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aの布団の上には、相変わらず何冊もの本が散らばっている。
彼女は仰向けのまま、本から目を離し、窓越しに景色を眺めていた。
伏せられた本たちには、年季が入っているようだった。どの本も新品のような輝きはなく、所々日焼けしている。
私が本に目を落としていると、彼女がその視線に気がついたのか、何気ないトーンで尋ねた。
「ところで、先生は自分がどんな経緯で本を読むようになったのか覚えていますか?」
見据えるような目が私を捉える。私は記憶をたどりながら、少し曖昧に答えた。
「どうだったかな。実家に本が多かったから、それがきっかけで読み始めたような気もするけれど。
君の方は、どんなきっかけで本を?」
私の問いを確かめるようにして、aがじっとこちらを見つめる。
深い沈黙の後、彼女は頭の中の本を一つ開け、それを朗読するようにして話し始めた。
「いつも本ばかり読んでいる私ですが、幼い頃から読書をしていたわけではありません。
家に本棚がずらりと並べられていて、片っ端から全て読み漁る。あるいは小中学校の図書館で好きな本に読みふける。そんな生粋の読書家ではなかったんです」
彼女が小さな笑みを浮かべる。大事にしまっておいた宝箱に鍵を差し込み、目の前で静かに蓋を開けるような、そんな何処か愛嬌を感じさせるような笑みだった。
「私が本格的に本を読み始めたのは、大学生になってからでした。
大学では、試験や卒業論文のために色々な本を読まなければなりませんよね。
だから、はじめは専門書に手をつけました。ゼミの先生が本をたくさん読めと言ったから読んだというのもあります。
いずれにせよ、自主的な動機ではありません。そうしなければならない環境に置かれたから、読書をしただけのことです」
「でも……」と彼女が遠くを眺めるように、天井を見上げる。
「本って不思議ですよね。読んでいるうちに、もっと知りたいという気持ちになって、次々と読み始める。
その本だけでは説明しきれない部分を、他の本が補ってくれる。そうして数珠繋ぎのようになって、結果的には色々な本を読むことになる。
絶妙に知的好奇心がくすぐられるんです。気がつけば課題図書でも何でもない、単なる興味で読み始めた本も、机の上に置かれている。
フロイトに、ニーチェに、ハイデガー。時にはシオランやフーコーの本も、少しだけ読んだりして。
人間は天使と悪魔の声に振り回されているとか、弱者みたいにいじけるなとか、みんな本の中で好き放題言ってのけるんですよ。
……先生には以前、私が英米文学専攻であることをお伝えしましたよね。でも、私がはじめに興味を持ったのは、西洋哲学でした。
ドイツとかフランスとか、その辺りの哲学です。もちろん論文用の本は読みましたが、本当に興味があったのはその分野でした。
堅苦しいと思われるかもしれません。でも、理由はわからないけれど、何となく哲学には夢中になれたんです」
aは夢中になり、嬉しそうに話していた。
天井にありとあらゆる思想が広げられているかのように、彼女はその場所を見つめ、明るく笑っていた。
「平日から休日まで、夜遅くまで図書館にこもっているのは、神経を使うけれど楽しかった。
閉館前になると、空腹でお腹が鳴っちゃうんですよね。静まり返った室内にその音が響き渡らないか、密かに怯えてもいました。
でも、夜の大学は街灯が灯っていて、すごく綺麗なんですよ。冷たい空気の中、寂しげな虫の鳴き声を聞きながら家に帰る。
自分だけの、ささやかな幸福の時間です。たくさんの本を抱え、日中もこんなに静かであれば良いのにと願いながら、穏やかな一日を終える。
業務のようだった読書が、今や私の生活の一部になっている。そこではじめて、私は本が好きなのだとわかりました」
布団の上に散らばった数々の本と、一つの笑顔。彼女はまるで部屋の玩具をあちこちに散らかし、無邪気に笑う子どものようだった。
彼女の顔に心からの幸福がにじみ出ている。相手の話を聴きながら、私は心の中でそう呟いた。
「それで?」私は続きを促すように、穏やかに微笑む。
彼女は遊びの許可を得た子のように、目を輝かせ、話を続けた。
「それからは、水を得た魚のように、さらに色々な本を読むようになりました。
今まで行くはずもなかった書店や図書館に興味が湧いて、そこで何か面白い本がないかと探し回るようになったんです。
それで、専門書だけでなく、小説にも出会うことになって。最初に読んだ小説は、カミュの『ペスト』。長編小説を読むようになったきっかけは、ドストエフスキーの『罪と罰』でした。
どちらも読むのに時間がかかりましたが、2つの本は、小説の前に立ちはだかる固い扉を壊してくれたような気がします。
禍いの中で、息も絶え絶えに足掻く人々。罪悪感に囚われ続け、頭を抱える一人の青年。
どちらも海の向こうの作家なのに、どうしてこうも私を考えさせたり悲しませたりできるのでしょうね。
それが不思議で仕方なくて、気がついたら海の向こうの作家のことばかり考えていた。
彼らが生きている時代に、彼らと一度でも会えていたら良かったのに……。
これは、勝手な期待かもしれません。でも憧れの人に対して、その人となりを少しでも近くで感じられたらと思うのは、そんなに珍しくないことでしょう?」
aの口調には、弁護の気配もなければ、説得の気配もない。ただ純粋な感情が姿を現しているようだった。
私は少し驚いた。普段の彼女からはあまり聞くことがないような言葉が、目の前で次々と流れ出たからだった。
一人静かな空間で暮らす彼女が、誰かに興味を持ち、憧れの感情すら抱いている。
それも躊躇いがちにではなく、堂々とした話しぶりで。2人の作家への憧れは、一種の揺るぎない自信のようで、彼女はそれを誇りにさえ思っているようだった。
「ひとたびその本が好きになると、その作家が書く他の本も読みたくなってしまうんです。
気がつけば、数ヶ月も同じ作家の本を読んでいる。
少し奇妙に映るかもしれませんが、ただ知りたいという思いに駆られているんです。
その人の一生を知ろうと、ただ一人の命が何を感じ何を訴えようとしているのかを、噛み締めるようにして読み進める。
悲劇の後ろには痛みがあり、諧謔の後ろには憐れみがある。
後ろにあるもの、またその後ろにあるものを突き詰めて、その人の中心で轟々と渦巻くものを感じ取る。
傲慢かもしれませんが、そうすることで、その人の『何か』に少しだけ触れられたような気がしてきて……。
今の自分があまりにも抽象的なことを言っているのは、わかります。でも、知ろうとすることは、より抽象的なものに近づいていくことではないかと、そうも思えるんです」
aの声は熱っぽく、しだいに詩的な抑揚がつくようになっていた。
彼女の頬は少し火照り、やや興奮しているように見えた。
「だから……」と次の言葉を放ちかけた所で、彼女が口をつぐむ。
「だから?」
私は彼女を見る。彼女は私を凝視する。
自身の体温と弾む呼吸に気がついたのか、aははと我に返り、突き刺されたかのように顔を歪ませた。
言葉を詰まらせ、目を泳がせ、胸のざわめきをあらわにする。
突如、ひどい苦しみに襲われたかのようだった。何かの発作を予期した私は、彼女のもとへ近寄り、声をかけようとした。
しかし、高ぶりはすぐに収まった。彼女の視線は天井の一点に集中し、ざらついた軽蔑の眼差しをそこへ向けた。
固い沈黙の中で、彼女の視線は目に見えるように重く鋭かった。
『君は本について、深い洞察を持っているようだが……。』
私は彼女に対し、そのような声かけをしたのかもしれない。
励ましなのか支援なのか、何のための一言なのか。自分から発せられた言葉にも関わらず、その意味するところはよくわからなかった。
しかし、そのような声かけも、彼女の耳には何一つ届いていないようだった。
長い沈黙が居座っていた。静まり返った病室で、彼女はただ糸を断ち切るかのような冷たい視線で、天井を睨み続けていた。
「何処か具合が悪いのかい?」
私は彼女にそっと話しかけたが、彼女は何も返事をしなかった。
彼女は大きな罪を目の当たりにしたかのように、虚空に非難の顔を向け、両手で布団をきつく握りしめた。
強い怒りが、彼女の手の中に込められているようだった。私は長いことその怒りについて考えてみたが、はっきりと理解できるものはついに見当たらなかった。
彼女は仰向けのまま、本から目を離し、窓越しに景色を眺めていた。
伏せられた本たちには、年季が入っているようだった。どの本も新品のような輝きはなく、所々日焼けしている。
私が本に目を落としていると、彼女がその視線に気がついたのか、何気ないトーンで尋ねた。
「ところで、先生は自分がどんな経緯で本を読むようになったのか覚えていますか?」
見据えるような目が私を捉える。私は記憶をたどりながら、少し曖昧に答えた。
「どうだったかな。実家に本が多かったから、それがきっかけで読み始めたような気もするけれど。
君の方は、どんなきっかけで本を?」
私の問いを確かめるようにして、aがじっとこちらを見つめる。
深い沈黙の後、彼女は頭の中の本を一つ開け、それを朗読するようにして話し始めた。
「いつも本ばかり読んでいる私ですが、幼い頃から読書をしていたわけではありません。
家に本棚がずらりと並べられていて、片っ端から全て読み漁る。あるいは小中学校の図書館で好きな本に読みふける。そんな生粋の読書家ではなかったんです」
彼女が小さな笑みを浮かべる。大事にしまっておいた宝箱に鍵を差し込み、目の前で静かに蓋を開けるような、そんな何処か愛嬌を感じさせるような笑みだった。
「私が本格的に本を読み始めたのは、大学生になってからでした。
大学では、試験や卒業論文のために色々な本を読まなければなりませんよね。
だから、はじめは専門書に手をつけました。ゼミの先生が本をたくさん読めと言ったから読んだというのもあります。
いずれにせよ、自主的な動機ではありません。そうしなければならない環境に置かれたから、読書をしただけのことです」
「でも……」と彼女が遠くを眺めるように、天井を見上げる。
「本って不思議ですよね。読んでいるうちに、もっと知りたいという気持ちになって、次々と読み始める。
その本だけでは説明しきれない部分を、他の本が補ってくれる。そうして数珠繋ぎのようになって、結果的には色々な本を読むことになる。
絶妙に知的好奇心がくすぐられるんです。気がつけば課題図書でも何でもない、単なる興味で読み始めた本も、机の上に置かれている。
フロイトに、ニーチェに、ハイデガー。時にはシオランやフーコーの本も、少しだけ読んだりして。
人間は天使と悪魔の声に振り回されているとか、弱者みたいにいじけるなとか、みんな本の中で好き放題言ってのけるんですよ。
……先生には以前、私が英米文学専攻であることをお伝えしましたよね。でも、私がはじめに興味を持ったのは、西洋哲学でした。
ドイツとかフランスとか、その辺りの哲学です。もちろん論文用の本は読みましたが、本当に興味があったのはその分野でした。
堅苦しいと思われるかもしれません。でも、理由はわからないけれど、何となく哲学には夢中になれたんです」
aは夢中になり、嬉しそうに話していた。
天井にありとあらゆる思想が広げられているかのように、彼女はその場所を見つめ、明るく笑っていた。
「平日から休日まで、夜遅くまで図書館にこもっているのは、神経を使うけれど楽しかった。
閉館前になると、空腹でお腹が鳴っちゃうんですよね。静まり返った室内にその音が響き渡らないか、密かに怯えてもいました。
でも、夜の大学は街灯が灯っていて、すごく綺麗なんですよ。冷たい空気の中、寂しげな虫の鳴き声を聞きながら家に帰る。
自分だけの、ささやかな幸福の時間です。たくさんの本を抱え、日中もこんなに静かであれば良いのにと願いながら、穏やかな一日を終える。
業務のようだった読書が、今や私の生活の一部になっている。そこではじめて、私は本が好きなのだとわかりました」
布団の上に散らばった数々の本と、一つの笑顔。彼女はまるで部屋の玩具をあちこちに散らかし、無邪気に笑う子どものようだった。
彼女の顔に心からの幸福がにじみ出ている。相手の話を聴きながら、私は心の中でそう呟いた。
「それで?」私は続きを促すように、穏やかに微笑む。
彼女は遊びの許可を得た子のように、目を輝かせ、話を続けた。
「それからは、水を得た魚のように、さらに色々な本を読むようになりました。
今まで行くはずもなかった書店や図書館に興味が湧いて、そこで何か面白い本がないかと探し回るようになったんです。
それで、専門書だけでなく、小説にも出会うことになって。最初に読んだ小説は、カミュの『ペスト』。長編小説を読むようになったきっかけは、ドストエフスキーの『罪と罰』でした。
どちらも読むのに時間がかかりましたが、2つの本は、小説の前に立ちはだかる固い扉を壊してくれたような気がします。
禍いの中で、息も絶え絶えに足掻く人々。罪悪感に囚われ続け、頭を抱える一人の青年。
どちらも海の向こうの作家なのに、どうしてこうも私を考えさせたり悲しませたりできるのでしょうね。
それが不思議で仕方なくて、気がついたら海の向こうの作家のことばかり考えていた。
彼らが生きている時代に、彼らと一度でも会えていたら良かったのに……。
これは、勝手な期待かもしれません。でも憧れの人に対して、その人となりを少しでも近くで感じられたらと思うのは、そんなに珍しくないことでしょう?」
aの口調には、弁護の気配もなければ、説得の気配もない。ただ純粋な感情が姿を現しているようだった。
私は少し驚いた。普段の彼女からはあまり聞くことがないような言葉が、目の前で次々と流れ出たからだった。
一人静かな空間で暮らす彼女が、誰かに興味を持ち、憧れの感情すら抱いている。
それも躊躇いがちにではなく、堂々とした話しぶりで。2人の作家への憧れは、一種の揺るぎない自信のようで、彼女はそれを誇りにさえ思っているようだった。
「ひとたびその本が好きになると、その作家が書く他の本も読みたくなってしまうんです。
気がつけば、数ヶ月も同じ作家の本を読んでいる。
少し奇妙に映るかもしれませんが、ただ知りたいという思いに駆られているんです。
その人の一生を知ろうと、ただ一人の命が何を感じ何を訴えようとしているのかを、噛み締めるようにして読み進める。
悲劇の後ろには痛みがあり、諧謔の後ろには憐れみがある。
後ろにあるもの、またその後ろにあるものを突き詰めて、その人の中心で轟々と渦巻くものを感じ取る。
傲慢かもしれませんが、そうすることで、その人の『何か』に少しだけ触れられたような気がしてきて……。
今の自分があまりにも抽象的なことを言っているのは、わかります。でも、知ろうとすることは、より抽象的なものに近づいていくことではないかと、そうも思えるんです」
aの声は熱っぽく、しだいに詩的な抑揚がつくようになっていた。
彼女の頬は少し火照り、やや興奮しているように見えた。
「だから……」と次の言葉を放ちかけた所で、彼女が口をつぐむ。
「だから?」
私は彼女を見る。彼女は私を凝視する。
自身の体温と弾む呼吸に気がついたのか、aははと我に返り、突き刺されたかのように顔を歪ませた。
言葉を詰まらせ、目を泳がせ、胸のざわめきをあらわにする。
突如、ひどい苦しみに襲われたかのようだった。何かの発作を予期した私は、彼女のもとへ近寄り、声をかけようとした。
しかし、高ぶりはすぐに収まった。彼女の視線は天井の一点に集中し、ざらついた軽蔑の眼差しをそこへ向けた。
固い沈黙の中で、彼女の視線は目に見えるように重く鋭かった。
『君は本について、深い洞察を持っているようだが……。』
私は彼女に対し、そのような声かけをしたのかもしれない。
励ましなのか支援なのか、何のための一言なのか。自分から発せられた言葉にも関わらず、その意味するところはよくわからなかった。
しかし、そのような声かけも、彼女の耳には何一つ届いていないようだった。
長い沈黙が居座っていた。静まり返った病室で、彼女はただ糸を断ち切るかのような冷たい視線で、天井を睨み続けていた。
「何処か具合が悪いのかい?」
私は彼女にそっと話しかけたが、彼女は何も返事をしなかった。
彼女は大きな罪を目の当たりにしたかのように、虚空に非難の顔を向け、両手で布団をきつく握りしめた。
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