とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その260

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最後の時まで、俺の心配なんか…。

俺は自分の名前を否定したから、今生きているんだよ。

あのラグリェだけのせいじゃない。

この世界にいたもう1人の俺が、この世界での矢倉郁人やぐらいくととしての存在を大きくしてるんだ。

今の俺じゃ到底及ばないほど、強い。

そいつが名前を広めたおかげで、俺が同じ名前を名乗れば、それだけ期待と危険が大きくなる。

いいんだ、パルンガ。

俺は、名無しで。

もう、名前なんかいらない。



俺は、パルンガの呼ぶ声に気づいて、とっさに剣を振る腕を引いた。だから、あいつの心臓は捉えていないのに。

俺の剣では無傷だったはずなのに。

もう、あいつの体はもたなかった。

俺、本当はお前にずっと生きていてほしかった。

成獣になってほしかったのに。

お前みたいな側にいて安心できる奴が、この世界の何処にいるんだ?

もう見つからねえよ。

もう出会えねえ。

俺も、もう終わりだ。



「おい、今の剣技で本当にそのゼドケフラーに当たったのか?実はまだ生きてるんじゃないだろうなぁ?儂の納得する方法で確かめさせてもらわんと、納得できる訳ないわなぁあ?」



メベヘが壇上の席を立った。こいつ、パルンガの体を刀で刺して死んだかを試すつもりか?

そうはさせるか!

これ以上、パルンガを侮辱するな!



カチャッ。



「そうか、小僧。次は儂と闘いたい、そういう構えと捉えて良いのだな?だがな、儂は強い。強過ぎて、強過ぎて、参ってしまうぞ?それでもいいよな?構わないよな?なら、いざ殺し合いだ」



こいつとは、この街に居続けたら、また何処かで戦う羽目になるって思っていた。

お前がパルンガの死体を傷つけるというのなら、もう一回でも、二回でも…!



「まあ、待てメベヘよ。このリョウマ族はこの誇闘会ことうかいで勝利したのだ。勝者を愚弄する事は、誰からも許されんだろう。その勝者が望めば、話は別だがね」



「御意。ならば小僧、お前は誇闘会で勝ったのだから、希望を言え。儂と戦いたいって、申し出るんだよ」



希望だと?

お前らが全員くたばってくれる事以外、何を願うんだ?

パルンガは死んだんだぞ?

俺がパルンガと一緒にこの街に入ってきたのを知ってんだろうが!



「何がおもしろい…?」



「どうした、小僧。儂と戦いたいたいと願い出たのか?」



「俺はこのゼドケフラーと仲間だったんだ。何で闘わないといけないんだ?何がおもしろいんだ?」



「私も出来る限りの事をしたつもりだ。暴走を恐れて、一時的に城に隔離したが、重役の1人を殺されてしまっては、掟により処罰をせざるを得ないのだよ。それを回避する唯一の手段が、この誇闘会の勝利だった」



「パルンガの様子が変わり過ぎなんだよ…。お前らがパルンガに何かしたんだ。闘いの間でも、パルンガに吹き矢で何か打っていたじゃねえか?」



「…あれは精神安定剤だ。下手に周りの者達を暴走して巻き込まぬ様にだ。少しは効力があった様だ。そして、君への闘いに対しての戦意は落ちなかったのだから、悪くはない判断だったと思うがね」



あの吹き矢でパルンガはさらに暴走したんだぞ!?お前は何かの血と言っていたのに、言葉を変えやがって!誰が見ても精神安定剤な訳がない!


「人をおもちゃみたいに扱って…」



「人を?私がいつ、住人を軽視したと言うのだ。今の闘いで混乱しているのは理解できるが、少しは落ち着いたらどうかね?」



くそっ!何を余裕ぶって言ってやがる!

お前は自分側についていた奴も、少しの裏切りと見れば、平気で殺す奴だろうが!



「お前、シブを殺しただろう?」



「シブは死んだのは事実だ。しかし、シブもまた重役だ。私にとって彼女を失ったのはあまりにも辛い。恐らく、君以上にだ。その私が何故、彼女を殺すのだ?まさか、殺すところでも見た訳じゃないだろう?君は正気を失い過ぎている様だ。少し休むといい…」



何でも言葉巧みにかわしてきやがる。俺の苦手なタイプだ。だけど、お前を無傷で済ませてやろうなんて、少しも思ってねえんだよ。

パルンガを監禁して、その間に常に興奮状態にして狂わせ、俺をベルダイザーと幻惑させ、戦わせる様に仕向けた。

シブの、エズアにやられた重傷を好機と見たのか、術で一時的に回復させたりして操って、気に入らなくなるとその術を解いて重傷を進行させて死なせた。

おもしろいか?

思うがままに他人をおもちゃにして。

他人の命を、何だと思ってんだ?

だったら、俺もお前の命を好きにさせてもらう。

そうじゃないと!

ひとの気持ちなんて、いつまでたってもわかりはしねえだろうよ!!



「しかし、君は実に勇敢な男の様だな。誇闘会の続きをしたいという意思表示に応えて、急だが相手を探してあげよう。だが、それが誇闘会の勝者である君の要望と捉えるが、それで良いのかね?」



ズドンッ!



「ハムカンデ様に挑発的だなあっ!ガハハッ!この私が相手してやるよ!」



「おお…!あの小鈴ショウレイが久々に闘うのか?」



「原型を留めないほどにぐちゃぐちゃにされるぞ。せっかく勝ったのに、バカな奴だな」



周りに群がる能天気な奴らが闘いの場に降りた小鈴に反応した…!?

くそっ!失せろ、小鈴!お前と戦っている暇なんかねえんだよ!?



「おい小鈴!このメベヘとリョウマ族との殺し合いは誰にも邪魔はさせんぞ。厄介な因縁が残っているのだからな?例えお前だとしてもだ」



「頭撫でて欲しいのか?ついでにその頭、捥いでやろうか?そうしたら、獣の餌にでもしちまうかも知んねえだな、ガハハッ!」



「ほお?ここは誇闘会だ。次の戦いは俺達でやってやるのも面白い事だな、小鈴」



「止めるのだ、2人とも。次の対戦相手は、今誇闘会で勝利したこのリョウマ族に選ぶ権利がある。何せ、勝者の要望だ。聞かぬ訳にはいかないだろう」  



俺がハムカンデ、お前に牙を剥いたから、それが気に食わなくて、俺を始末しようとしてるんだな。

どうせ、俺はあのしもべに殺されてるんだ。この世界に転生なんて、俺にとってはエクストラステージみたいなもんだ。

ここで逃げたら、俺は自分が情けなくて、今度は名前を失うくらいじゃ済まねえ。

ここは、逃げられない…。

きっと、俺もまもなくお前のところに行く。

パルンガ、その時は、お前に謝りに行くからな。

そして、その時には、お前に俺の名前を教えるよ。



「クラファミース!」



「!?」



メルシィーニ!?

あいつまだこの街にいたのか…!

小鈴に近づいている?

まずい、メルシィーニのあの顔は信頼を置いている相手にする様な顔だ。

気づかれた!?

クラファミースは小鈴だ。とても危険な奴なんだ、うかつに近づくな!



「メルシィーニ、そいつに近づくんじゃねえ!!」



メルシィーニからは見えない、でも小鈴は脇の後ろ側で拳を握っている。

メルシィーニ、お前は小鈴にとって、攻撃対象なんだよ!?

お前の思っているクラファミースはもうきっと死んでいるんだ。目の前のこいつは、別人に成り果てた、ただの人でなしのバケモノだ。



「待て、小鈴!そっちに顔を向けるな!」



「クラファミース!ねえ、私だよぉ…!」



「何だぁあ?お前は?」



「待て…!」



メルシィーニは駆け足で小鈴に近づいている!その間に割って入るには間に合わない!



ガバァッ!



「…え?」



拳を振り上げやがった!攻撃がくるぞ!?メルシィーニ、逃げろ!!



「小鈴!こっちを向け!てめえの相手は…」



「この俺だッ!!」



ブゥンッ!



何をやってんだ、小鈴!?

テメェの相手は、俺だって言ってんだろうが!



バゴォーンッ!!



「…ブグッ!」



ドガァッ!



「!!?」



「メルシィーニ!!」



小鈴の凄まじい勢いの拳を顔面にまともに食らって、吹っ飛ばされて四隅の龍の杭に激突した!?

バカ野郎っ!!

お前は、この世界の人間なのに!どうして、警戒を解いた?

どうして無防備でこんな野蛮なクソ女に近づきやがったんだ!?

メルシィーニがぐったりとしている。



止めろ…。



止めてくれ!



こいつとは少しでも心を通わせているんだ。

命も救われた。

パルンガがやられたばかりなんだぞ。

もう、誰も…。



「メルシィーニ、大丈夫か!?」



「ゔぅゔ…っ」



「!?」



メルシィーニの視点がおかしい…。

顔が…殴られた衝撃で歪んでいる!?



「おい!しっかりしろ!?」



「お前のせいにゃ…」



「メルシィーニ…!」



「お前があの時、涙なんて…見せる、から。私が…思い出したじゃないかぁ…」



涙?

初めて会った時、お前が森の中で俺を殺そうとした時の事か?

お前は最後、俺を殺さずに、夜の森の中で姿を隠して安全に寝る方法を教えて、去っていった。

その時、俺の悔し涙を舐めて、本当の涙だとか言っていた…。

お前、俺の涙を見て、何かを思い出しでもしたのか?

だから、あの時、俺を殺さなかった?



「私が期待し過ぎちゃった…の、かな。この世界が、どうなっているのかなんて…わかっていた、はず、なのに」



くそっ!メルシィーニの後頭部から血が流れている!?



「誰か、助けてやってくれ!?」



「何言ってんだ、バカが!自らハムカンデの配下の小鈴に手を出しておいて…」



「即、処刑に決まってるだろうが!そのままくたばっちまえばいいんだよ。東角猫トーニャ族ごとき、大した命じゃないだろうが!」



「ケケケ、東角猫族が東角猫族を倒した。楽しいなぁ?あの気高い傲慢体質のクソ種族が潰し合うなんて、いい光景だぁ♪」



オーロフ族のゴミどもが!この街でほとんどが奴隷化されている東角猫族は助けないって言うのか!?



「おい、ティデ!同じ東角猫族だろう!?こいつを助けてやってくれ!」



「冗談じゃないねえ?天守層の者に歯向かったおバカさんに手を差し伸べたら、ハムカンデ様にどう思われるか明らかじゃないか。そのまま死なせなよ」



どうして…。

同じ種族なんじゃないのか?

どうして助けてあげないんだよ!



「おい!私が止めを刺してやるから、どくだはっ!その次は、お前だぞ、リョウマ族ぅ?」



この街はオーロフ族の街だろう?ならせめて、東角猫族同士で手を取り合って協力しないといけないんじゃないのか?



「クラファミース…。姿も声も変わっちゃった…ね。でも、昔の面影は…残って、いた、よ。ね?私だよ、メルシィーニ…だよ?」



「だははっ!死ね、クソ小娘!!」



「メルシィーニ!しっかりしろ!ここから逃げろ!?」







「…ねえ、メルシィーニなんだよ?」







「お…母ちゃん…」







「!!?」



「おらあっ!」




ブォンッ!!



パアァンッ!!!



「だははっ!だははっ!」



「だは?」



グギギギッ…!




「てめぇ…」



「まさか…よ?」



「まさか…」



「てめえ…母親か?」



「この小せぇ赤ちゃんがよう!どっからこんな力が出てくるんだ?」



メルシィーニ…。

お前、母親を探してたのか?



「お前は、こいつの…」



「メルシィーニの」



なんて事しやがるんだ…。

母親は、子から見たら、絶対に味方でいてくれると思われる存在なんだぞ?



「母親かって聞いてんだよっ!?」



「ああ?母…親?そんなもん、いつの話だあ?覚えてないだはっ!ガハハッ!」



メルシィーニは逝った…。こいつの目が悲しそうに開いたまま死んでたから目を閉じてやったら…。

こいつは、目に涙を溜めていた。

こいつの最後が、母親に止め刺されて、悲しくて涙を流しながら死んだんだ。

お前がこの世に生んだんだぞ?

何で愛さない?

どうして心配してやらないんだ?

こいつが、どんな思いでこの街にお前を探しに来たと思ってんだ?



「どうして…」



「お前は気づかない?」



「ああ?」



メルシィーニはお前がバケモノに変わり果てたとしても、お前をクラファミースだと、母親だと当てたんだぞ!



「てめえは、自分が腹を痛めて生んだ子が…」



「どうしてわからねえんだよっ!!?」



グググッ…!



「この小せぇリョウマ族が、どうして私の拳を押し返してんだぁ?どっからこんな力が!」



俺の手首にずっと小さく灯っていた紫色の炎が、今、右腕を覆い尽くすほど燃え盛っている。



そうだよな、腹が立つよな。

許せないよな。

メルシィーニの気持ちを思うと、悔しくて、悔しくて、仕方がねえよ…。

ようやく、気が合ったな。



「ふむ、では小鈴との闘いを認めるとしよう。では、始めるが良い!」



シブ、パルンガ、メルシィーニ。

見とけよ…。



「だははっ!右腕が大やけどだなぁ!?」



「この紫色の炎は、お前を地獄に導く炎…」



「ここからの俺を、今までの俺と思ってやがったら!てめえ、死ぬぞ!?」






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