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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その292
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小鈴の胸の魔闘石にたくさんの亀裂が入り、ボロボロ剥がれ、青い光は放たなくなった。
魔力が魔闘石から小鈴に届かなくなったせいか、小鈴の動きが悪くなった。
それでも、たまに強がりの笑みを浮かべて、俺に挑発的な動きをする。
まるで、泳げないのに水の中でもがき、記憶の片隅に浮かぶ泳ぎ方を真似て、それらしい姿を見せようとしているみたいだ。
でも、俺にはわかるんだ。
俺は、泳ぐ事は苦じゃないからな。
お前は、何を隠している?
きっと、何かで頭の中をかき乱されて、おかしくなっているのもあるんだろう。
そのまま戦っても、きっとお前は俺には勝てない。
不思議と、俺の体に力を宿してくれた東角猫族との相性は悪くない。
何かの共通点がある気がする。
それが何かはわからないけど。
宿されたその力を、今までよりうまく使えている様な気がする。
「だはっ!だはっ!!」
ブォオンッ!
ブォオンッ!
小鈴は俺の顔を狙って、何度も同じ軌道の突きを繰り返す。
俺の口を封じたいんだろう。
その単調な攻撃じゃ、俺は倒せない。
お前が焦って攻撃する姿を見て、周りにいる見下し屋のオーロフ族達が、小鈴を見て、失笑している。
この街じゃ、東角猫族は奴隷扱いが普通だけど、ハムカンデに目を掛けられているおかげで偉そうに振る舞っていた小鈴を、気に入らないって思いで見ていたんだろうな。
それが、俺にやられて、負けそうになっている小鈴を見て、心の奥にしまっていた感情が表に出てきたか。
俺は、お前が嫌いだ。
お前が周りから何を言われようと、何とも思わない。
母親であるお前に会いにきたメルシィーニを殴り殺しやがった。
そして、ヘラヘラ笑っていたお前がイラつくんだよ。
だけど、メルシィーニの声がお前を呼んでいる。
もう、メルシィーニは死んでいるのにだ。
だから、俺はもうこの先、こいつに何をすればいいのかわからない。
こいつの体力が尽きるまで、この闘いに付き合ってやればいいのか?
くだらない…。
「だははっ!この小鈴が、このまま終われる訳がないだはっ!」
「笑わせるなよ」
「お前は、終われないんじゃない…」
「始められていないんだよ」
小鈴は俺の言葉が癇に障ったのか、ムキになって、精度の失った突きを俺の方に向けて放ち続けた。
もう、いいよな。
メルシィーニ。
この母親は、どんな理由があれ、負けたんだ…。
お前の事なんか忘れちまった。
もう、何を言っても意味なんかないんだよ。
諦めろ…。
「私があの天守層の中で、一番だはっ!」
強気だな、小鈴。
あの天守層には、ハムカンデや黒眼五人衆のメベヘなんかもいるだろう。
お前のそんな言葉も許されるくらい、お前はハムカンデに気に入られてるんだろうな。
「私が…!」
「あのゼドケフラーは」
何だ?
こいつ、何を言おうとしてるんだ?
ただブンブン腕を振り回しても、そんな攻撃、当たりはしないぞ!
もういい加減、降参したらどうだ?
「あのエズアは…!」
エズアだと?
この街でハムカンデに騙されて殺された、ゼドケフラーのエズア?
「私が殺しただはっ!」
「!」
何をバカな…!?
「お前が倒した幼獣のゼドケフラーとは、比べものにならないだはっ!」
この野郎…!
パルンガの事を言いやがったな!?
てめえに、俺の気持ちの何がわかるんだよ!?
自分の子を気軽に殺す冷血非道なお前に、一体、何がわかるんだ。
…。
こいつ。
だからか?
最初はティデがあの天守層にいたという話だった。
その時に、小鈴はいないという話だった。
そうか、小鈴がエズアにとどめを刺したから、格上げされて、あの天守層に居座る事になったのか。
エズアはハムカンデに騙された事で、天守層でハムカンデに襲いかかったけど、そこに居合わせた奴ら全てを相手にする事になり、重傷を負って、城からは逃げ出した。
その後、ハムカンデがエズアの後を追いながら、エズアを反逆者と叫び、城の外で街の奴らからの追撃を食らって死んだって話だろう?
街の中で最後にとどめを刺したのがお前って事か?
「!?」
まさか、ウソだろ…?
まさか、また?
うう…!
吹き矢のせいで俺の体に入り込んだゼドケフラーの怒りが今まで鎮まっていたのに、また足から這い上がる様に怒りが再燃してくる!?
ゼドケフラーの仲間が外道の小鈴に殺されたのが許せないという事か?
「お前とエズアを比べたら、エズアの方が強いに決まっている!そのエズアを倒したのは、私だはっ!」
「お前の倒した弱々しいゼドケフラーの幼獣なんて、ゴミ!偉そうにしてると捻り殺すぞ、リョウマ族ぅ!!」
「何だと…?」
パルンガ…。
俺とパルンガは仲間だったんだ。
その仲間を倒さなきゃいけなかった俺の気持ちが、どうしてお前なんかにわかる?
お前が自分の娘を殺したのとは、訳が違うんだ…。
許さねえ…。
俺は。
お前が憎い。
ひとの気持ちのわからないお前なんかが生き残る事こそ、この世の終わりだ。
「お前を、必ず殺してやるだはっ!」
近くに俺の大剣が落ちている。
お前が俺を殺すというのなら、俺は。
カチャッ…。
再び、解禁だ。
この大剣で、お前を…。
お前をメルシィーニの所まで届けてやるよ。
メルシィーニに詫びてこい。
うう…っ!
俺は、お前を許さない…!
お前が憎い。
お前を…。
斬るっ!
魔力が魔闘石から小鈴に届かなくなったせいか、小鈴の動きが悪くなった。
それでも、たまに強がりの笑みを浮かべて、俺に挑発的な動きをする。
まるで、泳げないのに水の中でもがき、記憶の片隅に浮かぶ泳ぎ方を真似て、それらしい姿を見せようとしているみたいだ。
でも、俺にはわかるんだ。
俺は、泳ぐ事は苦じゃないからな。
お前は、何を隠している?
きっと、何かで頭の中をかき乱されて、おかしくなっているのもあるんだろう。
そのまま戦っても、きっとお前は俺には勝てない。
不思議と、俺の体に力を宿してくれた東角猫族との相性は悪くない。
何かの共通点がある気がする。
それが何かはわからないけど。
宿されたその力を、今までよりうまく使えている様な気がする。
「だはっ!だはっ!!」
ブォオンッ!
ブォオンッ!
小鈴は俺の顔を狙って、何度も同じ軌道の突きを繰り返す。
俺の口を封じたいんだろう。
その単調な攻撃じゃ、俺は倒せない。
お前が焦って攻撃する姿を見て、周りにいる見下し屋のオーロフ族達が、小鈴を見て、失笑している。
この街じゃ、東角猫族は奴隷扱いが普通だけど、ハムカンデに目を掛けられているおかげで偉そうに振る舞っていた小鈴を、気に入らないって思いで見ていたんだろうな。
それが、俺にやられて、負けそうになっている小鈴を見て、心の奥にしまっていた感情が表に出てきたか。
俺は、お前が嫌いだ。
お前が周りから何を言われようと、何とも思わない。
母親であるお前に会いにきたメルシィーニを殴り殺しやがった。
そして、ヘラヘラ笑っていたお前がイラつくんだよ。
だけど、メルシィーニの声がお前を呼んでいる。
もう、メルシィーニは死んでいるのにだ。
だから、俺はもうこの先、こいつに何をすればいいのかわからない。
こいつの体力が尽きるまで、この闘いに付き合ってやればいいのか?
くだらない…。
「だははっ!この小鈴が、このまま終われる訳がないだはっ!」
「笑わせるなよ」
「お前は、終われないんじゃない…」
「始められていないんだよ」
小鈴は俺の言葉が癇に障ったのか、ムキになって、精度の失った突きを俺の方に向けて放ち続けた。
もう、いいよな。
メルシィーニ。
この母親は、どんな理由があれ、負けたんだ…。
お前の事なんか忘れちまった。
もう、何を言っても意味なんかないんだよ。
諦めろ…。
「私があの天守層の中で、一番だはっ!」
強気だな、小鈴。
あの天守層には、ハムカンデや黒眼五人衆のメベヘなんかもいるだろう。
お前のそんな言葉も許されるくらい、お前はハムカンデに気に入られてるんだろうな。
「私が…!」
「あのゼドケフラーは」
何だ?
こいつ、何を言おうとしてるんだ?
ただブンブン腕を振り回しても、そんな攻撃、当たりはしないぞ!
もういい加減、降参したらどうだ?
「あのエズアは…!」
エズアだと?
この街でハムカンデに騙されて殺された、ゼドケフラーのエズア?
「私が殺しただはっ!」
「!」
何をバカな…!?
「お前が倒した幼獣のゼドケフラーとは、比べものにならないだはっ!」
この野郎…!
パルンガの事を言いやがったな!?
てめえに、俺の気持ちの何がわかるんだよ!?
自分の子を気軽に殺す冷血非道なお前に、一体、何がわかるんだ。
…。
こいつ。
だからか?
最初はティデがあの天守層にいたという話だった。
その時に、小鈴はいないという話だった。
そうか、小鈴がエズアにとどめを刺したから、格上げされて、あの天守層に居座る事になったのか。
エズアはハムカンデに騙された事で、天守層でハムカンデに襲いかかったけど、そこに居合わせた奴ら全てを相手にする事になり、重傷を負って、城からは逃げ出した。
その後、ハムカンデがエズアの後を追いながら、エズアを反逆者と叫び、城の外で街の奴らからの追撃を食らって死んだって話だろう?
街の中で最後にとどめを刺したのがお前って事か?
「!?」
まさか、ウソだろ…?
まさか、また?
うう…!
吹き矢のせいで俺の体に入り込んだゼドケフラーの怒りが今まで鎮まっていたのに、また足から這い上がる様に怒りが再燃してくる!?
ゼドケフラーの仲間が外道の小鈴に殺されたのが許せないという事か?
「お前とエズアを比べたら、エズアの方が強いに決まっている!そのエズアを倒したのは、私だはっ!」
「お前の倒した弱々しいゼドケフラーの幼獣なんて、ゴミ!偉そうにしてると捻り殺すぞ、リョウマ族ぅ!!」
「何だと…?」
パルンガ…。
俺とパルンガは仲間だったんだ。
その仲間を倒さなきゃいけなかった俺の気持ちが、どうしてお前なんかにわかる?
お前が自分の娘を殺したのとは、訳が違うんだ…。
許さねえ…。
俺は。
お前が憎い。
ひとの気持ちのわからないお前なんかが生き残る事こそ、この世の終わりだ。
「お前を、必ず殺してやるだはっ!」
近くに俺の大剣が落ちている。
お前が俺を殺すというのなら、俺は。
カチャッ…。
再び、解禁だ。
この大剣で、お前を…。
お前をメルシィーニの所まで届けてやるよ。
メルシィーニに詫びてこい。
うう…っ!
俺は、お前を許さない…!
お前が憎い。
お前を…。
斬るっ!
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