59 / 63
第17話 女王の想い
03
しおりを挟むその世界は、霧が深く立ちこめる森のなか。
緑色の樹皮を持つ巨木が天に向かって何本ものびている。はるか上空にある巨大な葉の重なりをぬって、幾筋もの乳白色の光がさし込んでいる。
「ああ、オラキル。ここは子どものころに過ごした、アルア星の森にそっくりですね」
女王はステンドガラスのように色鮮やかに透きとおる背中の羽根をひろげた。それは木々のあいだからさし込む光を通し、地面に七色の光を映し出す。
きらきらと光る鱗粉をふりまきながら、女王はふわりと飛び上がった。
わたしも擬態スーツを脱いで背中の羽根をひろげると、光の軌跡を残しながら優雅に宙を舞う女王のあとに続いて飛んだ。
そのとき――。
「リリル、止まって!」
わたしは急いで女王の手をつかんだ。
すぐ目の前を、トビマンタの群れが疾風のごとく横切ったのだ。
二十センチほどのひし形の体をもつトビマンタは、ヒレを翼のように羽ばたかせて空を飛ぶ。まるでじゃれるように女王のまわりをぐるりと飛んだあと、また上空に飛び去っていった。
「あれは……」
「はい。陛下が学生のころ、タラサ星開発エリアから、命がけで救い出したトビマンタです」
「あんなにたくさん……」
「タラサ星は経済成長がいちじるしく、その後も環境が激変しましたから、トビマンタは絶滅してしまいました。いま生き残っているのは、この世界の中だけ。陛下が救った一対のつがいから増えた、彼らだけです」
「やはり絶滅してしまいましたか……。しかし、トビマンタは海がないと生きていけないはず。ここには海が見当たりません」
「見てください」
わたしは地面を指さした。大きな池が、地響きをたてながらゆっくりと移動している。
「あれはアケロン星のドクイケセオイガメです。背中の甲羅が池のようになっていて、そこに体内で作られた、鉄をも溶かす強酸の液体を溜めて身を守ります。しかし、この世界へ来て環境が変わったためか、体内で強酸の液体が作られなくなってしまいました」
「それでは、ほかの生物に補食されてしまうでしょう?」
女王が言った、ちょうどそのとき、ドクイケセオイガメの前に、ふたつの首を持つ巨大なワニが現れた。セベク星のフタクビカイマンだ。
フタクビカイマンが、ふたつの大きな口をひろげ、ドクイケセオイガメの首めがけて襲いかかろうとした瞬間、上空から垂直に急降下してきたトビマンタの群れが、フタクビカイマンの目玉めがけて一斉に飛びかかった。
ふたつの頭をトビマンタの大群におおわれたフタクビカイマンは、頭をぶんぶんとふりまわしながら退散していく。
戦いを終えたトビマンタたちは、ドクイケセオイガメの甲羅の池に、次々と飛び込んでいった。
「ドクイケセオイガメはいま、海水にとても近い成分の液体を体内から出して、背中の池に溜めているのです。海水がないと生きていけないトビマンタと、自分だけでは身を守れなくなったドクイケセオイガメ。育った星も環境も違う生物が、新しい世界で、お互いを助け合って生きているのです」
すると突然、女王は顔をゆがめて上空に飛んで行ってしまった。
「……陛下?!」
わたしはあわてて追いかけたが、太い木々から生える大きな葉に邪魔され、その姿を見失ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
ワンダーランドのおひざもと
花千世子
児童書・童話
緒代萌乃香は小学六年生。
「ワンダーランド」という、不思議の国のアリスをモチーフにした遊園地のすぐそばに住んでいる。
萌乃香の住む有栖町はかつて寂れた温泉街だったが、遊園地の世界観に合わせてメルヘンな雰囲気にしたところ客足が戻ってきた。
クラスメイトがみなお店を経営する家の子どもなのに対し、萌乃香の家は普通の民家。
そのことをコンプレックス感じていた。
ある日、萌乃香は十二歳の誕生日に不思議な能力に目覚める。
それは「物に触れると、その物と持ち主との思い出が映像として見える」というものだ。
そんな中、幼なじみの西園寺航貴が、「兄を探してほしい」と頼んでくるが――。
異能×町おこし×怖くないほのぼのホラー!
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
アリアさんの幽閉教室
柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。
「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」
招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。
招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。
『恋の以心伝心ゲーム』
私たちならこんなの楽勝!
夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。
アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。
心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……??
『呪いの人形』
この人形、何度捨てても戻ってくる
体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。
人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。
陽菜にずっと付き纏う理由とは――。
『恐怖の鬼ごっこ』
アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。
突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。
仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――?
『招かれざる人』
新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。
アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。
強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。
しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。
ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。
最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる