471 / 548
第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その348
しおりを挟む
「ガァアアアッ!」
体から上る炎は収まるどころか、火力を上げ、轟々と燃えていく…。
肉が焼かれ、血が煮えたぎる臭い。なんて吐き気のする臭いなんだ。
生きたまま、俺は焼かれて…死ぬのか?
このままじゃ…。
終われねえのに。
「非道を繰り返す怪物に相応しい、死に様だ…」
「この世から滅びるべき存在」
「妖悪鬼」
『お、俺は…妖悪鬼じゃねえッ!』
「ねえ、どうして?」
「どうして、そう言えるの?」
どうしてって?俺は、人間なんだよ。俺は怪物じゃねえ!
誰がどう見ても、俺は人間…。
「その怪物らしい体つきや血色の悪い肌色を見れば自分でもわかるでしょう?そして何よりも、醜く憎悪の形相をしたその顔…」
「ねえ…?旦那様」
「私を孕ませ、殴り殺した…」
や、止めろっ!
そんなひどい事を…。
そんな…事。
「ガァア…ッ!」
「その声が、“星の住人”の声だとでも言うの?」
「いいえ、違うわ」
「妖悪鬼はこの星から排除すべき、悪魔の一族なのよ。誰からも愛される事のない醜い存在。貴方はこの世から、消滅する事で大勢の住人が安堵するのよ」
くそっ!
でも、この太くも歪んだ緑色の腕を見て、自分が化け物じゃねえって、思えねえ。
中々、思う様にしゃべれないのに。
誤解なんか、解けやしない。
ああ…あ、何だ?
この声は?
槍を俺の体に突き刺した奴らが、お経みたいなものを唱えてやがる…!?
「ガァア…ア…ア…」
耳が、耳が壊れそうだ。
そのお経を止めてくれぇえっ!
俺の体は燃え続け、肉の焦げた臭いがする…。
もう、切り傷や火傷の痛みも、限界を越えて感覚が麻痺してわからなくなってきた。
体が重い鉛みたいに、動かなくなっている。
このまま、俺は妖悪鬼として退治されちまうのか?
「さあ、お逝きなさい。愛しの、旦那様…」
「ガァアアアッ!!」
絶望だ…。
絶望しかない。
おれの最期は、化け物として終わるのか?
これが、俺の人生。
俺は普通の人間だったはずだ。
化け物は、俺か?
心を失くした家族…。
殴られて、蹴られて、そしていつしか人間ですらなくなった。
人間の心を失くした、人間に憧れた何ものかに成り下がった。
俺は…この妖悪鬼の姿が相応しい。
「ガァアアァァ…」
この火に逆らう事なく、痛みを受け入れて、このままあの世までたどり着く事を望むか?
身も心も浄化され、次の生まれ変わりは、もう少しマシな人生でも歩めれば、もうそれでいい?
それも、悪くない…か。
この黒い大地の至る所に赤い亀裂が見える。
マグマが膨れ上がり、溢れ出て、真っ赤な熱泥がゆっくりと広がっていく。
山に見えていたあの赤い亀裂も、マグマだったんだ。
俺は今から逃げようとしても、何処までも続く灼熱地獄。
この体にまとわりつく炎も、もう消す手段はない。
まるで、炎自体に俺の体の残りカスがくっついている様な感覚だ。
俺は。
もう…終わりか?
俺は本当に、心が弱いな。
もう…止めよう。
もう、こんなにつらいなら。
生きるのを、止めよう…。
生きるのは、つらいんだ。
つら…い。
「だけど………」
「俺は、矢倉郁人だ…」
「妖悪鬼じゃない」
「だから、矢倉郁人を取り戻さないと、死ねやしない。俺は…」
「矢倉郁人なんだから」
「そうだよな?母さん」
「そうだよな…?」
「父さん…」
体から上る炎は収まるどころか、火力を上げ、轟々と燃えていく…。
肉が焼かれ、血が煮えたぎる臭い。なんて吐き気のする臭いなんだ。
生きたまま、俺は焼かれて…死ぬのか?
このままじゃ…。
終われねえのに。
「非道を繰り返す怪物に相応しい、死に様だ…」
「この世から滅びるべき存在」
「妖悪鬼」
『お、俺は…妖悪鬼じゃねえッ!』
「ねえ、どうして?」
「どうして、そう言えるの?」
どうしてって?俺は、人間なんだよ。俺は怪物じゃねえ!
誰がどう見ても、俺は人間…。
「その怪物らしい体つきや血色の悪い肌色を見れば自分でもわかるでしょう?そして何よりも、醜く憎悪の形相をしたその顔…」
「ねえ…?旦那様」
「私を孕ませ、殴り殺した…」
や、止めろっ!
そんなひどい事を…。
そんな…事。
「ガァア…ッ!」
「その声が、“星の住人”の声だとでも言うの?」
「いいえ、違うわ」
「妖悪鬼はこの星から排除すべき、悪魔の一族なのよ。誰からも愛される事のない醜い存在。貴方はこの世から、消滅する事で大勢の住人が安堵するのよ」
くそっ!
でも、この太くも歪んだ緑色の腕を見て、自分が化け物じゃねえって、思えねえ。
中々、思う様にしゃべれないのに。
誤解なんか、解けやしない。
ああ…あ、何だ?
この声は?
槍を俺の体に突き刺した奴らが、お経みたいなものを唱えてやがる…!?
「ガァア…ア…ア…」
耳が、耳が壊れそうだ。
そのお経を止めてくれぇえっ!
俺の体は燃え続け、肉の焦げた臭いがする…。
もう、切り傷や火傷の痛みも、限界を越えて感覚が麻痺してわからなくなってきた。
体が重い鉛みたいに、動かなくなっている。
このまま、俺は妖悪鬼として退治されちまうのか?
「さあ、お逝きなさい。愛しの、旦那様…」
「ガァアアアッ!!」
絶望だ…。
絶望しかない。
おれの最期は、化け物として終わるのか?
これが、俺の人生。
俺は普通の人間だったはずだ。
化け物は、俺か?
心を失くした家族…。
殴られて、蹴られて、そしていつしか人間ですらなくなった。
人間の心を失くした、人間に憧れた何ものかに成り下がった。
俺は…この妖悪鬼の姿が相応しい。
「ガァアアァァ…」
この火に逆らう事なく、痛みを受け入れて、このままあの世までたどり着く事を望むか?
身も心も浄化され、次の生まれ変わりは、もう少しマシな人生でも歩めれば、もうそれでいい?
それも、悪くない…か。
この黒い大地の至る所に赤い亀裂が見える。
マグマが膨れ上がり、溢れ出て、真っ赤な熱泥がゆっくりと広がっていく。
山に見えていたあの赤い亀裂も、マグマだったんだ。
俺は今から逃げようとしても、何処までも続く灼熱地獄。
この体にまとわりつく炎も、もう消す手段はない。
まるで、炎自体に俺の体の残りカスがくっついている様な感覚だ。
俺は。
もう…終わりか?
俺は本当に、心が弱いな。
もう…止めよう。
もう、こんなにつらいなら。
生きるのを、止めよう…。
生きるのは、つらいんだ。
つら…い。
「だけど………」
「俺は、矢倉郁人だ…」
「妖悪鬼じゃない」
「だから、矢倉郁人を取り戻さないと、死ねやしない。俺は…」
「矢倉郁人なんだから」
「そうだよな?母さん」
「そうだよな…?」
「父さん…」
0
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!
碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!?
「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。
そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ!
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!
966
ファンタジー
「錬金術士様だ!この村にも錬金術士様が来たぞ!」
最低ランク錬金術士エリセフィーナは錬金術士の学校、|王立錬金術学園《アカデミー》を卒業した次の日に最果ての村にある|工房《アトリエ》で一人生活することになる、Fランクという最低ランクで錬金術もまだまだ使えない、モンスター相手に戦闘もできないエリナは消えかけている前世の記憶を頼りに知り合いが一人もいない最果ての村で自分の夢『みんなを幸せにしたい』をかなえるために生活をはじめる。
この物語は、最果ての村『グリムホルン』に来てくれた若き錬金術士であるエリセフィーナを村人は一生懸命支えてサポートしていき、Fランクという最低ランクではあるものの、前世の記憶と|王立錬金術学園《アカデミー》で得た知識、離れて暮らす錬金術の師匠や村でできた新たな仲間たちと一緒に便利なアイテムを作ったり、モンスター盗伐の冒険などをしていく。
錬金術士エリセフィーナは日本からの転生者ではあるものの、記憶が消えかかっていることもあり錬金術や現代知識を使ってチート、無双するような物語ではなく、転生した世界で錬金術を使って1から成長し、仲間と冒険して成功したり、失敗したりしながらも楽しくスローライフをする話です。
ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました
たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。
「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」
どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。
彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。
幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。
記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。
新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。
この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。
主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。
※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。
ゲーム内容知らないので、悪役令嬢役を放棄します!
田子タコ
ファンタジー
学園一と名高い美少女に呼び止められた。
「貴女、悪役令嬢ではないの?」
あー、やっぱりここってそれ系なんだ。
前世の記憶が蘇ったから、転生かと思ったら、学園に来てから違和感が。
ある男子達が異様にハイスペックイケメン。
王子、宰相の次男、大公長男、そして隣国王子が二人
ここまで同年に揃うものか?
しかも、一つ上に宰相長男、隣国王子
一つ下に、大公次男の双子など。
イケパラーっと楽しむ趣向だったら、楽しめただろうが、イケメンには興味ない。
「あー、やっぱりここってそれ系の世界だったんだ」
知らない乙女ゲーに転生してしまったが、乙女ゲー嫌いなんだよね。
もっぱら、RPG派なので、冒険するよ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる