6桁の数字と幻影ビルの金塊 〜化け猫ミッケと黒い天使2〜

ひろみ透夏

文字の大きさ
32 / 66
6桁の数字と幻影ビルの金塊

031 ルシファーズ・セブン

しおりを挟む
 
「7番目の芯がアウトだと知ってるのはわたしたちだけ。なら、王が次に芯を2本取るかもしれない」

「そうか……」

 ぼくたちは勝ちに最重要な6番目の芯を取る事にこだわりすぎていた。
 アウトの芯を知らない王は次も『2』を申告し、6番目と一緒にアウトの7番目を取るかもしれないのだ。

 ジョー:○  ○○  
 王  : ○△  ◎●
          ↑↑

「ジョーはあえて王の挑発に乗った……。王のプライドに火を付ける為に!」

 仮にジョーが『1』を申告しても、次に王が『2』を申告していたら負けていた。
 それなら『2』を申告して王のプライドに火を付け、次も王に『2』を申告させる!

「その方が確率は上がるのよ。王の感情に賭けた、プライドの勝負ってわけ!」

 美玲ちゃんのまなざしに光が戻っている。
 その瞳を見て、ぼくの絶望的な気持ちが吹き飛んだ。

 ジョーも美玲ちゃんもまだ勝負を捨てていない。
 いまもまだ、戦っているのだ。

「おい、おれを嘲笑ってた奴隷の各々方おのおのがたに問うぜ?! お前ぇらの王様はよぅ、次に幾つ芯を取るんだろうなぁ?!」 

「有り得ねぇよなあ?! 最強の王様がよお、大勢の奴隷たちの前でよお……」

「まさか『1』を申告するなんてなあっ?!」

 ジョーが次々と罵声ばせいを浴びせて王をあおり立てる。
 そして玉座に座った人影に指を突きつけ、大声で叫んだ。

「聞かせろやっ!! てめえの命とプライドを張った『数』は、いったい幾つなんでぇ!!」

 暗闇が沈黙に包まれる。

 一世一代の大勝負。
 ジョーは額に、大粒の汗を浮かべていた。

 美玲ちゃんも息を呑む。
 ぼくの心臓は、破裂しそうなほど早鐘を打っていた。

 ……いま、長い沈黙が破られる。


 …………。


 破られ……ない……?

 玉座の人影に鋭く突きつけていたジョーの人差し指が、力なく下がっていく。

「おいいぃ~……。いい加減なにか……」


「わたしの申告する数は『1』だ」


 威圧感のある、太く濁った声じゃない。
 若くて、か細い声ーー。

 とつぜん聞こえたその声は、ぼくらの背後から飛んできた。

 暗闇の中から小柄な人影が進み出る。
 フードで顔を隠した、ローブをまとった少年。

 美玲ちゃんと同じくらいの背格好をした子どもだった。

「わたしが王だ。故に二言はない。奴隷よ、芯を1つ取れ」

「……ちょ、ちょっと待って!」

 美玲ちゃんが振り返って叫んだ。

「ジョー、逃げて!」

 突然の出来事に戸惑っていたジョーが、慌てて走り出すも時すでに遅し。
 大勢の人影に取り囲まれて、逃げ場を失った。
 
「どうした、まるでどの芯がアウトか知っているような狼狽ろうばいぶりだな。もっとうまく演技しろ。お前らがイカサマをしてる事くらい、とっくに知っている」

「いきなり現れて自分が王だなんて、そっちの方がイカサマじゃない! あんたこそ、奴隷が芯を詰めている様子を隠れて見ていたんでしょ?!」

「……小娘が」
 
 王がフードを脱いだ。

 その姿を見て、ぼくらは息を呑んだ。
 小柄な顔の中心に、大きな目玉が1つだけあったんだ。

 両手をローブから出し、親指と人差し指を突き立てる。
 その指先を顔のまえであわせた。

 両手の指で形取られた三角形ーー。
 その三角形から、血のように染まる紅い瞳がのぞく。


「わたしは心が読める。故に絶対王者なのだ」
 

しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。 そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。 彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。 次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。 そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

オバケの謎解きスタンプラリー

綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます! ――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。 小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。 結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。 だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。 知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。 苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。 いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。 「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」 結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか? そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか? 思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。

処理中です...