とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その256

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お前が言っていた殺すっていうのは、俺がベルダイザーに見えて、そう言っていたのか?



「ガァアアアッ!!」



ザッ!!



地面を踏み締めた!パルンガの攻撃がくる!?



「ガァアアアッ!」



「ま、待て!」



ビュウゥウッ!



まずい!さっきより突進が速い!!

腰を沈めてその反動で、素早く横に避けろ!



「くぁぁっ!」



シャキィィッ!!



キィン!



ザザザーッ!



はぁっ…。



はぁっ…。



鎧の肩の部位の端を切られたけど、何とかかわせた。

まだ力を残していたか。今のは危なかった。



「パルンガ!?目を覚ませ!」



お前は俺と一緒にいなかった間、何かをされたんだな。

黒眼こくがん五人衆のナグがパルンガに殺されたのは、ハムカンデがナグに指示して、さっきみたいにパルンガに何かの血を打ち込ませて、パルンガが暴走してしまって犠牲になったか?

変な血を体に入れて順応すれば、その後にパルンガをうまく手懐けて、暴れる前のエズアの様になればとでも思ってやったのか?

それとも、元々、俺と闘わせる事を頭に入れて、暴走させるために血を打ったのか?

いずれにしても気に入らねえ!パルンガは、お前らのおもちゃじゃねえんだよ!

余計な事しやがって…。



「獰猛なゼドケフラーがリョウマ族を狩ろうとしてるな。これはこれでおもしろそうだ。よし!やれ、ゼドケフラー!」



「ゼドケフラーが勝ってもこの街から追放なんだ、俺達に被害はない。それなら、闘う意思がある方が生き残るべきなんだ。まぁ、ゼドケフラーはよく見る幼獣の死期だが、思う存分に闘え!」



集まったクソどもがパルンガを応援し出したな。

お前らは気楽でいいよな。

どうせお前らには仲間だと思う奴なんかいないんだ。

俺の気持ちなんか、わかりはしないだろうな。

でも、いつか後悔するだろうよ。

助けてほしい時に、側に誰もいない淋しさを、味わうだろうよ。



「ガァアアアッ!」



「パルンガ、俺はゼドケフラーじゃない!よく俺の顔を見てみろよ!?」



パルンガ、体が言う事を聞かないのか?意思に反して片足が前に進まなくて、倒れ込んだ。

さっきの攻撃は限界ギリギリの攻撃だったのか。

また、パルンガの体の中でいやな音が聞こえた。パルンガの目が語っている。すごく痛いんだ。痛みで震えている。

どうやったら、こいつは助かるんだ?

もう、本当に手遅れなのか?

パルンガ。



「さあ、名無しさん?私にあんたの強さ、見せておくれよ。うまくいったと思ったのに、中々あんたは悪運が強いみたいだからねえ。その死に際のゼドケフラーの幼獣なんか、簡単に捻り殺してあげなよ?」



あの猫女!やっぱり、ハムカンデが言ってたティデってのはお前だったんだな?

元々、天守層にいた奴で、俺と話していた時もハムカンデの事、ずっと様付けで呼んでたんだ、どう考えてもハムカンデ側の奴だってわかりそうなのに。

情けねえ。

やっぱりどうしても自分の世界と同じ様に考えようとするクセが抜けない。相手が騙そうとしている様に見える時でも、何処かに善意が残っていると期待してしまうんだ。

この世界に居続けたら、いつか殺される。



「グルルルッ…!」



「パルンガ、もう立つな!」



必死に立とうとしている。

パルンガ。

唸りながらも悲しそうに瞬きしている。自分に失望しているのか?

お前は自分の体がどうなってもいいのか?

もう少し、自分に気遣ってくれよ…。

気遣って…。



「パルンガ…」



「ガルルルルッ!ガルルルルッ!」



「ゼドケフラーの幼獣程度じゃ、相手にされないな。もうこいつは勝手に死ぬぞ」



「ゼドケフラーは弱い。やっぱり神獣なんて、どう考えても嘘なんだ。リョウマ族、そのゼドケフラーを殺せ!」



パルンガは勇敢なんだ。お前らみたいに腑抜けじゃねえ。死にそうになっても、相手に向かってくるじゃねえか。

こいつはこの街に来るまで、いつも本気で成獣になる事を目指していたんだ。

エズアみたいな立派な成獣になるって。

ずっと、ベルダイザーを探していた。



「今だ!止めを刺すんだ!サイクロス、僕は君が助かる様に稽古をつけたんだぞ。その行為を無駄にするな!?」



「随分と流暢にしゃべる様になったじゃねえか、グラッチェリ」



「お前、黒眼こくがん五人衆の頭なんだろう?その頭が、俺に何か用か?」



「サイクロス…!?」



「俺はサイクロスって名前じゃねえ!」



俺には、両親がつけた名前がある。勝手にお前が名前をつけるんじゃねえよ!

お前だって、そのグラッチェリっていうのは本名じゃねえんだろう?

もういい加減、騙し合いはうんざりなんだ。

どうせ、この街の他の奴らみたいに俺を利用しようとしているのはわかってるんだ。

残念だったな、思い通りにいかなくてよ。



「パルンガ、苦しいよな…」



「ごめんな、俺は今までお前のために何にもしてやれなかった」



「ガルルルルッ…」



もう周りのカスどもの言う通り、パルンガはもうどうにもならないのかも知れない。

パルンガが正気を取り戻して、俺がベルダイザーに見えなくなったとしても、そこからこいつはどうなるんだ?

また前の様に。

ベルダイザーを探しにいけない。

もう、死ぬだけ?

こいつ、淋しいだろうな。

悔しいだろうな。

最後まで自分の宿命の相手と向き合えなくてよ。



俺が、パルンガの事をわかってやらないといけないのに。



お前には借りを作ってばかりなのに。俺は、お前の望みなんて少しも叶えてやれはしなかった。



「ガルルルルッ!ガァアアアッ!」



「パルンガ、俺は…」



「ガァアアアッ!」



「お前に感謝してる。だから…」



ガッ!



お前の望みはベルダイザーだ。

だから。

お前はそのままベルダイザーを追え。

お前は本当に勇敢な奴だ。

一番最初に出会った時はそういう印象はなかったのに。

本気になったお前は強い。

お前と旅をしていて、それがわかった。

エズアと同じ様な成獣になりたいという気持ちは、偽りない。

さあ。

最後まで気を抜くなよ。

全ての力を出し切って、目の前のベルダイザーを倒しにいけ。



カシャッ!



「来い!パルンガ!」



そうだ。



俺が、ベルダイザーだ。



「ガァアアアッ!ベルダイザーァアアッ!!」



「かかって来い!パルンガッ!!」



パルンガ。



お前と出会えて良かった。



絶望したこの世界で、安らぎを与えてくれた。



そして俺は立ち直って、ここまで来れた。



「ガァアアアッ!!」



お前は。



誰にもバカにする事はできない。

神獣と謳われたゼドケフラーの誇りを持って、俺を倒しにこい!!



本気で来るんだ。



俺もお前に敬意を示し、お前の宿敵ベルダイザーらしく、一切の手加減はしないぞ!!



ここからが、真剣勝負だ。





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