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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その203
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「おい、パルンガ。この中にいるんだろ?1人にして悪かったな。もう大丈夫だからな」
「…」
「パルンガ?」
この頑丈な扉の前に、太ももくらいの太さの閂がある。これを抜いて、そのやや下側に鍵穴があるから、そこに鍵を差して回すと、ようやく扉が開く。ここに差し込む鍵は、行灯の下に置いてあるって、あの猫女が言ってたよな。
「おい…。パルンガ、拗ねてるのか?俺も大変だったんだよ。かんたんにここまで来る事ができなくてさ。ああ、そうか。今、顔を見せるからな…」
パサ…ッ。
「な?俺だよ。名なし君だよ。もっと近づいて見てくれよ…」
「…」
「なあ、時間がないんだ。俺はお前に顔を見せてるだろ?今度は、お前が顔を見せてくれよ」
「パルンガ…」
「おい…」
タンッ。
タンッ。
タンッ。
「パルンガ…!」
ようやく気を取り直して、俺の所へ来てくれる。淋しかったんだろう?
俺は、お前を裏切らない。
お前だって、俺を裏切らなかった。
だから、これで…仲直りだ。
古池の様に仲直りしそびれて、後悔なんて、もう二度とごめんだからな。
「ガルルルル…!」
何だ?パルンガの奴。まさか、俺がわからないのか?もっと近づけばいい。俺だとわかれば、少しは落ち着くよな。なぁ、パルンガ。
俺の顔をよく見てくれよ。
もしかして…。
お前、お腹空いてるか?腰に隠してある木の実なんか、食い切ったのか?
俺も何だかお腹が空いてきたよ。
腹減ると、イライラもしてくるよな。
この街を出たら、また森でおいしそうな木の実でも探すか?
それで決まりだ。
「ガルルルルッ!!」
「パルンガ…」
「え…?」
こんなに、体が膨らんで。目が恐い…。お前、俺がわからないのか?
どうして、俺をそんな殺そうとする様な目で見るんだよ。俺だよ!忘れたのかよ…。
「パルンガ…」
「ガルルルルッ!ガルルルルッ!!」
バァンッ!!
「俺に威嚇なんて、必要ないだろう…?」
お前のこの姿が、本来のこの世界の獣の姿か?
ゼドケフラーだっていうのか?
「もしかして、幼獣から成獣になれたのか?だから、それが…」
「本当の姿?」
「ガルルルルッ!!」
もしかして、ここがお前とのお別れの瞬間なのか?
そんなんじゃ…。
とても、お前を連れてこの街を出て、一緒になんていられない。
俺はまだ、死ねないんだよ。
きっと、元の世界に帰るって、決めてるんだから。
パルンガ。
「ガルルルルッ!!」
バァンッ!バァンッ!
「パルンガ…」
お前はいい奴だ。
俺の事、助けに来てくれたよな?
だから、俺も…。
お前を助けに来たよ。
なぁ、パルンガ。
「今まで、ありがとう…な」
パルンガ、いつかはお別れが来るって、わかってたんだ。でも、こんな別れなんて、思いもしなかった。
お前をここから外に出しちゃ、ダメだ。
たくさんの人を無意味に殺しそうだ。
この世界には、悪い奴なんて、いくらでもいるけど。
そうじゃない奴も、ひと握りだけど、いる。
そう、この街にも。
だから、お別れだ。
お別れだ…。
俺は、気持ちを断ち切る様に、パルンガから顔を必死に逸らして、そして背を向けた。
もう二度と、パルンガの姿を見る事はない。
俺の心の救いだったパルンガ。
心に穴が空いたみたいで、淋しい。
また、こうやって友達を失っていくんだ。
俺は、臆病だ。
でも、それが俺の性だから。
それでいい。
今は、警戒し過ぎるくらいで、いい。
パルンガのいる部屋から一歩、二歩と離れていくと、それと同時に心が高鳴って、痛い。
でも、もうどうしようもないんだ。
そのまま、歩く足を加速させていこうとした時…。
「テテ…」
パルンガが、小さく声を出して、俺を呼んだ。
「…」
「パルンガ?」
この頑丈な扉の前に、太ももくらいの太さの閂がある。これを抜いて、そのやや下側に鍵穴があるから、そこに鍵を差して回すと、ようやく扉が開く。ここに差し込む鍵は、行灯の下に置いてあるって、あの猫女が言ってたよな。
「おい…。パルンガ、拗ねてるのか?俺も大変だったんだよ。かんたんにここまで来る事ができなくてさ。ああ、そうか。今、顔を見せるからな…」
パサ…ッ。
「な?俺だよ。名なし君だよ。もっと近づいて見てくれよ…」
「…」
「なあ、時間がないんだ。俺はお前に顔を見せてるだろ?今度は、お前が顔を見せてくれよ」
「パルンガ…」
「おい…」
タンッ。
タンッ。
タンッ。
「パルンガ…!」
ようやく気を取り直して、俺の所へ来てくれる。淋しかったんだろう?
俺は、お前を裏切らない。
お前だって、俺を裏切らなかった。
だから、これで…仲直りだ。
古池の様に仲直りしそびれて、後悔なんて、もう二度とごめんだからな。
「ガルルルル…!」
何だ?パルンガの奴。まさか、俺がわからないのか?もっと近づけばいい。俺だとわかれば、少しは落ち着くよな。なぁ、パルンガ。
俺の顔をよく見てくれよ。
もしかして…。
お前、お腹空いてるか?腰に隠してある木の実なんか、食い切ったのか?
俺も何だかお腹が空いてきたよ。
腹減ると、イライラもしてくるよな。
この街を出たら、また森でおいしそうな木の実でも探すか?
それで決まりだ。
「ガルルルルッ!!」
「パルンガ…」
「え…?」
こんなに、体が膨らんで。目が恐い…。お前、俺がわからないのか?
どうして、俺をそんな殺そうとする様な目で見るんだよ。俺だよ!忘れたのかよ…。
「パルンガ…」
「ガルルルルッ!ガルルルルッ!!」
バァンッ!!
「俺に威嚇なんて、必要ないだろう…?」
お前のこの姿が、本来のこの世界の獣の姿か?
ゼドケフラーだっていうのか?
「もしかして、幼獣から成獣になれたのか?だから、それが…」
「本当の姿?」
「ガルルルルッ!!」
もしかして、ここがお前とのお別れの瞬間なのか?
そんなんじゃ…。
とても、お前を連れてこの街を出て、一緒になんていられない。
俺はまだ、死ねないんだよ。
きっと、元の世界に帰るって、決めてるんだから。
パルンガ。
「ガルルルルッ!!」
バァンッ!バァンッ!
「パルンガ…」
お前はいい奴だ。
俺の事、助けに来てくれたよな?
だから、俺も…。
お前を助けに来たよ。
なぁ、パルンガ。
「今まで、ありがとう…な」
パルンガ、いつかはお別れが来るって、わかってたんだ。でも、こんな別れなんて、思いもしなかった。
お前をここから外に出しちゃ、ダメだ。
たくさんの人を無意味に殺しそうだ。
この世界には、悪い奴なんて、いくらでもいるけど。
そうじゃない奴も、ひと握りだけど、いる。
そう、この街にも。
だから、お別れだ。
お別れだ…。
俺は、気持ちを断ち切る様に、パルンガから顔を必死に逸らして、そして背を向けた。
もう二度と、パルンガの姿を見る事はない。
俺の心の救いだったパルンガ。
心に穴が空いたみたいで、淋しい。
また、こうやって友達を失っていくんだ。
俺は、臆病だ。
でも、それが俺の性だから。
それでいい。
今は、警戒し過ぎるくらいで、いい。
パルンガのいる部屋から一歩、二歩と離れていくと、それと同時に心が高鳴って、痛い。
でも、もうどうしようもないんだ。
そのまま、歩く足を加速させていこうとした時…。
「テテ…」
パルンガが、小さく声を出して、俺を呼んだ。
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