憂鬱症

九時木

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42 傍観する猫

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 平日が始まり、私はいつも通り仕事をしていた。
 黙々と作業をしているうちに、正午になった。私は大きく伸びをし、気晴らしに公園へ行った。

 天気は快晴で、日差しが肌をぽかぽかと温めた。
 私はベンチでくつろぎながら、しばらくぼんやりと青空を眺めていた。


 そのまま座っていると、視界の隅に何かが映った。
 視線を地面に戻すと、目の前にちょうど猫が通りかかっていた。

 白と茶の模様をした猫だった。猫は少し尻尾が曲がっており、特徴的な見た目をしていた。

 歩く様子をじっと見つめていると、ばたりと目が合った。猫はその瞬間、ぎくりとし、駆け足で私から逃げ去った。

 カモにせよ猫にせよ、動物とは人間をよく恐れるものだった。私は何となく目が離せず、そのまま猫を見送った。

 
 面白いことに、猫は何度も振り向いた。何度振り返っても私と目が合うので、猫は非常に驚いているようだった。

 猫はついに柵の向こう側へと逃げ切ることができたが、その安全地帯に身を置いた後も、何故かこちらをじっと確かめていた。

 私は、何と馬鹿馬鹿しい行為だろうと笑った。


 猫は興味深い動物だった。
 興味があるくせに、こちらに接近して情報を得ようとはせず、遠く安全な所からまじまじと観察することしかしない。

 猫は観察に飽きると、ふいとそっぽを向き、そのまま何処かへ行ってしまう。その半端な関心が、私の腹をよじれさせた。

 人間のように、ことごとく接近し、会話を繰り広げることで仲を深めることはほとんどない。

 ただ見ているだけで、生産的なことは何もしないのだ。私は、猫は実に良い趣味をしているなと心の中で呟いた。


 空を見上げると、一掴みほどの雲が強風で流れていた。
 私は水をくいと飲み、しばらくあの猫のことを考えていた。
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