野郎!!?
さぁ、お前の秘密を、明かさせてもらうぞ…!
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