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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その379
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ハムカンデを包み込んだ背筋が凍るほど不気味な形をした黒い鎧は、俺に絶えず感じた事もない様な威圧感を与えている。
背の高さはいつの間にか、2mくらいにまで伸び、1、2tの巨大な岩を軽々持ち上げそうなあの分厚い胸板が物語る巨体。
先ほどまで壇上にいた同じハムカンデとはとても思えない体つきだ。
あの鎧の中で、ハムカンデの体はどの様に変化しているのか?
あの兜の両端から空に向かって伸びる2つの黒い角はただの飾りか、それともハムカンデが人ではなく、魔族と為り変わった事を意味するのか?
「あの分厚い鎧を斬り裂くのは容易ではないが、我が友よ、その大剣はあの鎧を斬り裂く事はできるのか?」
あの幾重にも連なる板金の鎧を斬り裂く事は、至難の業だろうな。
だけど、倒す方法はある。
その防備を全て無効化して、心臓のみを斬る技…。
次元斬。
これを成功させれば、勝機はある。
ただ、今のあいつに心臓はあるのか?
「あいつがまだ人なら、勝てる見込みがない事もない。だけど、あいつが心臓も動いていない様な化け物になっているのなら、恐らくはムリだろうな」
「いや、あの敵の心臓の鼓動は、確かに感じるぞ」
「へえ?耳がいいんだな、パルンガは」
それなら、勝ち目がない事もない。
ただ、今の東角猫族の体は、剣を振るのが得意じゃなさそうだ。だから、次元斬の精度には疑問が残る。
それに、あいつが何を仕掛けてくるのかまだわからねえ。
常識外の事を平然と仕掛けてきそうだからな。
以前のハムカンデと違い、何も語らず、微動だにしない今の姿は得体が知れない。
つい、警戒して、こっちも先手をかけられないでいる。
あの黒鎧野郎が攻撃する隙すら与えない様な、凶悪な攻撃をしてきたら…。
俺がやられるのは早いだろうな。
「あれが、魔族なんだろう?」
「魔族と直接戦った事はないけど、きっとあんな澱み切った気配を振り撒いているんだろうな」
お前もそう感じるか?
そうだよな、パルンガ。
悪い感情が形を成すとしたら、あんな姿になるんだろうな。
この邪悪な感じは、俺の大嫌いな《冬枯れの牙》ラグリェと同じなんじゃないのか?
いや、不気味な感じは今目の前にいる黒鎧野郎の方が圧倒的に上か。
ガシャッ…!
ガシャッ…!
「!!?」
「わざわざ、俺達を出迎えに来てくれるってよ。重そうな鎧なのに、律儀な奴だ」
「ああ、我が友よ。返り討ちにしてやろう!」
「頼もしいな、パルンガは」
「いや、頼もしいのはそちらだ。我が友よ」
ああそう。
俺頼みっていうのは止めてくれよな。
俺はお前の手助けなしで、この戦いを切り抜けるのがかなり難しい事だって、感じ始めているんだ。
それでも、俺は少しも手を抜くつもりはない。
気圧されたくもない。
だから、お前も手を抜くなよ、パルンガ。
2人で倒してやろうぜ。
ガチャッ…!
ガチャッ…!
黒い鎧野郎は手を空にかざすと、何もない空間から突然、薄気味悪い赤い装飾を散りばめた黒い大剣が姿を現した。
その大剣を握りしめ、俺達を殺しにやってくる。
ああ、やってやるさ。
返り討ちにしてやる。
魔族だか何だか知らねえが、俺にとっては間違いなく敵でしかない。
覚悟しろよ!
背の高さはいつの間にか、2mくらいにまで伸び、1、2tの巨大な岩を軽々持ち上げそうなあの分厚い胸板が物語る巨体。
先ほどまで壇上にいた同じハムカンデとはとても思えない体つきだ。
あの鎧の中で、ハムカンデの体はどの様に変化しているのか?
あの兜の両端から空に向かって伸びる2つの黒い角はただの飾りか、それともハムカンデが人ではなく、魔族と為り変わった事を意味するのか?
「あの分厚い鎧を斬り裂くのは容易ではないが、我が友よ、その大剣はあの鎧を斬り裂く事はできるのか?」
あの幾重にも連なる板金の鎧を斬り裂く事は、至難の業だろうな。
だけど、倒す方法はある。
その防備を全て無効化して、心臓のみを斬る技…。
次元斬。
これを成功させれば、勝機はある。
ただ、今のあいつに心臓はあるのか?
「あいつがまだ人なら、勝てる見込みがない事もない。だけど、あいつが心臓も動いていない様な化け物になっているのなら、恐らくはムリだろうな」
「いや、あの敵の心臓の鼓動は、確かに感じるぞ」
「へえ?耳がいいんだな、パルンガは」
それなら、勝ち目がない事もない。
ただ、今の東角猫族の体は、剣を振るのが得意じゃなさそうだ。だから、次元斬の精度には疑問が残る。
それに、あいつが何を仕掛けてくるのかまだわからねえ。
常識外の事を平然と仕掛けてきそうだからな。
以前のハムカンデと違い、何も語らず、微動だにしない今の姿は得体が知れない。
つい、警戒して、こっちも先手をかけられないでいる。
あの黒鎧野郎が攻撃する隙すら与えない様な、凶悪な攻撃をしてきたら…。
俺がやられるのは早いだろうな。
「あれが、魔族なんだろう?」
「魔族と直接戦った事はないけど、きっとあんな澱み切った気配を振り撒いているんだろうな」
お前もそう感じるか?
そうだよな、パルンガ。
悪い感情が形を成すとしたら、あんな姿になるんだろうな。
この邪悪な感じは、俺の大嫌いな《冬枯れの牙》ラグリェと同じなんじゃないのか?
いや、不気味な感じは今目の前にいる黒鎧野郎の方が圧倒的に上か。
ガシャッ…!
ガシャッ…!
「!!?」
「わざわざ、俺達を出迎えに来てくれるってよ。重そうな鎧なのに、律儀な奴だ」
「ああ、我が友よ。返り討ちにしてやろう!」
「頼もしいな、パルンガは」
「いや、頼もしいのはそちらだ。我が友よ」
ああそう。
俺頼みっていうのは止めてくれよな。
俺はお前の手助けなしで、この戦いを切り抜けるのがかなり難しい事だって、感じ始めているんだ。
それでも、俺は少しも手を抜くつもりはない。
気圧されたくもない。
だから、お前も手を抜くなよ、パルンガ。
2人で倒してやろうぜ。
ガチャッ…!
ガチャッ…!
黒い鎧野郎は手を空にかざすと、何もない空間から突然、薄気味悪い赤い装飾を散りばめた黒い大剣が姿を現した。
その大剣を握りしめ、俺達を殺しにやってくる。
ああ、やってやるさ。
返り討ちにしてやる。
魔族だか何だか知らねえが、俺にとっては間違いなく敵でしかない。
覚悟しろよ!
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