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第一章 ギルベルト・ライズナー
第五話 始まるやりとり
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帰宅後、航はサイトを開いた。届いているメールはどれも下心丸出し。「どこ住みですか? 会えますか?」など直球なものまである。有料サイトだけあって、みな早く済ませたいという気持ちが滲んでいる。
「なんて返せばいいんだろ」
分からず困っていると、スマートフォンが震える。
「もしもし」
『お疲れ様。今、大丈夫かい?』
電話の主はギルベルトだった。
『サイト見た? メールの返し方の指示を忘れていたから、電話をかけたんだけど』
「俺も同じことを悩んでいて」
『そうか。ならちょうどよかった。どんな内容がきている? 下心丸出しなものばかりで驚いているだろ?』
「はい」
『有料サイトだからね。引き延ばすのはあまりよくない。中にはそういう会話だけを望む人もいるから見極めが大切だけど。来ているメールの文章教えて』
「……」
『西島さん?』
「……読み上げるんですか?」
『ああ、頼むよ』
航は、下心丸出しの内容が来ていると知りながら読み上げさせようとするギルベルトに怒りがこみ上げた。
『仕事だろ。早く読み上げてくれないか?』
その言葉に、全て吹っ切れた。怒気を含め、乱暴に読み上げていく。
『――なるほど。では、さらに個別で写真を求めてくるユーザーには、お望みどおりの写真を。下半身希望の場合は、「恥ずかしいから」と濁して、上半身を。その時に、「もっと仲良くなれたら下半身も送る」と追記するのを忘れずに。会いたいと希望してくるユーザーにも同等のものを』
淡々と指示をされ、航はメモをするペンを無心で動かした。
『では、よろしく頼む。僕ももうすぐ帰るから、食事はその時にでも一緒にとろう』
「結構です。もう食べたので」
上司に向かってあるまじき言葉を放ち、航は電話を切った。
だが、指示通りのことはする。どれだけ腹が立ってもギルベルトの指示の的確さは素晴らしかった。
その後、帰宅する音がし、航は自室のベッドに潜り込んだ。ノックする音がしたが無視を決め込んだ。
「失礼するよ」
「いいって言ってませんけど?」
「起きているではないか」
ぐっと黙り込む航の傍にあるタブレットを開き、メールの内容を確認するギルベルト。
「また来ているぞ。僕が返しておこうか?」
「お願いします」
「その後で、また撮影をするから、ベッドを乱れさせておいてくれ」
「ベ、ベッドを乱れさせるってなんですか?」
「君が快楽に悶えていたような跡をのこしておいてくれと言っている。皺をつけるなり、枕を斜めにするなり方法はあるだろう」
「どんな写真を撮る気なんですか?」
「見られたがりの欲求不満な男を演じさせると言っただろう。一人で行為をしたような写真を撮る」
「もう、かなりの人数に上半身の写真を送っているんですけど」
「個別にね。それではまだ足りない。最初に上半身のはだけた写真を載せたのと同様、誰でも見られるオープンな掲示板にまた載せるのだ。どんどん見せたい意欲が強くなっていると認識させれば、もっと刺激のある画像を求めて、メールがくる。それにそこまでオープンなサイトと分かれば、口コミで広がりユーザーも増える」
「少し前なら違法サイトですよ」
「一昔前の日本ならね」
未成年保護の為、日本の性に関するサイトは一時的に禁止への強化が強まった。だが今、それは緩和しつつある。
「欲望のはけ口を奪えば、どこかで歪がでるのだよ」
売春は相変わらず禁止されている。しかし、未成年禁止サイトであると国に申請をだし、きちんとしたセキュリティーを整えれば、サイトの運営は許可されるようになったのだ。その瞬間、莫大なサイトが誕生し、生き残りが難しくなってきた。航の会社も同様、未成年禁止のサイトに足を延ばし、首が回らなくなったのだ。
メールを返し終えたギルベルトは、「ベッドの用意をよろしく」とだけ言うと部屋から出て行った。戻ってきた時、手にはボトルが握られていた。
「なんて返せばいいんだろ」
分からず困っていると、スマートフォンが震える。
「もしもし」
『お疲れ様。今、大丈夫かい?』
電話の主はギルベルトだった。
『サイト見た? メールの返し方の指示を忘れていたから、電話をかけたんだけど』
「俺も同じことを悩んでいて」
『そうか。ならちょうどよかった。どんな内容がきている? 下心丸出しなものばかりで驚いているだろ?』
「はい」
『有料サイトだからね。引き延ばすのはあまりよくない。中にはそういう会話だけを望む人もいるから見極めが大切だけど。来ているメールの文章教えて』
「……」
『西島さん?』
「……読み上げるんですか?」
『ああ、頼むよ』
航は、下心丸出しの内容が来ていると知りながら読み上げさせようとするギルベルトに怒りがこみ上げた。
『仕事だろ。早く読み上げてくれないか?』
その言葉に、全て吹っ切れた。怒気を含め、乱暴に読み上げていく。
『――なるほど。では、さらに個別で写真を求めてくるユーザーには、お望みどおりの写真を。下半身希望の場合は、「恥ずかしいから」と濁して、上半身を。その時に、「もっと仲良くなれたら下半身も送る」と追記するのを忘れずに。会いたいと希望してくるユーザーにも同等のものを』
淡々と指示をされ、航はメモをするペンを無心で動かした。
『では、よろしく頼む。僕ももうすぐ帰るから、食事はその時にでも一緒にとろう』
「結構です。もう食べたので」
上司に向かってあるまじき言葉を放ち、航は電話を切った。
だが、指示通りのことはする。どれだけ腹が立ってもギルベルトの指示の的確さは素晴らしかった。
その後、帰宅する音がし、航は自室のベッドに潜り込んだ。ノックする音がしたが無視を決め込んだ。
「失礼するよ」
「いいって言ってませんけど?」
「起きているではないか」
ぐっと黙り込む航の傍にあるタブレットを開き、メールの内容を確認するギルベルト。
「また来ているぞ。僕が返しておこうか?」
「お願いします」
「その後で、また撮影をするから、ベッドを乱れさせておいてくれ」
「ベ、ベッドを乱れさせるってなんですか?」
「君が快楽に悶えていたような跡をのこしておいてくれと言っている。皺をつけるなり、枕を斜めにするなり方法はあるだろう」
「どんな写真を撮る気なんですか?」
「見られたがりの欲求不満な男を演じさせると言っただろう。一人で行為をしたような写真を撮る」
「もう、かなりの人数に上半身の写真を送っているんですけど」
「個別にね。それではまだ足りない。最初に上半身のはだけた写真を載せたのと同様、誰でも見られるオープンな掲示板にまた載せるのだ。どんどん見せたい意欲が強くなっていると認識させれば、もっと刺激のある画像を求めて、メールがくる。それにそこまでオープンなサイトと分かれば、口コミで広がりユーザーも増える」
「少し前なら違法サイトですよ」
「一昔前の日本ならね」
未成年保護の為、日本の性に関するサイトは一時的に禁止への強化が強まった。だが今、それは緩和しつつある。
「欲望のはけ口を奪えば、どこかで歪がでるのだよ」
売春は相変わらず禁止されている。しかし、未成年禁止サイトであると国に申請をだし、きちんとしたセキュリティーを整えれば、サイトの運営は許可されるようになったのだ。その瞬間、莫大なサイトが誕生し、生き残りが難しくなってきた。航の会社も同様、未成年禁止のサイトに足を延ばし、首が回らなくなったのだ。
メールを返し終えたギルベルトは、「ベッドの用意をよろしく」とだけ言うと部屋から出て行った。戻ってきた時、手にはボトルが握られていた。
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