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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その358
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意識と体が繋がらなかった箇所が、次々と繋がっていく。
パルンガが多く魔力を使って、俺を治してくれている。
でも。
きっと、命を削っている。
止めてくれと言っても、止めようとはしなかった。
パルンガ…。
でも。
俺のために、
ありがとう。
「もう大丈夫だ、パルンガ」
お前のおかげで、だいぶ良くなった。だから、これ以上俺に魔力を使うな…」
「お前がまた死んだら、後悔しかしない…」
「あははっ!ォ…俺は、死んでねえ、ど」
ど?だって。
懐かしいな、お前の幼獣の時のその語尾。
やっぱりお前はパルンガだ。
お前が戻ってきたんだ。
実感できたよ。
「我が友よ…」
「ああ、わかってる」
メカリエが、もたれかかって倒れたまま動かないゲルに、何かを呟き続けていた。それを終えて、寒気のする様な殺気の目を俺に向けている。
その灰色の目は、何を語っている?
お前がゲルに駆け寄る前、思い返すと、俺とゲルの大剣と刀が交わったあたりで、ゲルはお前に刺された。
赤い目と、灰色の目。
お前達の中で、その2つの目は、何か違和感がある。
何となく、相容れない印象だ。
「これで、満足か…?矢倉郁人」
「何だと…?」
そうか。
まだ、何もかも俺のせいにする気か。
ゲルを倒したのは、お前…。
「ご希望通り、古球磨族は、この僕ひとりとなった」
ゲルをゆっくりと地面に寝かせて、メカリエは立ち上がった。
ゲルは、死んだ…のか?
あいつは、シブの事を思いやっていた様な気がしていた。
シブ、あの世で慰めてやってくれ。
「俺が、古球磨族をひとりにしたんじゃない。それは、お前達がよく知っているんじゃないのか?」
もう、この戦いは終わった、そう感じたけど。
「血塗れたこの道、お前のご自慢の白い布切れで拭き切る事ができるだろうか?」
「さあ、お前にとっては仕上げだろう。古球磨族の絶滅まで、あと少しだ」
メカリエの刀の刀身が少し赤みを帯びた?
いや、気のせいか。
ただ、これだけは言える。
メカリエは、まだ戦意を落としてなんかいない。
俺を殺そうとしている。
「我が友よ、2人がかりで行けば、何とか倒せるかも知れないな」
「…あいつは、わかっていないんだ。ここは、俺ひとりでやるしかない」
「偽善を以って、殺めるのが矢倉郁人という存在だ。それならば、最悪で卑怯というものだ。我ら最悪最強とは、ほど遠い」
偽善か?
俺がこの世界に来た時に、ここの奴らに対して感じた事だ。
逆に言われると腹が立つ。
「さあ、大剣をしっかり構えよ。今度は、よそ見など許さんぞ」
「お前は戦えるのかよ?ゲルが倒れたんだぞ…」
「最悪最強の古球磨族に相応しくなかったから、脱落したまでの事。それをお前が問う必要などあるまい」
「そうかよ。じゃあ、ゲルは報われたな。そんな腐れ外道の種族から外れた事に、感謝してるだろうよ」
どんなに誇らしげな種族か知らねえけど、俺にはそこまで価値が高いとは思えねえ。
その種族の血とやらに翻弄されて、本来の生き方ができなかった奴だっていたんだ。
死んで当然か?
最悪最強じゃないから?
死んで当然なのは、お前みたいなふざけた考え方してる奴の方なんだよ!
「そうか。では、ゲルの敵討ちでもして見せようか?矢倉郁人。ついでに、サイクロスの敵討ちも、して欲しいか?」
おお、そうかよ!?
この体はパルンガのおかげで、万全じゃないにしても戦えそうな状態にまでしてくれた。
命を粗末にする訳じゃないけど、この戦いは避けられない。
俺の分身であるもうひとりは、この世界に先にたどり着いて、戦って死んでるんだよ。
俺と同じ様につらい思いしただろうよ。
それでも、お前の仲間のサイクロスを改心させようとしてただなんて…。
俺より強いし、俺と同じ人間とは思えねえ、できた奴だ。そのもうひとりに対して、これ以上、悪く言われて。
いい気分がしねえんだよ。
カチャリッ。
「矢倉郁人、これがお前の最後の戦いだ」
最後だと?
ふざけやがって。
「俺がじゃねえ…」
「お前の最後の戦いだ」
パルンガが多く魔力を使って、俺を治してくれている。
でも。
きっと、命を削っている。
止めてくれと言っても、止めようとはしなかった。
パルンガ…。
でも。
俺のために、
ありがとう。
「もう大丈夫だ、パルンガ」
お前のおかげで、だいぶ良くなった。だから、これ以上俺に魔力を使うな…」
「お前がまた死んだら、後悔しかしない…」
「あははっ!ォ…俺は、死んでねえ、ど」
ど?だって。
懐かしいな、お前の幼獣の時のその語尾。
やっぱりお前はパルンガだ。
お前が戻ってきたんだ。
実感できたよ。
「我が友よ…」
「ああ、わかってる」
メカリエが、もたれかかって倒れたまま動かないゲルに、何かを呟き続けていた。それを終えて、寒気のする様な殺気の目を俺に向けている。
その灰色の目は、何を語っている?
お前がゲルに駆け寄る前、思い返すと、俺とゲルの大剣と刀が交わったあたりで、ゲルはお前に刺された。
赤い目と、灰色の目。
お前達の中で、その2つの目は、何か違和感がある。
何となく、相容れない印象だ。
「これで、満足か…?矢倉郁人」
「何だと…?」
そうか。
まだ、何もかも俺のせいにする気か。
ゲルを倒したのは、お前…。
「ご希望通り、古球磨族は、この僕ひとりとなった」
ゲルをゆっくりと地面に寝かせて、メカリエは立ち上がった。
ゲルは、死んだ…のか?
あいつは、シブの事を思いやっていた様な気がしていた。
シブ、あの世で慰めてやってくれ。
「俺が、古球磨族をひとりにしたんじゃない。それは、お前達がよく知っているんじゃないのか?」
もう、この戦いは終わった、そう感じたけど。
「血塗れたこの道、お前のご自慢の白い布切れで拭き切る事ができるだろうか?」
「さあ、お前にとっては仕上げだろう。古球磨族の絶滅まで、あと少しだ」
メカリエの刀の刀身が少し赤みを帯びた?
いや、気のせいか。
ただ、これだけは言える。
メカリエは、まだ戦意を落としてなんかいない。
俺を殺そうとしている。
「我が友よ、2人がかりで行けば、何とか倒せるかも知れないな」
「…あいつは、わかっていないんだ。ここは、俺ひとりでやるしかない」
「偽善を以って、殺めるのが矢倉郁人という存在だ。それならば、最悪で卑怯というものだ。我ら最悪最強とは、ほど遠い」
偽善か?
俺がこの世界に来た時に、ここの奴らに対して感じた事だ。
逆に言われると腹が立つ。
「さあ、大剣をしっかり構えよ。今度は、よそ見など許さんぞ」
「お前は戦えるのかよ?ゲルが倒れたんだぞ…」
「最悪最強の古球磨族に相応しくなかったから、脱落したまでの事。それをお前が問う必要などあるまい」
「そうかよ。じゃあ、ゲルは報われたな。そんな腐れ外道の種族から外れた事に、感謝してるだろうよ」
どんなに誇らしげな種族か知らねえけど、俺にはそこまで価値が高いとは思えねえ。
その種族の血とやらに翻弄されて、本来の生き方ができなかった奴だっていたんだ。
死んで当然か?
最悪最強じゃないから?
死んで当然なのは、お前みたいなふざけた考え方してる奴の方なんだよ!
「そうか。では、ゲルの敵討ちでもして見せようか?矢倉郁人。ついでに、サイクロスの敵討ちも、して欲しいか?」
おお、そうかよ!?
この体はパルンガのおかげで、万全じゃないにしても戦えそうな状態にまでしてくれた。
命を粗末にする訳じゃないけど、この戦いは避けられない。
俺の分身であるもうひとりは、この世界に先にたどり着いて、戦って死んでるんだよ。
俺と同じ様につらい思いしただろうよ。
それでも、お前の仲間のサイクロスを改心させようとしてただなんて…。
俺より強いし、俺と同じ人間とは思えねえ、できた奴だ。そのもうひとりに対して、これ以上、悪く言われて。
いい気分がしねえんだよ。
カチャリッ。
「矢倉郁人、これがお前の最後の戦いだ」
最後だと?
ふざけやがって。
「俺がじゃねえ…」
「お前の最後の戦いだ」
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