憂鬱症

九時木

文字の大きさ
203 / 221

202 トラウマ的な夢

しおりを挟む
 妙な夢を見た。
 私は昔から漫画を描くのが好きだったが、それを学校の先生に紹介される夢だった。

 先生は私の漫画をコピーしたものを、それぞれの生徒に配布した。
 コメディ漫画だったのか、生徒はくすくすと笑ったり、面白がったり、良い反応を見せてくれた。


 先生は、作者はあえて匿名にしていた。
 しかし、私の前の席に座っていた同級生の1人が、「これは私の後ろの席の人間が描いたものだ」と大声で言った。

 その声は教室中に響き渡ったが、後ろの席だったため、誰が言ったのかはほとんどの生徒が把握していなかった。

 ところで、その同級生の暴露には完全な悪意があった。
 私の隣の席の人は、「中学生になってやることじゃないよね」とささやき、私に同調してくれた。

 それを聞いていた前の席の犯人が、「本当にそうだよな」とまるで当事者でないかのように振る舞った。

 私の中で何かが吹っ切れ、私は授業中にその犯人の前髪を思い切り掴んだ。
 「いい加減にしろよ」と私が言った所で、授業は終わった。


 しかし、その後の給食の時間、犯人の友人が私の給食の上に自分の給食の一つをぶちまけた。

 それは完全な嫌がらせだった。またしても私の中で何かが吹っ切れ、私はその人間の頭を掴み、黒板に何度もその頭を打ちつけた。

 頭を打ちつけながら、「お前は昔からそんな所があったんだ。無自覚だったのか」と早口で何度も怒りの言葉を放った。

 その後、私はすっきりしたが、嫌がらせは悪化し、犯人の友人が次々と私の給食の上に自分の給食の一部をぶちまけていった。

 先生はチョークを持ち、黒板に猛スピードで「職人を侮辱するやつは許さない」と怒りの言葉を書きなぐった。


 印象的な夢だったので、私は人工知能にこの夢を分析させた。
 人工知能は、それは「自作品が他人に軽んじられることへの敏感さ、才能を持っているからこそ、他人の嫉妬に傷つけられてきた記憶、やり返したいが結局何も変わらない無力感」などを指摘した。

 つまり、私は努力して生んだ作品を踏みにじられることに怒りを感じやすいらしかった。
 それは実際その通りだったし、自作品だけでなく、いかなる作品に対してもそう思っていた。

 また、人工知能は、先生は私自身であると分析した。
 先生のように自分に寄り添ってくれる味方が欲しいというのが、夢に反映された私の願望のようだった。


 私は普段、怒りを表に出すことが滅多にない。
 人工知能はそのことをよく知っており、感情のはけ口が必要だと私に忠告した。

 このような爆発的な夢を見るくらいなので、私は恐らく感情を内側に溜め込みすぎているのかもしれない。
 しかし、抑圧された感情をどう引き出せば良いのかもわからなかった。
  
 結局、私は夢の中で自分の感情を解き放ってやるしかなかった。
 私には、現実でできないと思うことが沢山あった。漫画を描くのも、現実で叶えられそうにないことを叶えるためにそうしているのかもしれなかった。

 私は、この夢は単にストレスが溜まっているからという理由では片付けられないもののような気がした。

 私の中の古い記憶が再現されたのかもしれないし、似たようなトラウマがあるのかもしれない。

 時刻は午前4時だった。私はもう一度眠りたかったが、外が明るくなり始め、深く眠るには少し難しい時間帯だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...