とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険!そして婚約破棄はあるのか(仮)

sayure

文字の大きさ
479 / 548
第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その355

しおりを挟む
俺はクェタルドと意識を同化した事で、東角猫トーニャ族の姿に変わった。

その後、わずかな可能性に賭け、パルンガを助けようとクェタルドと一緒に、目を閉じたままのパルンガの中にいたエズアの意識に呼びかけた。

その時くらいから、クェタルドの意識が俺の中から消えた。

クェタルドは、パルンガの中にいたエズアと再会できたんだろう。

クェタルドはエズアの意識と、何処かに行ってしまったのかも知れない。

でも、まだ俺は、東角猫族の姿をしている。

それなら、その2人はそう遠くに行ってしまっている訳ではないのかもな。

ただ、クェタルドの意識を感じないというだけでなく、いた時と比べて、力は50%程度まで落ちている感じはする。

それでも、この姿になる前よりも力は格段に上がっているのは、言うまでもない。

この戦いは、長引かせたくはないから、もう決着をつけたい。

だけど、さっきみたいな東角猫族の魔眼と言われた獣猫王琥珀色眼エヴァストローグアイは、今の俺には危険過ぎる。

一時的に、使えたけど、身も心も保たない。

諸刃の剣とも言える。



…。



目の前で険しい顔して、刀を構えているメカリエが、また予想しない何かを仕掛けてくるかも知れない。

それに、あの灰色の目…。

あの灰色の目で睨まれると、まるで俺が本当にサイクロスって人に何かをしたんじゃないかと錯覚する。

妙に説得力のある目をしているのが、心に引っかかる。

俺に見せたあの幻覚は、少し真実を元に再現されている気がした。きっと妖悪鬼ごうりんは、ずっと前にあの灰色の目の種族に酷い事をしたんだろう。

幻覚の中で、メカリエは灰色の目の女に姿を変えていたな。

古球磨ごくま族のメカリエ達の中に、その灰色の目の種族はいるんだ…。

取り憑かれている訳じゃない。

メカリエの様子に、違和感はない。

幻覚の中で、俺の前に現れた女は、妖悪鬼に犯され、殺されたと言った。

俺を、妖悪鬼と。旦那様と。

そして、狂った赤ちゃんみたいなのがいたよな?

まさか…。

その血が、お前ら古球磨族に受け継がれているのか?



「…その灰色の目は、赤くなる目を受け入れなかったみたいだな」



「そんな事を君が気にする必要はないさ。このまま、次の攻撃で君を仕留めてみせよう」



そうか。

だから、血塗られた…呪いの種族。

灰葬楼グロンカ族と、そう呼んでいたよな?

お前は、言った…。

だからこそ、最悪で、最強でなければならないと。

でも、お前が達成できそうなのは、最悪だけだ。

最強にはなれない。

サイクロスを失って、そんな悲しげな目を見せ続ける奴が、どうやって最強になるんだ?

それは俺にも言える事だけどな。

俺も心に傷を負って、もう治らないかも知れない。

でも、俺はお前と違って、最強を目指している訳じゃない。

じゃあ、いっその事。

最弱決定戦って事にするか?

心にナイフが刺さって、抜けない弱り切った心。

どっちが、先にその突き刺さったナイフを抜けるのか。



俺か?



お前か?



「今の僕は、あの呪術を破られ、魔力もかなり消費している。そして鬼眼きがんも受けつけない状態だ。それに対し、君は覚醒とも言える大きな変化を遂げた」



「それでも、僕に勝機があると思えるのは、やはり君とその姿に違和感がある事に尽きる…」



違和感…か。

それはそうだよな。

実際、俺の本来の姿じゃねえ。

隠そうなんても、思っていない。



「その姿をうまく扱えていない。だから、僕に勝算は大いにあるという事だ。しかし、油断をしている訳でもない」



「しっかりと、確実に止めを刺すつもりさ…」



「この…」



メカリエが一瞬、地面を踏み締めた。

何かを仕掛けてくる!?

来いよ…。

もう1人の俺が生きていた時にやった事に、文句つけてんだろう?

もう1人の俺は、きっと間違っていない。

言葉で惑わされて、死ぬハメになったっていうのが不満なら、今度は俺が力でわからせてやるっ!



「骸ノ悲鳴、異型・重殺…」



俺は負けねえぞ!

勝負だ!



「…?」



その時、後ろの方で苦痛を訴える声が、俺の耳に入って…。

右頬に何かの水滴が当たった。

鉄の錆びた臭い。

…血だ。



「パルンガッ!?」



俺の視線は、メカリエから外れ、パルンガの方に。

その隙を、メカリエは見逃すはずはなかった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【書籍化決定】ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません

紫楼
ファンタジー
 母に先立たれ、木造アパートで一人暮らして大学生の俺。  なぁんにも良い事ないなってくらいの地味な暮らしをしている。  さて、大学に向かうかって玄関開けたら、秘書って感じのスーツ姿のお姉さんが立っていた。  そこから俺の不思議な日々が始まる。  姉ちゃん・・・、あんた一体何者なんだ。    なんちゃってファンタジー、現実世界の法や常識は無視しちゃってます。  十年くらい前から頭にあったおバカ設定なので昇華させてください。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...