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51 ドーパミン
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私は夕食後、ハイデガーの『存在と時間』に手を伸ばした。
しばらく放置していたので、少し読み進めたかった。
しかし、早速問題が起こった。ページをぱらぱらとめくってみるが、内容が頭に入らないのだ。
読み始めて数分も経たないうちに気が失せた。
しばらく文字を追っていたが、状況は改善せず、ついに私はその本を机に置いてしまった。
時間潰しに、今度はスマートフォンで情報収集をしてみた。しかし、それもすぐに飽きてしまった。
何か、物事に対する関心がすっかり失われてしまっているようだった。
何を見ても無感動で、心が少しも動かなかった。SNSで他人の投稿をスクロールし、ざっと見てみたが、特に目を引くものはなかった。
私はスマートフォンをベッドに伏せ、天井に視線を移した。
SNSを楽しめない。読書にのめり込めない。まるで全身の神経を取り除かれてしまったようだった。
何に大しても特別な感情が湧かないので、私は途方に暮れた。
「何も楽しいことがない」と考えるうちに、段々と気が塞がれていくのを感じた。
恐らく、脳内でドーパミンが不足しているのかもしれなかった。
刺激を求めているのに、刺激が見当たらない。欲求不満になった私の脳は、閉塞感に苛まれ、あの鬱々とした感情が到来するのを予感した。
私の脳はしばしばドーパミン不足に陥った。それは先天的な症状で、私は通常の脳よりも多くの刺激を必要とした。
多くの刺激を感じなければ、ドーパミンを十分に放出することができないのだ。
生まれつきである以上、何と非効率的な仕組みだろうと悪態をついても、仕方のないことだった。
私はドーパミンを放出するために、様々なことを試してきた。ある時は何十時間も物書きをし、またある時は一日中テレビを眺めていることもあった。
しかし、結果は散々だった。私は食事や睡眠を犠牲にし、1日1食で済ませたり、時には全く眠らない日が何日も続くことがあった。
そのストレスで、さらにドーパミン不足になることもあった。その不足を補うために再び物書きに熱中するなどして、よく悪循環に陥った。
ドーパミン不足については、どうしようもないことだった。結局、私は薬を飲むことで、辛うじて沈鬱感に対処していた。
私は時々、大して絶望していないのに、包丁の先端をじっと見つめていることがあった。
また、ベランダで真下の景色を眺め、ここから落ちればどうなるのだろうかと考えを巡らせることもあった。
要するに、私には、単なる好奇心で死を体験したがる側面があった。
今思えば、それはドーパミン不足を補うためだったのかもしれない。一般に、死は強烈な刺激を与えるものなので、私はそれに期待したのだろう。
私は、命の重さというものをよく理解していなかった。むしろ、命の軽さの方がずっとわかりやすいような気がしていた。
車道に飛び出すだけで死ぬ。海に飛び込むだけで死ぬ。
そこに道徳的規範を持ち込み、死者を弾劾するよりも、命とはそんなものだと思う方が、ずっと楽だった。
人間はドーパミンが不足すると、衝動的になりやすい。その衝動で命を落とすことも、別に珍しいことではないように思えた。
私は、ハイデガーの本やSNSがつまらないという理由で自分が死んだとしても、別におかしくないことだと思った。
つまらない人生は生きるに値しないと、脳が言っているのなら仕方のないことだった。
だから、本当はこの退屈な感情に途方に暮れる必要もなかった。
私の中では、よくあることなのだ。私はそれ以上は言及しないことにし、ゆっくりとまぶたを閉じた。
視界には、薄暗闇が広がっていた。その暗闇ほど、今の私に満足感をもたらしてくれるものはなかった。
しばらく放置していたので、少し読み進めたかった。
しかし、早速問題が起こった。ページをぱらぱらとめくってみるが、内容が頭に入らないのだ。
読み始めて数分も経たないうちに気が失せた。
しばらく文字を追っていたが、状況は改善せず、ついに私はその本を机に置いてしまった。
時間潰しに、今度はスマートフォンで情報収集をしてみた。しかし、それもすぐに飽きてしまった。
何か、物事に対する関心がすっかり失われてしまっているようだった。
何を見ても無感動で、心が少しも動かなかった。SNSで他人の投稿をスクロールし、ざっと見てみたが、特に目を引くものはなかった。
私はスマートフォンをベッドに伏せ、天井に視線を移した。
SNSを楽しめない。読書にのめり込めない。まるで全身の神経を取り除かれてしまったようだった。
何に大しても特別な感情が湧かないので、私は途方に暮れた。
「何も楽しいことがない」と考えるうちに、段々と気が塞がれていくのを感じた。
恐らく、脳内でドーパミンが不足しているのかもしれなかった。
刺激を求めているのに、刺激が見当たらない。欲求不満になった私の脳は、閉塞感に苛まれ、あの鬱々とした感情が到来するのを予感した。
私の脳はしばしばドーパミン不足に陥った。それは先天的な症状で、私は通常の脳よりも多くの刺激を必要とした。
多くの刺激を感じなければ、ドーパミンを十分に放出することができないのだ。
生まれつきである以上、何と非効率的な仕組みだろうと悪態をついても、仕方のないことだった。
私はドーパミンを放出するために、様々なことを試してきた。ある時は何十時間も物書きをし、またある時は一日中テレビを眺めていることもあった。
しかし、結果は散々だった。私は食事や睡眠を犠牲にし、1日1食で済ませたり、時には全く眠らない日が何日も続くことがあった。
そのストレスで、さらにドーパミン不足になることもあった。その不足を補うために再び物書きに熱中するなどして、よく悪循環に陥った。
ドーパミン不足については、どうしようもないことだった。結局、私は薬を飲むことで、辛うじて沈鬱感に対処していた。
私は時々、大して絶望していないのに、包丁の先端をじっと見つめていることがあった。
また、ベランダで真下の景色を眺め、ここから落ちればどうなるのだろうかと考えを巡らせることもあった。
要するに、私には、単なる好奇心で死を体験したがる側面があった。
今思えば、それはドーパミン不足を補うためだったのかもしれない。一般に、死は強烈な刺激を与えるものなので、私はそれに期待したのだろう。
私は、命の重さというものをよく理解していなかった。むしろ、命の軽さの方がずっとわかりやすいような気がしていた。
車道に飛び出すだけで死ぬ。海に飛び込むだけで死ぬ。
そこに道徳的規範を持ち込み、死者を弾劾するよりも、命とはそんなものだと思う方が、ずっと楽だった。
人間はドーパミンが不足すると、衝動的になりやすい。その衝動で命を落とすことも、別に珍しいことではないように思えた。
私は、ハイデガーの本やSNSがつまらないという理由で自分が死んだとしても、別におかしくないことだと思った。
つまらない人生は生きるに値しないと、脳が言っているのなら仕方のないことだった。
だから、本当はこの退屈な感情に途方に暮れる必要もなかった。
私の中では、よくあることなのだ。私はそれ以上は言及しないことにし、ゆっくりとまぶたを閉じた。
視界には、薄暗闇が広がっていた。その暗闇ほど、今の私に満足感をもたらしてくれるものはなかった。
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