憂鬱症

53 休日の過ごし方

　正午を過ぎた頃、私はいつもの銭湯へ向かっていた。
　銭湯はがら空きだった。ロッカー室には誰もおらず、中はいても数人くらいだった。

　まるで貸し切り状態のようだった。誰もいないロッカー室で、私は適当に鼻歌を歌いながら入浴の準備をした。


　入浴後、私は腹が減ったので、食堂に向かった。
　朝はバナナ1本だったので、腹に余裕があった。私は生姜焼き定食を頼み、油ののった豚肉をゆっくりとつまんでいた。

　肉の味付けは濃く、それが私に満足感を与えた。
　私は以前の唐揚げ定食でそうしたように、昼食を丸1時間かけて完食した。


　前日に風呂に入っておらず、また朝食もバナナだけで済ませたせいか、全てが身に染みた。

　平日の殺伐とした感情を洗い流し、汚れきった心を浄化する。
　私は何となく、休日らしい過ごし方をしているような気がした。

　私は休憩室で、だだっ広い畳に寝そべった。畳はひんやりと冷たく、それが心地良かった。

　仰向けになりながら、私は天井をぼんやりと眺めた。天井には細やかな木目が縦上に引き伸ばされており、私にはそれが美しく感じられた。


　銭湯の居心地の良さは、まるで家のようだった。もしかすれば、家よりもくつろげる場所かもしれなかった。

　「死にたい」という憂鬱感は、何処にもなかった。しかし、明日になればすぐに元通りになることもわかっていた。

　この時間が一時のものだと思うと、何だか虚しくなった。私は寝返りを打ち、ふてくされたように目をつむった。

　目をつむると、柔らかな眠気に包まれた。私は畳の香りを嗅ぎながら、明日に反抗するように、しばらく横になっていた。