とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

sayure

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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その121

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「クェタルドを救う方法?」



「ああ、そうさ。何でも願いが叶う宝箱さ。その宝箱を、ハムカンデ様は、要求を満たせば、クェタルドに使うと言ったんだよ。ただ、そうは言っても、本当にその宝箱を、クェタルドのために使うなんて保証はない。欲深いハムカンデ様が、他人のために、何故使うと思えるのか…。普通なら、そう考えるところだよねぇ?」



「じゃあ、交渉決裂って事か…」



「フフ、ハムカンデ様の願いは、この第5大陸において、オーロフ族を有力勢力の一角にまで成長させる事さ。この世界を掌握できると思えるほど、身のほど知らずでもない。そのハムカンデ様の願いは、ゼドケフラーのエズアが生涯、ハムカンデ様に忠誠を誓う事で、それを成し得ると考えたのさ。それに、その宝箱は、開けば叶うという訳でもない。膨大な魔力が必要なのさ」



ハムカンデには持て余す宝箱という事か。



「ハムカンデ様がその事をエズアに伝えたけれど、エズアは一度は断ったんだ。エズアは、当然、オーロフ族に良い印象を持っていないからね。この場所を手に入れる手助けだって、したくはなかったはずさ。だけど、クェタルドの容態がさらに深刻となり、エズアは決断しかねて、誰かに相談した様だった」



そうなのか?

しかし、この女、今まで話した内容が真実なら、何でここまで詳しいんだ?

建前として、ハムカンデを様付けしてるのかも知れないけど、だとしても、本当にこの女を信用していいのか?



「エズアは、結局、その誘いを受けたんだな…?」



「ああ、そうさ。ハムカンデ様の想像通り、ゼドケフラーの成獣の力は、圧倒的だった。一撃で複数の獣を薙ぎ倒しちまうんだからさ。そして、戦況を一変させ、この場所を手に入れる事ができた。それでも、その後しばらくは、原住の獣に再建中のこの場所を度々襲われてはいたけどね」



ゼドケフラーのエズアは、クェタルドのために戦ったんだな。オーロフ族に嫌悪感があったとしても、か。結局、オーロフ族の思い通りになったのか。



「エズアは、その宝を手に入れたのか?」



「いや、手に入れる事はできなかったよ…」



そんな事だろうと思ったぜ。このクソ世界の中で、約束事なんて、その重さに関わらず、気軽に破棄しちまうんだろうな。

俺も、こいつとの交渉は慎重にしないといけないよな。もっとも、俺がこいつの言う札を手に入れられる保証はないけどな。



「エズアは、納得したのか?」



「お前は、すると思うかい?」



当然、するとは思えない。この女も、本当は、他人の事なんてどうでもいいと思ってるんだろ?東角猫トーニャ族の1人は、道中で俺から魔力(あるとは思えないけど)を奪って、殺そうとしたんだからな。俺は東角猫族に対して、いい印象はない。

でも…。

あの猫女は、俺を殺さなかったな。



「ハムカンデ様は、何でも叶う宝箱を持っていた。ただ、いつからかはわからないけど、その宝箱が偽物だと気づいたんだよ。エズアは、この街が仕上がりつつある時に、その宝箱を寄越す様、催促したのさ。ハムカンデ様は、苦渋の決断だったけど、エズアにその偽物の宝箱を手渡し、また同時にエズアの任を解き、自由の身として、この街から去らせようとしたのさ。そして、この街を一度出たら、二度と踏み入れさせないつもりでいた。だけど、そううまくは事が運ばなかったのさ…」



「…偽物だとバレたんだな?」



「その通り。クェタルドを救えないという絶望感と、偽物にいい様に振り回された事への怒りが交互に襲い、エズアはハムカンデ様に牙を剥いた…」



不必要な殺しを繰り返して、嫌いなオーロフ族の企てに手を貸したのにな。そこまでした見返りが、偽物の宝箱か…。

まぁ、俺から言えば、エズアもそんな奴らに手を貸す事なんてなかったんだ。クズの集まりだって、わかってたんだろ?東角猫族も、この場所を奪うために戦わされてたから?だから、それもあって、力を貸した?いや、エズアは、オーロフ族が東角猫族を支配下に置こうと動いてた時、それを阻止しようとしてなかったんだよな。エズアも、クェタルドの事しか、興味がなかったんだ。



「ハムカンデ様もまた、胸元に魔闘石ロワがあって、当然、ここの街の統率者だ、魔力は私達が定期的に献上する事で、あの方の魔力値は高い状態が保たれている。だけど、エズアの魔力は、明らかにその上を行っていた…」



「話の腰を折って悪いんだけどさ…」



やっぱり、そうだ。



「あんた、実はハムカンデの側にいたんだろ?ゼドケフラーのエズアの事だけじゃなくて、ハムカンデについても、妙に詳しいじゃないか」



俺がそう言うと、この女は、少し悪い目つきをして、笑い声を上げた。



「その時は、強い者に寄り添った方が長生きができると思ったのさ。そう、私はかつて、あの宝酷城ほうこくじょうにいて、ハムカンデ様に仕えていた。私達をこの地に縛る魔法を解除する札の存在、そしてその場所も、私が宝酷城にいた時に知った情報さ。でも、私は今、あのハムカンデ様に仕えてはいない。今は、あの怪力女の小鈴しょうれいだけが、東角猫族としてただ1人、宝酷城で仕えているのさ」



やっぱりだ。この交渉は難しいぞ。ハムカンデ側にいた奴と手を組むなんて、かなり危険な気がする。

でも、今はエズアの話の続きを聞きたい。



「わかった。俺は札を渡す、それで、あんたからこの街の出方を教えてもらう。それでいい。それで、エズアの話を続けてくれ」



おお…。俺をじっと見つめて、疑ってるのか?それだったら、こっちも疑いの目を向けるけど、それでもいいか?でも、それじゃ、俺に何の利点がないし、この交渉を断って、何もしないで時間だけが過ぎても、この街にただい続けるだけで、追い込まれていく気がする。ここは我慢して、情報を手に入れよう。



「…正直、他のゼドケフラーがどうでも、俺には関係ない。オーロフ族も東角猫族もどうでもいい。やる事をやれば、問題ないよな?」



「もちろん、そうだろうさ。フフ、いい覚悟だねぇ…?」




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