とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その159

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体は細い。目は虚ろで、暗い表情に見える。でも、何処となく尖って見える。一度武器を持てば、すぐにでも戦えそうだ。

この人が、リョウマ族。

確かに、俺と同じ国と言われてもおかしくない。

ふらついているのは、あまり外に出れないから、部屋の中で座ったままでいるから、足が弱くなっている?



「確かに、同族と見えなくもない。ここに来たのは、俺に会いに来たのだろう?」



「…ああ」



俺がこの世界でよく間違われる種族。リョウマ族を目の前で見てみたかった。俺に謎の炎が吸い込まれた時、力を貸してくれた霧蔵や右京も、この世界の人達なら、リョウマ族なんじゃないかと思った。

それなら、信用できるんじゃないかって。

まともに話ができるんじゃないかって。

そう思えた。



「お前は何を求めてこの街に来た?ここがどういう場所かわからないで迷い込んだ訳じゃないだろう?」



いや、よく知らないでこの街に入ったんだよ。

イヤな予感はしてたけど、それを言い出したら、何処の街も同じだ。

マシな街って、多分、ないんじゃないのかな。

シュティールと一緒の時は、あまり何事もなかった様な気もしたけど。シュティールが一番問題だからな。

俺は、この街で情報がほしかったんだ。元の世界に戻るために必要な情報を。

一つは、ギルロの居場所。できれば、体と魂の場所。

もう一つは、夢魔操エイジアの場所。これは、あの城にあるという話だ。本物であれば、だけど。

ゼドケフラーのエズアは、夢魔操が偽物だと、ウソをつかれたと、そう思ってハムカンデと揉めて、結果、殺された。

ハムカンデも、あの猫女の話だと、夢魔操は偽物だと思っていたらしいけど、実際は情報不足で偽物だと決め込んだと思いたい。

俺が手に入れられる機会はある。

俺も交渉を持ちかけられているけど、それは明後日の戦いで実力を証明した後で、ハムカンデの頼み事を聞いたらの話だ。

エズアと同じ道を行っている様な気もする。

俺はエズアほど力がないから、明後日の黒眼こくがん五人衆ナグとの戦いで勝てる自信は、正直ない。

この街から逃げるなら、夢魔操は諦めるべきだけど。

どうにか、戦わずして手に入れられないかな。

ギルロの体と魂なんて、見つけられるとは思えないし。



「俺…」



俺は、自分の世界へ戻るための情報がほしくて、この街に入ったけど。

でも、リョウマ族に会えた。

それも、旅をしていて、俺の中で一つの望みになっていたのかも知れない。

でも。

それも失望に変わる。

この家に、オーロフ族がいない理由がわかったからだ。



「どうした?その目は、同族を見る目じゃないな…」



奥の部屋の端に倒れてぐったりとしている東角猫トーニャ族。

そうか。

この家の主人は、オーロフ族じゃなくて、お前なんだな。

そして、奴隷がその東角猫族。



「倒れているぞ…」



「こいつ、魔力を持ち帰るどころか、寄り道しやがってよ。帰りの時間に間に合ってないんだから、お仕置きは必要だよな」



倒れている東角猫族の手の側にあるのは、花か?

踏み潰されて、花びらがバラバラだ。



「この街で実力が認められないと、この東角猫族みたいに奴隷に堕ちるぞ。お前は、これからハムカンデ様のために貢献し、その力を認められなければならない」



ハムカンデ様…か。

お前もあいつの力に屈したんだろ?そして、立派なこの街の住人になった訳だ。

俺から見れば、ただの鬼畜だ。



「起こしてやれよ…」



「はぁあ?奴隷だぞ?物だぞ?俺の好きにさせろよ。こいつは、死んだっていいんだ。そんな存在なんだよ、奴隷なんてのはな」



お前もそんな事を言うのかよ。

リョウマ族は、その程度のもんか?

じゃあ、霧蔵や右京は…。



「ハハハ、同族に何を期待したのかわからないが、目が覚めたかな?」



冷たい目をしてんな。だから、人が倒れても平気で過ごせるんだよな。



「…大丈夫?」



「おい、そいつに触れたら、殴るぜ」



「殴る…?」



「お前はハムカンデ様のお気に入りになりそうだからな。お前には手を出さねえよ。その代わり、東角猫族のキャスリを、さらにボコボコに殴ってやる」



何をしたから、殴ったんだ?

寄り道をした?手の近くにあるその花を摘んだんだろう。この街に帰る時に綺麗な花畑でも見つけちまったんじゃねえのか?東角猫族はよ、みんな綺麗な顔してるよな。だから、同じ綺麗なものが好きなんじゃねえのかよ。



「…俺は、この街にリョウマ族がいるって聞いたから、来てみたんだ」



「そうだ、俺がリョウマ族だ」



つまらない世界だな。

心がどんどん冷えてくる様な世界だ。

お前みたいな人の痛みがわからないのがいるから、この世界は自滅の道をひたすら歩むんだ。



「もう、用はない…」



話す気が失せたよ。リョウマ族の興味はなくなった。

なぁ?

こんなもんか?

霧蔵。

右京。

リョウマ族はこんなもんか?

ああ。情けねえな、俺。

この世界の事、まだ何処か救いがあるんじゃないかなんて、無意識に期待してるからだよな。

そうだな、俺が…。

悪い。

だけどさ、正直言って。

淋しいよ…。
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