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エピローグ
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美鈴浜へ向かう遊歩道は、展望台から数メートル下のところで崩落していた。
傾斜の強い山肌全体が、コンクリート製の階段を巻き込み大きく崩れている。長く放置されていたのは財政難だけが問題ではないようだ。これは復旧に相当の時間とお金がかかるだろう。
「クルミさんは、よくここを通ったな」
そんな独り言を呟きながら、僕は両手両足をフルに使って、土肌の斜面を降っていく。
彼女は二年前、どんな気持ちでここを通ったのか。船と、水面で暴れる人影を見たクルミさん。早く行かねばと、焦っていたのだろうか。その先にある絶望を想像もせずに。
あの日、クルミさんが駆けつけなければ、先輩は死ぬことはなかった。
でもそれは、言ってはいけないことだろう。彼女は、あの日、自分ができる精一杯のことをした。それに引き換え、三輪さん……。
思い止まるべきだった。思い止まって欲しかった。でも……。
何度かの、激しいスリップに肝を冷やしながら、僕はなんとか崩落箇所を突破し、階段の道へと戻ってきた。あとは気楽な遊歩道だろう。
トントントンっとリズミカルに石段を駆け下り、最後の踊り場に出たところでパッと視界が広がった。
それまでも、海が見えていたはずだ。でも、斜面を掴む、手元足元を注視するのに忙しく、周りの景色を意識してはいなかった。
その踊り場は、海面から五メートルくらいの高さだろうか。目の前に美鈴浜の石の多い海岸が左右に伸びている。そして、その先には、台風の影響でまだまだ波の大きな黒い海が圧倒的な迫力を持って、僕の視界一杯に広がっていた。
クルミさんも、この踊り場から海を見たのだろう。そして駆け出した。海に向かって。
海を越え、僕の正面から強く風が吹いている。潮の香りが鼻を撫でる。遠くで、人が叫ぶ声が聞こえた。僕は視線を、左手に移す。そこには大きく手を振る石田さん夫妻と、出張所の野田課長の姿があった。
僕は思わず手を振り返す。
「竜二さんと敦子さんは無事だったんだ」
僕は一歩一歩、最後の階段を降り始める。次へ進むために。先輩との約束を果たすために。
了
傾斜の強い山肌全体が、コンクリート製の階段を巻き込み大きく崩れている。長く放置されていたのは財政難だけが問題ではないようだ。これは復旧に相当の時間とお金がかかるだろう。
「クルミさんは、よくここを通ったな」
そんな独り言を呟きながら、僕は両手両足をフルに使って、土肌の斜面を降っていく。
彼女は二年前、どんな気持ちでここを通ったのか。船と、水面で暴れる人影を見たクルミさん。早く行かねばと、焦っていたのだろうか。その先にある絶望を想像もせずに。
あの日、クルミさんが駆けつけなければ、先輩は死ぬことはなかった。
でもそれは、言ってはいけないことだろう。彼女は、あの日、自分ができる精一杯のことをした。それに引き換え、三輪さん……。
思い止まるべきだった。思い止まって欲しかった。でも……。
何度かの、激しいスリップに肝を冷やしながら、僕はなんとか崩落箇所を突破し、階段の道へと戻ってきた。あとは気楽な遊歩道だろう。
トントントンっとリズミカルに石段を駆け下り、最後の踊り場に出たところでパッと視界が広がった。
それまでも、海が見えていたはずだ。でも、斜面を掴む、手元足元を注視するのに忙しく、周りの景色を意識してはいなかった。
その踊り場は、海面から五メートルくらいの高さだろうか。目の前に美鈴浜の石の多い海岸が左右に伸びている。そして、その先には、台風の影響でまだまだ波の大きな黒い海が圧倒的な迫力を持って、僕の視界一杯に広がっていた。
クルミさんも、この踊り場から海を見たのだろう。そして駆け出した。海に向かって。
海を越え、僕の正面から強く風が吹いている。潮の香りが鼻を撫でる。遠くで、人が叫ぶ声が聞こえた。僕は視線を、左手に移す。そこには大きく手を振る石田さん夫妻と、出張所の野田課長の姿があった。
僕は思わず手を振り返す。
「竜二さんと敦子さんは無事だったんだ」
僕は一歩一歩、最後の階段を降り始める。次へ進むために。先輩との約束を果たすために。
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