憂鬱症

九時木

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158 19時間テレビ視聴

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 その日はひどい一日だった。
 私は19時間に渡ってテレビを視聴し続け、極度の睡眠不足になっていた。


 私はいつも通り朝に起き、午前8時にテレビを見始めた。

 その後、画面から目が離せなくなり、私はぶっ通しで翌日の深夜3時頃まで見続けていた。

 ベッドに肘をつき、ずっと同じ姿勢をしていたせいか、気がつけば肘が擦りむけていた。

 翌日の朝頃に風呂に入った頃、妙なひりつきを感じ、その時に軽く怪我をしたのだと気がついた。


 以前の6時間に渡るテレビ視聴より、明らかに悪化していた。

 私は前日の午前3時に朝食を食べて以降、テレビに釘付けのあまり、午後8時半まで何も食べていなかった。

 その時間になって、ようやく空腹に気がついたのか、私はデリバリーを頼み、胃に詰め込むように夕食を摂った。

 食事中も、テレビに目が離せなかった。私は夕食を貪りながら、ひたすらグルメ番組やバラエティ番組を見ていた。


 長く目を駆使したせいか、目にゴミがたくさん入った。
 私は目が筋肉の緊張で固まっていくのを感じながら、その後もテレビを見続けていた。

 結局、私は午前3時まで、スポーツ番組やニュースを見続けながら、嫌というほど繰り返された政治問題や花粉情報を頭に焼き付けていた。


 何故こんなにもテレビを見たがるのか、私にはよくわからなかった。

 テレビは特別面白いわけではなかったし、何時間も見るようなものでもなかった。

 それなのに、まるで我でも忘れたかのようにテレビを見続ける。

 その日は仕事があったはずなのだが、私は結局出勤できず、丸1日休むことになってしまった。

 どう考えても主治医に診てもらうべきであり、正に今日こそ診察日なのだが、睡眠不足で立ち上がることができない。

 案の定というべきか、私はベッドの上でぐったりとし、目の奥が焼き付けられるような感覚に耐え忍ぶだけだった。


 振り返ってみると、私はやはり行動依存に陥っているようだった。

 テレビの内容を楽しむというより、テレビを見る行動そのものを「せずにはいられないもの」と見ている。

 1度はまりだすと、なかなか抜け出せない。そうは言っても限度があるはずなのだが、私の体はそれを知らない。

 何も19時間テレビを見る必要はないのに、まるで狂ったかのようにそれを見続ける。


 私は途中、別に退屈を感じないわけではなかった。

 だが、退屈を感じていても、「まだこれから面白くなる見込みはある」と謎めいた希望を抱き、結局そのままテレビを見続けていた。

 私の多動性ないし過集中を和らげる精神薬は、本当に効果があるのだろうか。そう疑うほどに、先天性疾患の症状が一向に治らない。

 薬では限界があるのかもしれない。ドーパミンの分泌が上手くいかないから、行動依存に陥ってしまうのだが、あまりにも過集中が強力すぎている。

 やはり主治医に薬を増量してもらうか、認知行動療法といった他の手段で改善してみるしかないのだろう。


 ところで、私の頭の中では、まだテレビ映像が渦巻いていた。
 その発作を恐れるべきなのだろうが、その恐怖の感覚が鈍ってしまい、私はまたリモコンを手にしようとしている。

 何だかうんざりし、私はリモコンを床に向かって放り投げた。
 リモコンは鈍い音を立て、次に電池が外れたような音を響かせた。

 最悪、テレビを売るしかないのかもしれない。そんな考えが私の中でふとひらめいたが、疲れ果てた今は行動するのも面倒だった。

 私は目を閉じ、眠りにつこうとした。

 寝付けるまで1時間ほどがかったが、ようやく体が疲労を感じ、午前9時頃、私はついに再度眠ることができるのだった。
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