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精神疾患の治療方法は、医師の方針によって異なる。
精神疾患は、心臓病や腎臓病のように器質的な異常のみが関係しているわけではない。そのため、アプローチも医師によって変わる。
医師には、薬物療法を主とし、投薬によって患者の精神状態をコントロールしようとする者も多い。
実際、カウンセラーのように患者自身が問題解決するのを助けるよりも、精神科医は淡々と薬を処方していた方が良いという意見もある。
その意見には、患者が精神科医に依存するのを防ぐため、あるいは逆に精神科医が疲弊しないためなど、様々な理由がある。
適宜処方することは、確かに症状の緩和を助ける。しかし、それだけで根本的な解決が果たせるのか?
患者の中には、薬物療法に頼りきりの医師に対して不信感を覚える者もいる。
彼らが求めているのは、科学的な対処法よりも、もっと素朴で根源的な人間関係なのではないか。診察を重ねているうちに、私はそのような直観を得るようになっていた。
それでも、もし患者と親密な関係を築き、その関係が患者の自立を妨げるのであれば、その真実らしき直観には従えない。
何にせよ、患者に対してどこまで介入すべきで、またどこまでそうするべきでないのかというのは、どの精神科医にとっても大きな問題なのだろう。
別の日、私がaの病室を訪れると、彼女は窓越しに景色を眺めていた。
窓の縁に両手を置き、深い物思いにふけっているような様子だったので、私はその場で立ち止まった。
私の気配に気がついた彼女は、外に視線を留めたまま、私に話しかけた。
「犬が浜辺で、無邪気に走り回っているんです」
彼女の視線の先には、確かに砂を蹴っている大型犬がいた。
白く艶やかそうな毛並みの犬は、リードをあちこちに引きずり回し、放し飼いにされているようだった。
「ラブラドール・レトリバーでしょうか。飼い主の方が、近くで見守っていますね」
aの微笑が、夕焼け色に染まっていた。
午後5時過ぎの海は閑散としており、例の飼い主と犬の他には姿が見当たらなかった。
「なんだか懐かしい景色です」彼女は優しげな目で外を見つめ、静かに話した。
「海が好きなのかい」私はカルテを脇に挟み、彼女に視線を移す。
「海はもちろんですが」aは動き回るその対象を追いながら、答えた。
「元気に走り回る犬を見ていると、色々な気持ちが湧いてきます」
aは小さな背を私に向けたまま、そっと呟いた。
「……リコ」
「リコ?」私の問い返しに、彼女は小さく笑った。
「昔飼っていた犬の名前です。
多分、私が2、3歳の頃でした。これは両親から聞いた話なんですが、リコの名前を聞くと、私はよく泣いていたそうです。
『リコはどこにいるの?どこに行っちゃったの?』って」
外の犬が飼い主のもとへ駆けつけていく様子を、aが眺めている。
私が続きを待っていると、彼女はゆっくりと口を開いた。
「リコは父が讓渡でもらってきたやんちゃな犬で、走り回ったり泳ぎ回ったりするのが大好きなゴールデン・レトリバーでした。
正直、私は詳しい記憶がないのですが……。でも、庭の小屋で眠っていたり、ペロペロとお皿の水を舐めていたのは、何となく覚えています。
記憶って、不思議ですよね。何処どこに行ったとか誰々に会ったとか、重要な情報は全然覚えていないのに、あまり重要でなさそうな、断片的なものは残っている。
あ、それでもリコがお皿を舐めている姿は、きちんと写真を撮ってあるんですよ。リコの様子を、私が目の前でじっと眺めている所も」
弾みがついたのか、aは少し嬉しそうに話していた。
彼女の背後で、飼い主と犬が海を離れていく。外は日が沈み、街灯がちらほらとつき始めていた。
「それで、リコについてなんですが……」
長い間を置いてから、彼女はその記憶を打ち明けた。
「ある日、突然死んでしまいました。
病気じゃないです。その日、家族みんなで旅行のため遠出をしていたんですが、リコは連れていけなくて。
リコは庭でリードをつながれたまま、留守番していました。
でも、それが耐えられなくなったのでしょう。リコはリードを引っ張って、自分よりも高い柵を無理矢理乗り越えようとして。
そのまま、リードが柵に引っかかって、首を吊ってしまいました。
これは全部、両親から聞いたことです。なにせ私は小さかったので、覚えているはずがありません」
空が暗くなり、彼女の顔に陰りがかかる。
病室はしんと静まり返り、空気は冷たい。私は肌にやすりが通ったかのような、僅かな痛みを感じた。
「この話を思い出していると、時々、こんなことを思うんです」暗い眼差しで海を見下ろしながら、彼女は呟いた。
「私の悲嘆に暮れやすい、悲観しやすい性格は、全てその出来事に由来しているのではないかと。
実際は、それだけではないのでしょうが、それでもよく、こんなことが言われますよね。
幼少期の経験は、たとえ無意識に対してであれ、その後の人生に大きな影響を与えると」
彼女のトーンは、強い意思をもって話しているというよりも、ごく自動的に話しているような、そのような無機質な印象を与えた。
aは微かに憂いの表情を浮かべながら、とりとめもなく話し続けた。
「私の家族は、よく動物を飼っていました。特に母は面倒見がよく、慣れていないことに苦労しながらも、丁寧に世話をしていました。
母の家は、あまり動物を歓迎していなかったそうなので、はじめはペットに戸惑うことも多かったようですが……。
それでも動物と過ごすのが好きで、リコについても、母が一番よく世話をしているほどでした。
「反対に、父はあまり世話をしなくて……」彼女が苦笑いしながら、話を続ける。
「特に猫については、こちらが驚くほど苦手でした。
とはいっても、父の家は動物をよく飼っている方で、昔は猫がたくさんいたそうです。
父も、当時は猫と触れ合っていたみたいで、特に自分に懐いてくれた1匹の猫には、特別な愛情を注いでいたとか。
でも、その猫は犬に噛まれて、死んでしまったそうです。その出来事が父にはショッキングで、反対に猫嫌いになるほどになってしまったのかもしれません。
どれだけ愛情を注いだとしても、それがいつかは失われてしまうのならば、むしろ無関心でいる方がましだとさえ思ってしまうものなのでしょうか」
自問のような響き。彼女の話しぶりは、まるで自身が今病室にはいないかのようで、深い記憶の中に潜り込んでいるようだった。
彼女は深く息を吐き、海の暗がりをまっすぐに見つめた。
「もし父がそのような心境であれば、私は少しばかり肯けます。
さっき言ったように、私の家は動物をよく飼っていました。何世代にもわたって動物を飼うということは、それだけ出会いと別れを経験するいうことです。
犬も猫も愛嬌があって、時には机の上をぐちゃぐちゃにしてしまいますが、それでも何年も一緒に暮らしていれば、どうしても憎めない存在になっていきます。
でも、そんな動物もいつかは死ぬもので、その上人間よりもずっと早く死んでしまうものです。
川や海で一緒に散歩したことや、バーベキューで犬にこっそり焼肉の欠片を与えたこと。
そんな楽しい思い出も、いつかは終わりを迎えてしまうのだという諦めのような感情が、動物を長く飼えば飼うほど、心の奥底に沈み込むようになる。
良くも悪くも、命の儚さを悟ってしまう。だから動物と接する時は、いつも嬉しさと虚しさがごちゃ混ぜになるんです」
aは手の上に手を重ね、自身の手の甲をそっと包み込んだ。
つらい記憶をしまい込むかのような、また自分自身を静かに慰めるかのような仕草に、私はじっと見入っていた。
「強い信頼の置ける存在に対して、無邪気な子どものように、『もう何処にもいかないでほしい』と訴えることができれば、少しは気が楽になるのでしょう。
でも私の知る限り、擦り切れた心が呟くのは、それほど感傷的ではありません。
実際の言葉は、それよりもはるかに冷たく残酷で、とても示しがつかないものです」
「罪深いですよね、こんな感情を抱くのは」外の闇を吸い込んだかのような、彼女の黒い眼差しが、こちらをじっと見据えていた。
頭の中で、私は言葉の引き出しを開けていた。
色々と探ってみたが、何一つふさわしい言葉が見当たらず、私は結局沈黙した。
私のような精神科医に、真の意味で彼女を理解することはできるのか?そのような疑問が、広大な海に放り出された舟のように、ぽつりと浮かんだ。
「ところで、先生は動物を飼ったことがありますか?」その場で立ちすくんでいた私に、aが様子を伺うようにして声をかける。
ふと我に返った私は、少し声を抑えて答えた。
「……小さい頃に、猫を1匹」
「その猫は、どんな子でしたか?」
「そうだな」私は何かを話そうとしたが、やはり言葉が出ず、口をつぐんだ。
「どんな子だったかな」
精神疾患は、心臓病や腎臓病のように器質的な異常のみが関係しているわけではない。そのため、アプローチも医師によって変わる。
医師には、薬物療法を主とし、投薬によって患者の精神状態をコントロールしようとする者も多い。
実際、カウンセラーのように患者自身が問題解決するのを助けるよりも、精神科医は淡々と薬を処方していた方が良いという意見もある。
その意見には、患者が精神科医に依存するのを防ぐため、あるいは逆に精神科医が疲弊しないためなど、様々な理由がある。
適宜処方することは、確かに症状の緩和を助ける。しかし、それだけで根本的な解決が果たせるのか?
患者の中には、薬物療法に頼りきりの医師に対して不信感を覚える者もいる。
彼らが求めているのは、科学的な対処法よりも、もっと素朴で根源的な人間関係なのではないか。診察を重ねているうちに、私はそのような直観を得るようになっていた。
それでも、もし患者と親密な関係を築き、その関係が患者の自立を妨げるのであれば、その真実らしき直観には従えない。
何にせよ、患者に対してどこまで介入すべきで、またどこまでそうするべきでないのかというのは、どの精神科医にとっても大きな問題なのだろう。
別の日、私がaの病室を訪れると、彼女は窓越しに景色を眺めていた。
窓の縁に両手を置き、深い物思いにふけっているような様子だったので、私はその場で立ち止まった。
私の気配に気がついた彼女は、外に視線を留めたまま、私に話しかけた。
「犬が浜辺で、無邪気に走り回っているんです」
彼女の視線の先には、確かに砂を蹴っている大型犬がいた。
白く艶やかそうな毛並みの犬は、リードをあちこちに引きずり回し、放し飼いにされているようだった。
「ラブラドール・レトリバーでしょうか。飼い主の方が、近くで見守っていますね」
aの微笑が、夕焼け色に染まっていた。
午後5時過ぎの海は閑散としており、例の飼い主と犬の他には姿が見当たらなかった。
「なんだか懐かしい景色です」彼女は優しげな目で外を見つめ、静かに話した。
「海が好きなのかい」私はカルテを脇に挟み、彼女に視線を移す。
「海はもちろんですが」aは動き回るその対象を追いながら、答えた。
「元気に走り回る犬を見ていると、色々な気持ちが湧いてきます」
aは小さな背を私に向けたまま、そっと呟いた。
「……リコ」
「リコ?」私の問い返しに、彼女は小さく笑った。
「昔飼っていた犬の名前です。
多分、私が2、3歳の頃でした。これは両親から聞いた話なんですが、リコの名前を聞くと、私はよく泣いていたそうです。
『リコはどこにいるの?どこに行っちゃったの?』って」
外の犬が飼い主のもとへ駆けつけていく様子を、aが眺めている。
私が続きを待っていると、彼女はゆっくりと口を開いた。
「リコは父が讓渡でもらってきたやんちゃな犬で、走り回ったり泳ぎ回ったりするのが大好きなゴールデン・レトリバーでした。
正直、私は詳しい記憶がないのですが……。でも、庭の小屋で眠っていたり、ペロペロとお皿の水を舐めていたのは、何となく覚えています。
記憶って、不思議ですよね。何処どこに行ったとか誰々に会ったとか、重要な情報は全然覚えていないのに、あまり重要でなさそうな、断片的なものは残っている。
あ、それでもリコがお皿を舐めている姿は、きちんと写真を撮ってあるんですよ。リコの様子を、私が目の前でじっと眺めている所も」
弾みがついたのか、aは少し嬉しそうに話していた。
彼女の背後で、飼い主と犬が海を離れていく。外は日が沈み、街灯がちらほらとつき始めていた。
「それで、リコについてなんですが……」
長い間を置いてから、彼女はその記憶を打ち明けた。
「ある日、突然死んでしまいました。
病気じゃないです。その日、家族みんなで旅行のため遠出をしていたんですが、リコは連れていけなくて。
リコは庭でリードをつながれたまま、留守番していました。
でも、それが耐えられなくなったのでしょう。リコはリードを引っ張って、自分よりも高い柵を無理矢理乗り越えようとして。
そのまま、リードが柵に引っかかって、首を吊ってしまいました。
これは全部、両親から聞いたことです。なにせ私は小さかったので、覚えているはずがありません」
空が暗くなり、彼女の顔に陰りがかかる。
病室はしんと静まり返り、空気は冷たい。私は肌にやすりが通ったかのような、僅かな痛みを感じた。
「この話を思い出していると、時々、こんなことを思うんです」暗い眼差しで海を見下ろしながら、彼女は呟いた。
「私の悲嘆に暮れやすい、悲観しやすい性格は、全てその出来事に由来しているのではないかと。
実際は、それだけではないのでしょうが、それでもよく、こんなことが言われますよね。
幼少期の経験は、たとえ無意識に対してであれ、その後の人生に大きな影響を与えると」
彼女のトーンは、強い意思をもって話しているというよりも、ごく自動的に話しているような、そのような無機質な印象を与えた。
aは微かに憂いの表情を浮かべながら、とりとめもなく話し続けた。
「私の家族は、よく動物を飼っていました。特に母は面倒見がよく、慣れていないことに苦労しながらも、丁寧に世話をしていました。
母の家は、あまり動物を歓迎していなかったそうなので、はじめはペットに戸惑うことも多かったようですが……。
それでも動物と過ごすのが好きで、リコについても、母が一番よく世話をしているほどでした。
「反対に、父はあまり世話をしなくて……」彼女が苦笑いしながら、話を続ける。
「特に猫については、こちらが驚くほど苦手でした。
とはいっても、父の家は動物をよく飼っている方で、昔は猫がたくさんいたそうです。
父も、当時は猫と触れ合っていたみたいで、特に自分に懐いてくれた1匹の猫には、特別な愛情を注いでいたとか。
でも、その猫は犬に噛まれて、死んでしまったそうです。その出来事が父にはショッキングで、反対に猫嫌いになるほどになってしまったのかもしれません。
どれだけ愛情を注いだとしても、それがいつかは失われてしまうのならば、むしろ無関心でいる方がましだとさえ思ってしまうものなのでしょうか」
自問のような響き。彼女の話しぶりは、まるで自身が今病室にはいないかのようで、深い記憶の中に潜り込んでいるようだった。
彼女は深く息を吐き、海の暗がりをまっすぐに見つめた。
「もし父がそのような心境であれば、私は少しばかり肯けます。
さっき言ったように、私の家は動物をよく飼っていました。何世代にもわたって動物を飼うということは、それだけ出会いと別れを経験するいうことです。
犬も猫も愛嬌があって、時には机の上をぐちゃぐちゃにしてしまいますが、それでも何年も一緒に暮らしていれば、どうしても憎めない存在になっていきます。
でも、そんな動物もいつかは死ぬもので、その上人間よりもずっと早く死んでしまうものです。
川や海で一緒に散歩したことや、バーベキューで犬にこっそり焼肉の欠片を与えたこと。
そんな楽しい思い出も、いつかは終わりを迎えてしまうのだという諦めのような感情が、動物を長く飼えば飼うほど、心の奥底に沈み込むようになる。
良くも悪くも、命の儚さを悟ってしまう。だから動物と接する時は、いつも嬉しさと虚しさがごちゃ混ぜになるんです」
aは手の上に手を重ね、自身の手の甲をそっと包み込んだ。
つらい記憶をしまい込むかのような、また自分自身を静かに慰めるかのような仕草に、私はじっと見入っていた。
「強い信頼の置ける存在に対して、無邪気な子どものように、『もう何処にもいかないでほしい』と訴えることができれば、少しは気が楽になるのでしょう。
でも私の知る限り、擦り切れた心が呟くのは、それほど感傷的ではありません。
実際の言葉は、それよりもはるかに冷たく残酷で、とても示しがつかないものです」
「罪深いですよね、こんな感情を抱くのは」外の闇を吸い込んだかのような、彼女の黒い眼差しが、こちらをじっと見据えていた。
頭の中で、私は言葉の引き出しを開けていた。
色々と探ってみたが、何一つふさわしい言葉が見当たらず、私は結局沈黙した。
私のような精神科医に、真の意味で彼女を理解することはできるのか?そのような疑問が、広大な海に放り出された舟のように、ぽつりと浮かんだ。
「ところで、先生は動物を飼ったことがありますか?」その場で立ちすくんでいた私に、aが様子を伺うようにして声をかける。
ふと我に返った私は、少し声を抑えて答えた。
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