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第二章 カケラの切手と不思議な壺
42 土の男神サトゥルヌス
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サトゥルヌスは洞穴の近くの壁をツルハシで叩き、大きく割れた壁の石を持ち上げた後それを地面に置き、色んな工具を使って削り、あっという間にあのテーブルとイスしかない建物を作り上げた。
中にはテーブルとイス以外にも、長テーブルが用意されていた。その長テーブルの上に携帯コンロやティーセット、コーヒーメーカーなどが用意されていた。
作業が終わったからか、サトゥルヌスはヘルメットを外した。想像していた通り、スキンヘッドだった。
「客が来るたびにこの形の家を作るのでな、すっかり慣れてしまったぜ」
サトゥルヌスは飲み物を作りながら、ガハハと高らかに笑っている。たまに見かける建物はその名残りのようだ。
「あ、あたしがやるよ!」
「いや、ここまでがもてなしの儀式だから誰にもさせんぞ。ちなみに、2杯目以降はセルフサービスだ」
どうやら、建物を建てて、もてなしの飲み物を作るまでのセットが儀式のようだ。私はお言葉に甘えて、飲み物をいただくことにした。
「夢羽殿はティーかコーヒー、どっちがいいか?」
「ティーでお願いね」
「やはりそうか。コーヒーメーカー動かさなくてよかったぜ」
サトゥルヌスの言う通り、コーヒーメーカーは動いてなかった。
「電気がないから動かしてないと思ってたけど、別の理由があったの?」
「ああ。母上はコーヒーを飲まない方だった。苦くて飲めないって言ってたな」
だから私ってコーヒー飲めないのか。でもカフェオレとか薄めたりしたら飲めるかも。あれ? そういえば……。
「コーヒーと紅茶って人間が生まれる前からあったの?」
「あったぞ。わしが作ったからな。だが、コーヒーは不評だったがな」
ガハハと笑うサトゥルヌス。
そのサトゥルヌスから紅茶を受け取った。カップの形と、紅茶の香りが記憶に引っかかる。
「ミルクや砂糖が無かったのかな。両方を多めに入れてカフェオレにしたら飲めるよ」
「苦味がダメだったんだな。砂糖はあったが、ミルクが無かった。当時は哺乳類がいなかったのでな、ミルクが無かったわい」
サトゥルヌスは、近くにあるミルクを手に取り、人間はすごいと呟いている。
「そうだったんだ。ミルク入れないとまだ苦いもんね」
そう言い、紅茶を飲んだ。やはり、最近飲んだ気もするし、昔も飲んだ記憶がある。
「この紅茶って、サトゥルヌスが作った物なんだよね?」
「ああ、そうだぜ。母上の好物だったな」
「あはぁ! もしかして、現世のレイって喫茶店にも、この紅茶とコーヒー出してる?」
「お! よく知っているな! その通りだ。あの喫茶店も元々は母上とわしが、他の神々に飯食わせるために始めた店だ。あいつら、昔はほっといていたら飯食わずにいたからな。今は大丈夫だからと、紅茶とコーヒーとケーキだけの提供になったがな。神々の利用しなくなったが、まだ全部の惑星と繋がっているはずだ。料理提供を再開したら、神々も通い始めると思うんだがな……」
「ふむふむ、やっぱりそうだったんだね。んー、神々が通い始めたら、局員がびびって来なくなる気がするね。あたし、その喫茶店に3ヶ月ほど前に1度行って、当時は記憶が欠けていたんだけど、懐かしいけどどこで飲んだんだろうって思っていたのよね。その話を聞いてようやくわかったよ」
私はありがとうと言った。
「ガハハ! お安い御用だ」
私は紅茶を飲み干し、数時間前に買ったカバンと壺を出した。
「ほう? 何やら興味深い物を出したが、今日訪れた理由か?」
「理由の1つだよ。サトゥルヌスに会うって目的はもう達成したけどね」
サトゥルヌスは壺をまじまじと見ている。
「やっぱりそっちが気になるんだ。これ、最近夢の星で見つかる壺みたいで、これを使って悪さをしている原初の女神教団っていう集団が関係しているかなって思ってる」
「なるほどな……。面白い物だが、どういう仕組みで動いているのかが全くわからん。知識の集まる場所ならもしかしたらわかるかもしれん」
サトゥルヌスはうーんと唸り、首を捻る。
「知識が集まる所? 図書館みたいな所があるの?」
「ああ、そうだぜ。知識と願望が集まる所といえば、木星の大図書館だ。この太陽系の情報は、全てあの図書館に集まるな。願望も情報だから、木の女神に聞いたらわかるだろう。ちなみに願望の本も木星にあるぜ」
「それじゃ、次は木星だね」
サトゥルヌスは壺の次にカバンの方を見ている。そして、驚いている様子。
「どうしたの?」
「これはまた懐かしい物が出てきたもんだ」
そう言ってサトゥルヌスは、カバンを床に置き、思いっきり開いた。
「これはわしが初めて作ったリュック型の無限カバンだ。こうやって地面に置いて、大きめのものを出したり入れたりも簡単にできる。引っかからなければ何でも入る」
どこからか持ってきた折り畳まれたキャンプ用テントを中に入れ、そしてまた出した。
あの有名な物語のポケットは、物の大きさ関係なくあのポケットに吸い込まれるように入ったが、無限カバンは引っかかったら入らないという現実的な部分もあるようだ。
「あはぁ、大きいものまで入っちゃうんだ。普通のカバンとして使おうと思っていたけど、これだったらいろいろと入れてもいいかもね」
「ああ、そうしたらいいと思うぜ」
そう言って折りたたまれたキャンプ用テントを片付けた。
「色んな人に使われたんだろう、かなりボロボロだな。修理するか?」
「破けている所だけ直してくれたら嬉しいかな」
「がってんだぜ」
サトゥルヌスはカバンを取り、どっこいしょと立ち上がってテーブルの上に置いた。そして自分のカバンの中から修理用の箱を取り出し、その中から裁縫セットらしき物を取り出した。
「ちゃちゃっと終わらせるから、その辺りで休んでいるといい」
そう言って、サトゥルヌスはメガネをかけて作業を始めた。
私は邪魔にならないように、外に出た。そして、屋根の上に飛んで乗った。
周囲には建物などは一切無く、辺りは岩ばかりだった。
私は背伸びをして身体をほぐし、そして周囲の気配を探ってみた。
動物の気配が少し感じるが、やはり小動物だけという感じだ。私の目の前の洞穴の上は、たまに爆発している。
そういえば、あのロボットは一体何を運んでいたんだろう。
そう思いながら、私は爆発している所を双眼鏡で見る。どうやら、まだ何かを運んでいるようだ。
「あれはな、爆破してから露出される人間が作った物を回収させているんだ。爆破しても壊れないケースに入っているみたいでな、壊れる心配はない。最初はヘルパーロボに掘らせていたが、爆破の方が早いとわかってからは、ああさせておる。変な呟きをするようになってしまったがの」
サトゥルヌスはガハハと笑う。
「それでサトゥルヌスがいないのに爆発していたんだ。爆破で壊れないケースってすごいね。それって何かに使えないの?」
「それがな、そのケースわしが触ると消えるのだよ。たぶん、わしの役割である『創造物』の管理の能力によるもので、人間が作った物が送られてきた時に傷が付かないようにと保護しているのかもしれんな」
なるほどと頷く。
「それより、ほれ、終わったぞ」
サトゥルヌスから無限カバンを受け取った。
「はやい! ありがとう!」
「このくらい大したことないぜ。また修理したい物とかあったら遠慮なく来てくれ。あと、これがわしの神器だ。紐もつけてあるから、首から下げるといいぜ」
サトゥルヌスはガハハと笑っている。印鑑のようで、『神』という字が彫られていた。
「ありがとう! また来るねー」
私は、サトゥルヌスに手を振りながら空へと飛翔した。
「(次の目的地は木星ね)」
そう思いながら更に上昇した。
中にはテーブルとイス以外にも、長テーブルが用意されていた。その長テーブルの上に携帯コンロやティーセット、コーヒーメーカーなどが用意されていた。
作業が終わったからか、サトゥルヌスはヘルメットを外した。想像していた通り、スキンヘッドだった。
「客が来るたびにこの形の家を作るのでな、すっかり慣れてしまったぜ」
サトゥルヌスは飲み物を作りながら、ガハハと高らかに笑っている。たまに見かける建物はその名残りのようだ。
「あ、あたしがやるよ!」
「いや、ここまでがもてなしの儀式だから誰にもさせんぞ。ちなみに、2杯目以降はセルフサービスだ」
どうやら、建物を建てて、もてなしの飲み物を作るまでのセットが儀式のようだ。私はお言葉に甘えて、飲み物をいただくことにした。
「夢羽殿はティーかコーヒー、どっちがいいか?」
「ティーでお願いね」
「やはりそうか。コーヒーメーカー動かさなくてよかったぜ」
サトゥルヌスの言う通り、コーヒーメーカーは動いてなかった。
「電気がないから動かしてないと思ってたけど、別の理由があったの?」
「ああ。母上はコーヒーを飲まない方だった。苦くて飲めないって言ってたな」
だから私ってコーヒー飲めないのか。でもカフェオレとか薄めたりしたら飲めるかも。あれ? そういえば……。
「コーヒーと紅茶って人間が生まれる前からあったの?」
「あったぞ。わしが作ったからな。だが、コーヒーは不評だったがな」
ガハハと笑うサトゥルヌス。
そのサトゥルヌスから紅茶を受け取った。カップの形と、紅茶の香りが記憶に引っかかる。
「ミルクや砂糖が無かったのかな。両方を多めに入れてカフェオレにしたら飲めるよ」
「苦味がダメだったんだな。砂糖はあったが、ミルクが無かった。当時は哺乳類がいなかったのでな、ミルクが無かったわい」
サトゥルヌスは、近くにあるミルクを手に取り、人間はすごいと呟いている。
「そうだったんだ。ミルク入れないとまだ苦いもんね」
そう言い、紅茶を飲んだ。やはり、最近飲んだ気もするし、昔も飲んだ記憶がある。
「この紅茶って、サトゥルヌスが作った物なんだよね?」
「ああ、そうだぜ。母上の好物だったな」
「あはぁ! もしかして、現世のレイって喫茶店にも、この紅茶とコーヒー出してる?」
「お! よく知っているな! その通りだ。あの喫茶店も元々は母上とわしが、他の神々に飯食わせるために始めた店だ。あいつら、昔はほっといていたら飯食わずにいたからな。今は大丈夫だからと、紅茶とコーヒーとケーキだけの提供になったがな。神々の利用しなくなったが、まだ全部の惑星と繋がっているはずだ。料理提供を再開したら、神々も通い始めると思うんだがな……」
「ふむふむ、やっぱりそうだったんだね。んー、神々が通い始めたら、局員がびびって来なくなる気がするね。あたし、その喫茶店に3ヶ月ほど前に1度行って、当時は記憶が欠けていたんだけど、懐かしいけどどこで飲んだんだろうって思っていたのよね。その話を聞いてようやくわかったよ」
私はありがとうと言った。
「ガハハ! お安い御用だ」
私は紅茶を飲み干し、数時間前に買ったカバンと壺を出した。
「ほう? 何やら興味深い物を出したが、今日訪れた理由か?」
「理由の1つだよ。サトゥルヌスに会うって目的はもう達成したけどね」
サトゥルヌスは壺をまじまじと見ている。
「やっぱりそっちが気になるんだ。これ、最近夢の星で見つかる壺みたいで、これを使って悪さをしている原初の女神教団っていう集団が関係しているかなって思ってる」
「なるほどな……。面白い物だが、どういう仕組みで動いているのかが全くわからん。知識の集まる場所ならもしかしたらわかるかもしれん」
サトゥルヌスはうーんと唸り、首を捻る。
「知識が集まる所? 図書館みたいな所があるの?」
「ああ、そうだぜ。知識と願望が集まる所といえば、木星の大図書館だ。この太陽系の情報は、全てあの図書館に集まるな。願望も情報だから、木の女神に聞いたらわかるだろう。ちなみに願望の本も木星にあるぜ」
「それじゃ、次は木星だね」
サトゥルヌスは壺の次にカバンの方を見ている。そして、驚いている様子。
「どうしたの?」
「これはまた懐かしい物が出てきたもんだ」
そう言ってサトゥルヌスは、カバンを床に置き、思いっきり開いた。
「これはわしが初めて作ったリュック型の無限カバンだ。こうやって地面に置いて、大きめのものを出したり入れたりも簡単にできる。引っかからなければ何でも入る」
どこからか持ってきた折り畳まれたキャンプ用テントを中に入れ、そしてまた出した。
あの有名な物語のポケットは、物の大きさ関係なくあのポケットに吸い込まれるように入ったが、無限カバンは引っかかったら入らないという現実的な部分もあるようだ。
「あはぁ、大きいものまで入っちゃうんだ。普通のカバンとして使おうと思っていたけど、これだったらいろいろと入れてもいいかもね」
「ああ、そうしたらいいと思うぜ」
そう言って折りたたまれたキャンプ用テントを片付けた。
「色んな人に使われたんだろう、かなりボロボロだな。修理するか?」
「破けている所だけ直してくれたら嬉しいかな」
「がってんだぜ」
サトゥルヌスはカバンを取り、どっこいしょと立ち上がってテーブルの上に置いた。そして自分のカバンの中から修理用の箱を取り出し、その中から裁縫セットらしき物を取り出した。
「ちゃちゃっと終わらせるから、その辺りで休んでいるといい」
そう言って、サトゥルヌスはメガネをかけて作業を始めた。
私は邪魔にならないように、外に出た。そして、屋根の上に飛んで乗った。
周囲には建物などは一切無く、辺りは岩ばかりだった。
私は背伸びをして身体をほぐし、そして周囲の気配を探ってみた。
動物の気配が少し感じるが、やはり小動物だけという感じだ。私の目の前の洞穴の上は、たまに爆発している。
そういえば、あのロボットは一体何を運んでいたんだろう。
そう思いながら、私は爆発している所を双眼鏡で見る。どうやら、まだ何かを運んでいるようだ。
「あれはな、爆破してから露出される人間が作った物を回収させているんだ。爆破しても壊れないケースに入っているみたいでな、壊れる心配はない。最初はヘルパーロボに掘らせていたが、爆破の方が早いとわかってからは、ああさせておる。変な呟きをするようになってしまったがの」
サトゥルヌスはガハハと笑う。
「それでサトゥルヌスがいないのに爆発していたんだ。爆破で壊れないケースってすごいね。それって何かに使えないの?」
「それがな、そのケースわしが触ると消えるのだよ。たぶん、わしの役割である『創造物』の管理の能力によるもので、人間が作った物が送られてきた時に傷が付かないようにと保護しているのかもしれんな」
なるほどと頷く。
「それより、ほれ、終わったぞ」
サトゥルヌスから無限カバンを受け取った。
「はやい! ありがとう!」
「このくらい大したことないぜ。また修理したい物とかあったら遠慮なく来てくれ。あと、これがわしの神器だ。紐もつけてあるから、首から下げるといいぜ」
サトゥルヌスはガハハと笑っている。印鑑のようで、『神』という字が彫られていた。
「ありがとう! また来るねー」
私は、サトゥルヌスに手を振りながら空へと飛翔した。
「(次の目的地は木星ね)」
そう思いながら更に上昇した。
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