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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その294
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俺の体の中で暴れるゼドケフラーの怒り、これはパルンガが吹き矢で打ち込まれた血と同じなんだろう。
ゼドケフラーの血。
平常心じゃいられない。
同じゼドケフラーであるパルンガ。
お前の方が、苦しそうに見えた。だけどそれは、幼獣の体の限界がきていたからでもあるんだよな?
この狂いそうになる怒り、沸き立つ鍋のフタを、跳ね飛ばされない様に必死に抑えながら、戦おうとしてるみたいだ。
気が散る。
俺が聖人みたいな人だったら、念仏でも唱えて心を沈める事もできたのかも知れないけど。
「だぁはっ!!」
小鈴は力任せに槍を振ってくる。もう、そんなにお前に余力はないのかも知れない。
お前の魔闘石は、壊れて、明らかに色を失くしている。
もう、そのでかい体に魔力を運んではくれないだろう。
ガキィィンッ!
俺は小鈴の槍の攻撃を、大剣で払い除けた。
今は俺の体の中に、東角猫族の力が宿っている。
重い大剣を振るのも、普通の時と比べると、苦にはならない。
動体視力も上がっている。
大剣から伝わる槍の衝撃も、もうそこまで大きくはない。
ゼドケフラーの怒りが俺の邪魔をしても、それでも。
お前との戦いに、決着が着く…。
このままだと、俺はゼドケフラーの怒りのまま、お前を二度と起き上がれなくなるまで、叩き潰す事になる。
もう、メルシィーニの事を気にしてあげられない。
お前がされた事を考えると、ゼドケフラーの怒りで頭の中まで炎で焼きつきそうだ。
ハムカンデのお気に入りのお前を倒せば、きっとハムカンデは頭に血が昇って、俺に何かしてくるだろう。
今、この街で俺に仲間なんていない。
ハムカンデに手を出せば、きっと周りの奴らは俺に攻撃するだろうな。
まるで、ゼドケフラーのエズアがこの街でされたみたいに、この街にいるみんなから攻撃されて、俺は。
「ぅうぉおおっ!」
ガキィィンッ!
俺の大剣は小鈴の槍とかち合い、金属音が響く。
しぶとく槍を持ち続けているんじゃねえよ。
その槍を手放して、負けを認めろ!
そうじゃないと、俺は、
お前を殺しちまう。
それだけの事をお前はやったんだ、死んで当然だ。
だけど、お前に殺された奴が、それを望んでねえんだ。
「こんのぉぉっ!リョウマ族の分際で…!」
リョウマ族…の、分際。
リョウマ族の御影三叉霧蔵がまだこの世に存在していたとしたら、お前が戦って倒せる相手じゃない。
自分の力を過信してるんじゃねえよ。
身も心も、お前は彼と比べたら遥かに劣る。
リョウマ族をバカにするな。
「死ねえっ!リョウマ族ぅ!」
ビュンッ!
小鈴の槍のひと突きも、何の工夫もない突きだ。
もう俺に当たる事はない。
俺は小鈴の攻撃を苦もなくかわし、大剣を水平に構えた。
「リョウマ族が、てめえなんかに…負ける訳ねえだろうが!」
もう、ゼドケフラーの怒りを抑える事はできないんだ。
次元斬を食らって、終わらせてくれ。
次元斬の境界線が、小鈴の心臓の位置をなぞり、伸びていく。
小鈴は、槍の攻撃を俺にかわされて、防御の体制が間に合っていない。
うう…っ!
お前が!
お前が憎いって、ゼドケフラーが言っているんだ!!
お前は、メルシィーニを殺した!
お前は死ぬべきなんだよ!?
なあ…。
もう終わろう。
もう、疲れた。
お前なんかが生きているのを見るのが、つらいんだよ。
だからッ!
死んでくれよ…!?
俺は考える事を止めて、大剣をさらに引き、目の前に見える境界線に合わせて、力一杯に大剣を振る!!
そう。
振ろうとした、その瞬間。
俺の目の前に信じられない事が、起こった。
「!!?」
小鈴の前に…。
薄く見えるその姿。
両手を広げて、庇おうとしてるのか?
メルシィーニ…。
何で…。
お前は、こいつに殺されたんだぞ!?
お前は、もう死んだんだ。
お前の気持ちもわからずに、あいつはお前を殺した。
あいつはもう、お前の母親じゃないんだ!
…それなのに、どうして?
お前はバカだ。
あいつを庇っても、何もないのに…。
…。
本当は。
わかっていたんだ。
…。
ああ、そうだよ。
俺だって…。
母さんが過ちを犯しても…。
誰にも殺させやしねえよ…。
ゼドケフラーの血。
平常心じゃいられない。
同じゼドケフラーであるパルンガ。
お前の方が、苦しそうに見えた。だけどそれは、幼獣の体の限界がきていたからでもあるんだよな?
この狂いそうになる怒り、沸き立つ鍋のフタを、跳ね飛ばされない様に必死に抑えながら、戦おうとしてるみたいだ。
気が散る。
俺が聖人みたいな人だったら、念仏でも唱えて心を沈める事もできたのかも知れないけど。
「だぁはっ!!」
小鈴は力任せに槍を振ってくる。もう、そんなにお前に余力はないのかも知れない。
お前の魔闘石は、壊れて、明らかに色を失くしている。
もう、そのでかい体に魔力を運んではくれないだろう。
ガキィィンッ!
俺は小鈴の槍の攻撃を、大剣で払い除けた。
今は俺の体の中に、東角猫族の力が宿っている。
重い大剣を振るのも、普通の時と比べると、苦にはならない。
動体視力も上がっている。
大剣から伝わる槍の衝撃も、もうそこまで大きくはない。
ゼドケフラーの怒りが俺の邪魔をしても、それでも。
お前との戦いに、決着が着く…。
このままだと、俺はゼドケフラーの怒りのまま、お前を二度と起き上がれなくなるまで、叩き潰す事になる。
もう、メルシィーニの事を気にしてあげられない。
お前がされた事を考えると、ゼドケフラーの怒りで頭の中まで炎で焼きつきそうだ。
ハムカンデのお気に入りのお前を倒せば、きっとハムカンデは頭に血が昇って、俺に何かしてくるだろう。
今、この街で俺に仲間なんていない。
ハムカンデに手を出せば、きっと周りの奴らは俺に攻撃するだろうな。
まるで、ゼドケフラーのエズアがこの街でされたみたいに、この街にいるみんなから攻撃されて、俺は。
「ぅうぉおおっ!」
ガキィィンッ!
俺の大剣は小鈴の槍とかち合い、金属音が響く。
しぶとく槍を持ち続けているんじゃねえよ。
その槍を手放して、負けを認めろ!
そうじゃないと、俺は、
お前を殺しちまう。
それだけの事をお前はやったんだ、死んで当然だ。
だけど、お前に殺された奴が、それを望んでねえんだ。
「こんのぉぉっ!リョウマ族の分際で…!」
リョウマ族…の、分際。
リョウマ族の御影三叉霧蔵がまだこの世に存在していたとしたら、お前が戦って倒せる相手じゃない。
自分の力を過信してるんじゃねえよ。
身も心も、お前は彼と比べたら遥かに劣る。
リョウマ族をバカにするな。
「死ねえっ!リョウマ族ぅ!」
ビュンッ!
小鈴の槍のひと突きも、何の工夫もない突きだ。
もう俺に当たる事はない。
俺は小鈴の攻撃を苦もなくかわし、大剣を水平に構えた。
「リョウマ族が、てめえなんかに…負ける訳ねえだろうが!」
もう、ゼドケフラーの怒りを抑える事はできないんだ。
次元斬を食らって、終わらせてくれ。
次元斬の境界線が、小鈴の心臓の位置をなぞり、伸びていく。
小鈴は、槍の攻撃を俺にかわされて、防御の体制が間に合っていない。
うう…っ!
お前が!
お前が憎いって、ゼドケフラーが言っているんだ!!
お前は、メルシィーニを殺した!
お前は死ぬべきなんだよ!?
なあ…。
もう終わろう。
もう、疲れた。
お前なんかが生きているのを見るのが、つらいんだよ。
だからッ!
死んでくれよ…!?
俺は考える事を止めて、大剣をさらに引き、目の前に見える境界線に合わせて、力一杯に大剣を振る!!
そう。
振ろうとした、その瞬間。
俺の目の前に信じられない事が、起こった。
「!!?」
小鈴の前に…。
薄く見えるその姿。
両手を広げて、庇おうとしてるのか?
メルシィーニ…。
何で…。
お前は、こいつに殺されたんだぞ!?
お前は、もう死んだんだ。
お前の気持ちもわからずに、あいつはお前を殺した。
あいつはもう、お前の母親じゃないんだ!
…それなのに、どうして?
お前はバカだ。
あいつを庇っても、何もないのに…。
…。
本当は。
わかっていたんだ。
…。
ああ、そうだよ。
俺だって…。
母さんが過ちを犯しても…。
誰にも殺させやしねえよ…。
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